アリストファネス『雲』はソフィストとしてのソクラテスが登場する

      2017/03/01

 

アリストファネスとは、古典期アテナイで活躍した喜劇作家です。辛らつな風刺劇を演じて人気がありました。

『雲』というのは、「ソフィストのソクラテス」が出てくる喜劇です。今回はそのごく簡単な紹介をしたいと思います。

 

あらすじ

 

主人公のお父さんが借金をして、それをチャラにしたいので、ソフィストの下で詭弁(きべん)を教わろうと息子をソクラテスの下に送った、というあらすじです。

 

むむ? アテナイでは、借金を口八丁でチャラにできたのか? いやあどうでしょう。おそらく、アリストファネスのギャグだと思います。ソフィストというのは口がうまい連中だ、というイメージを市民は抱いていたので、それをギャグにしたのだと思います。

息子と弟子の会話

 

さて、ソクラテスのもとへ向かった息子は、ソクラテスの弟子に出会います。

息子が弟子に話しかけると、弟子は急に怒ります。(以下は正確な引用では全くありません)

弟子「急に話しかけるな! 思索が逃げた!」

息子「すみません。しかし、何について思索していたのですか」

弟子「うむ、これは我々の間に伝わる秘儀である!」

息子「おお、すごい。何ですか教えてください。」

弟子「教えてやろう、蚤(のみ)の跳躍力を測っているのだ。」

息子「え? 蚤? なんですか?」

弟子「教えてやろう、ある時な、同じく我らがソクラテスと、同門の弟子カイレポンが談笑していたときだ。眉毛ボーボーのカイレポンの眉毛からな、はげのソクラテスの頭に蚤が飛び移ったのだ。

これにソクラテスは驚いてこう言ったのだ。『一体、蚤とはどれだけの跳躍力を持っているのだろう! これは調べてみなくてはなるまい! と。どうだ。すごいだろう。」

息子「はあ。どうやって調べるんですか。」

弟子「うむ。これは秘儀であるぞ。蚤の足の大きさを測ればよいのだ。」

息子「ほう。どうやって測りましょうか。」

弟子「うむ。これは秘儀であるぞ。あらかじめ溶けたロウに蚤の足を入れて、固めるのだ。いわば、蚤のブーツをロウで作り、大きさを測った後に、跳躍飛距離と比べるのだ。」

息子「ああ、ソクラテスとはなんて賢い方なのでしょうか。」

「それらしい」言説こそソフィスト

 

蚤の跳躍という、どうでもいいようなことを「秘儀」と呼び、しかもその探究方法が「蚤の足の大きさを測る」という奇想天外なものです。それが観客の笑いを誘います。

しかし、アリストパネスの言っていることは、でたらめなのですが、何となく合理的といえば合理的に聞こえもします。足のサイズと、跳んだ距離で、跳躍力を測るというのは、たとえば足のサイズが25センチの人が、2m50cm跳んだら、10倍ということになります。そのように考えれば、蚤は何千倍も跳んでいるのであって、大変な能力を有していると、言えなくもない。

当時のアテナイ市民たちは、こういう「ありそうな」あるいは「それっぽい」話をして、人々をなんとなく納得させてしまうのが、ソフィストのうさんくさい弁論術だ、というふうに思っていました。

蚤の跳躍を測るという、荒唐無稽のシチュエーションの中にも、探究の方法というところだけそれっぽくして、ソフィストっぽさを演出する。ギャグ作家として、かなりのレベルのように思います。

 

 

アリストファネスは時事・芸能ネタでコントをやっている

 

アリストファネスのギャグは風刺を基軸にしたもので、そのレベルはかなり高いです。当時の事情を知らないと笑えません。

現代で言えば、当時のアテナイ市民たちがみんな知っている時事・芸能ネタでコントをやっているといったところです。

 

 

これからお笑い番組を観るときは、アリストファネス的な漫才・コントをやっている芸人を探してみてはいかがでしょうか。

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