あなたには帰る家があるというドラマが2018年4月から放送されます。
中谷美紀主演です。

- 佐藤 真弓 … 中谷 美紀
- 佐藤 秀明 … 玉木 宏
- 三浦 圭介 … 駿河 太郎
- 森永 桃 … 高橋 メアリージュン
- 小島 希望 … トリンドル 玲奈
- 竹田 邦彦 … 藤本 敏史(FUJIWARA)
- 愛川 由紀 … 笛木 優子
- 茄子田 太郎 … ユースケ・サンタマリア
- 茄子田 綾子 … 木村 多江
このドラマは、原作小説があります。
山本文緒さんの同名小説『あなたには帰る家がある』という作品です。
この原作小説を私読んでみたんですけど、それはそれはものすごく面白い小説だったんです。
現代の作家の人がこれほど深くて重たい物語や人物を描けるんだと、驚愕しました。
ドラマを放送するので、この原作小説についてご紹介してみたいと思います。
先に1つお伝えしたいのは、ドラマの方で気になることがひとつあるんです。
「100人の夫婦にインタビューをとって、夫婦生活のあるあるを形にしてみました。温かいコメディードラマです。」
みたいな言葉があるんですね。
これです。
1 100人超の女性に「オンナの本音」をリサーチ!クスっと笑える“あるある”が満載!
仕事と家事の両立…夫との生活…思春期の子育て…、「夫婦あるあるネタ」に共感。
2 平穏に見える2組の夫婦を襲う“落ちてはいけない恋”
忘れかけていた感情…燃え上がる想いと裏切りの罪悪感に、ハラハラドキドキの展開!
3 危機に直面する「夫婦の絆」
「夫婦の絆」は脆い…しかし、だからこそかけがえのないもの。ラストに起きる温かな奇跡にも注目!
http://www.tbs.co.jp/anaie/intro/
1番ですよ、1番。

この原作小説、コメディーらしいところなんてどこにもないんですよ!
かなりシリアスで、深い人間ドラマを突きつけてくるような小説なんですよ。
これがコメディになるなんて、原作を読んだら信じられないと思うような作品なんです。
ということで、原作小説のあらすじをネタバレ少しあり(気になるほどでもない)でご紹介します。
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【ネタバレなし】原作小説のあらすじ

主人公は二組の夫婦です。
- 佐藤真弓と、佐藤秀明の夫婦が主人公です。
- もう1組の夫婦は、茄子田太郎と、その妻綾子。
この4人が、偶然仕事の関係で知り合い、奇妙な人間関係を形成していくのです。
- 真弓は専業主婦。
- 夫の秀明は、不動産屋の営業です。
- 茄子田太郎は額中学校の教師。
- 綾子は専業主婦です。
【原作のテーマその1】どうして茄子田太郎と綾子が結婚した?

茄子田太郎という男は、もうひどい男として描かれています。
- 非常に外見も醜い
- 口臭がきつい
- 店員などに汚い言葉を吐く
- ソープやキャバクラに毎週通う
- すけべオヤジ
よくもまあこんな嫌悪感のある男が描けるなと惚れ惚れするくらいです。

一方で、その妻の綾子は、実に控えめで美しい女性として描かれています。
「どうしてこんな男にこんないい奥さんがついたんだ?」
秀明はじめ登場人物たちも、読者も疑問に思っています。
「こんなに綺麗な綾子さんが、どうして茄子田太郎なんかと結婚したんだ?」
これは本書の謎の1つでもあり、物語の終盤で明らかになる事実なんです。
【原作のテーマその2】夫が働き妻が家事をする常識に疑問を投げる

真弓は専業主婦を希望して、産休・育休をろくに取らずに仕事をやめました。
しかし子育てをしている今、幼い娘と毎日毎日二人っきりでいることに猛烈な倦怠感を覚えています。
「私の人生、ご飯を考えて、娘の世話をするばかり。夫の給料は少ない。こんな生活もう嫌だ。」
そう感じて、保険外交員=保険セールスのおばちゃんにパートで働き始めます。
そこで知り合った支部長が、年収1,000万を稼ぐエキスパートのセールス員。
真弓はこの支部長に憧れて、
「私も仕事で成功したい、夫の給与を上回りたい」
と情熱を燃やすことになります。
それを冷ややかに見つめるのが夫の秀明です。
「お前なんかにできるわけないだろ」
と頭ごなしに否定する姿は、典型的な夫婦像を思わせます。
そして真弓は、秀明に勝負をふっかけます。
- 「この3ヶ月の間で、秀明の給料上回ったら、あなたは専業主婦になりなさい。」
- 「もしも上回れなかったら私はおとなしく保険外交員のパート辞めて専業主婦に戻ります。」
そう宣言して、契約の獲得に全力を注ぐようになります。
果たして結末はどうなるのか。
こうした恋愛と、仕事。
- 既婚者同士の恋愛
- 夫婦間の仕事や家事の役割分担
この2つが『あなたには帰る家がある』のメインテーマであるといえます。
【小ネタバレ】あなたには帰る家がある原作の評価は?
かなり、評価が高いと思います。わたくし高等遊民は、非常に高く評価しています。
作品解説にはこんなふうに書いてあります。

