ドラマ版「銀と金」8話の感想です。
6話までで、画商中島とのセザンヌ「ジャドブッファンの眺め」をめぐる勝負が終わり、7話からは、企業御曹司である西条とのポーカー勝負。
第7話は、西条が女の子たちを食いものにしていくという悪行をみせしめるストーリーでした。
第7話の感想は以下です。
(関連記事)ドラマ銀と金7話感想|西条の女好きな性格が度を越している
第8話から、森田対西条たちのポーカー勝負が始まります。
ポーカー勝負の進行・展開については、原作とドラマで大きな違いはありません。
8話のみどころは、西条役の大東駿介の鬼気迫る演技にあると個人的には感じました。
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ネタバレ注意:まんが原作とドラマ版との違い
まんが原作とドラマ版の違いを簡単に比較し、その後、個人的な感想や評価を加えています。
あらすじや内容を含みますので、閲覧に注意してください。
ポーカー勝負の場所
まんが:落ち着いたバー(Club Z)のカウンター。ディーラーなし。
ドラマ:騒がしいクラブの中央にあるラウンドテーブル。ディーラー付き。
これは、前回でも説明しました。西条たちの性格が、イケイケのチャラ男っぽくなっているので、こんなところでしょう。
西条のイカサマ仕掛けの手口
まんが:カウンターテーブルがガラス越し。バーテンが鏡を利用し手札をチェック可能
ドラマ:ラウンドテーブルの下にカメラを設置。カメラの映像はカウンターのバーテンに伝わる。
ドラマのほうがスマートな手口ですね。内側からのライトでカメラを隠しつつ、手札を確認。
しかも西条の対戦相手(森田)の後方にカウンターはあるので、大抵の人はイカサマに全く気が付かないことが推測できます。
フルハウスの手を捨てトイレ休憩に行く森田
まんが:伊藤美緒じゃない友達(ドラマなら我妻三輪子)が森田に声をかける。背中をそっとつつく。
ドラマ:伊藤美緒(高月彩良)が森田に声をかける。肩をたたく。
まんがもドラマも、仲間の女性が森田に背後からアプローチして、森田が西条たちの手口に気が付く流れは同じ。
伊藤美緒が応援で金を持ってきたときの西条
まんが:特に反応なし
ドラマ:伊藤美緒を犯罪的な目で見つめる西条
ドラマでは、伊藤美緒(高月彩良)に執着する西条の演技が観られます。この辺りは、いい脚色だと思います。
大東駿介の演技も素晴らしい。
銀二と伊沢の立ち話
まんが:ポーカー編・誠京麻雀編の後に展開するストーリー。銀二と伊沢が外で会うようなことはない。
ドラマ:ポーカー編と同時展開。料亭やホテルのスイートルームで会合を開く。
ドラマは撮影の都合もあるかもしれませんが、ドラマの銀二は少々セキュリティ意識が希薄です。
そもそもアジトがジャズバーの奥という、開放的な空間。まんがではマンションであったり、行きつけの料亭がちゃんとあります。
他人に聞かれたくない話は、閉鎖的な空間でするべきです。(第2話で銀行員内村と接触したときは、ちゃんとホテルを用意。)
さらに、まんがでは「内緒話はホテルのスイートが一番だ」という銀二のセリフもあります。
一方のドラマでは、伊沢が登場する場所は、第3話でも地下駐車場、今回の第8話でも外(議事堂前?)。
「伊沢は外でしか会えないほど貧乏なのかよ」という余計な印象さえ生まれますw
この辺り、もう少し考慮できなかったのかと感じてしまいます。
西条の資金源(バック)は誰か
まんが:西条グループの子会社「西和信用金庫」支店長の松沼。
ドラマ:芸能事務所「阿修羅プロダクション」社長の藤谷。
芸能事務所阿修羅プロダクションは、元ネタがあるかもしれませんが、私にはわかりません。
ちなみにドラマ「銀と金」は、毎回小ネタを仕込んでいます。
福本まんがの登場人物や、名言をこっそり挿入したり。たとえば帝銀土門頭取の部屋には「どちらかが仮、偽りの無頼」(『アカギ』盲人市川編)という掛け軸が貼ってありました。
第7話では西条の知り合いの消費者金融の西島さんという、外見が明らかに「ウシジマくん」(山田孝之)の方がいました。
第8話のMVPは西条(大東駿介)の