『あなたには帰る家がある』では、二組の夫婦が主人公である。
そして夫婦それぞれの想いのすれ違いが見事に描かれている。
二組の亭主はともに、やり方は相当違うが、
「自分は理想的な家庭を築き上げている」
という幻想を持ち、その形をさらに強固なものにしようと仕事に精を出している。
「女房はそんな自分を支えてくれる存在であり、黙ってじっとついてきてくれればそれでいい。」
こうした感情は、おそらく世の大半の亭主族が思っていることでもある。
ところが実際には亭主の考えている理想的な家庭やら、亭主が信じ込んでいる女房像などは妻のほうにしてみれば夫の一方的で、しかも手前勝手な言い分にすぎないと感じているのである。
そうした極めて一般的な事実を、山本文緒はじわりじわりと真綿で首を絞めるような書きぶりで描いていく。
例えば象徴的な例では佐藤家における主婦という考え方に見られる。
夫のほうは
「いいか。君には小さい子供がいる。だから働けない。だから僕が働いてお金をもらってきていた。それが僕の役割だからだ。じゃあ、君の役割は何だ?いちにち1日家にいたくせに、どうしてろくに食事も作れないんだよ」
と妻にいう。のちに自分が家事をする役割に立ったときには、
「男に生まれて、男として育てられた。だから自分は一生働き続けるのだとなんとなく思っていたが、考えてみればそれはどうしてだろう。真弓は女に生まれて、女として育てられた。だから結婚して自動的に奥さんになった。けれど彼女は奥さんであることを拒否しようとしている。楽なのに、なぜ?」
と自問する。一方で妻の方はといえば
「女であるというだけで、主婦という職業を押し付けられてしまう風潮に勝ちたいと思った」
といった具合に反発する。
- 男側は役割論でそれぞれの立場を説明しようとする
- 女側は職業論で対抗していこうとする
本書はある意味で仕事が重要なテーマになっているとも言える。
しかし山本文緒の真骨頂は実はここから先にこそある。
これまで書いてきたような男の言い分、女の言い分というのは、はっきりとその立場が違うだけに誰が読んでも明確に違うものだと理解できる。
ところが山本文緒は、同じ女同士でもここまで違うものかと感じさせるほど、女心の奥深い部分までえぐっていく。
山本文雄という作家は、通常の小説の約束事をことごとく裏切っている作家ではないか。
娯楽小説の根底には勧善懲悪やハッピーエンドという暗黙の了解がある。
登場人物は最低限の倫理をわきまえていて、倒れた相手をわざわざ起こしてあげることはしないまでもそれ以上の暴行は加えないものなのだ。
ところが山本文雄の場合は、地に付した相手を、また起き上がってもらっちゃっ困るとばかり、さらに殴打を加えていく、そんな雰囲気がある人物ばかりなのである。
まあ要するに、描写に妥協がないんですよ。
登場人物たちを、徹底的に、醜く、しつこく、どうしようもなく描くんです。
- 浮気、なんで相手が私じゃないんだろう?
- なんで私はあなたと結婚したんだろう?
- なんで私のパートナーはあなたじゃなかったんだろう?
こんな醜い感情を抉り出していくんです。

わたしの覚える違和感が、あなたに伝わればなあと思います!!
まとめ

山本文緒『あなたには帰る家がある』の原作小説をご紹介しました。
- 原作は、非常にシリアスで面白い小説
- ドラマは、コメディーがふんだんに入ってる
- ドラマやばいだろ……
『あなたには帰る家がある』は、本当に、読んでほしい小説!!
もう昼ドラにするべきじゃないかと思うくらい本来は、泥沼の恋愛ドラマなんです。それを
「夫婦生活のあるあるを集めてコメディーにしました~」

そんなふうに心配しています。
このドラマ化は、原作を度が過ぎるぐらいに換骨奪胎したのではないかと思います。
どうなるのかハラハラドキドキですね!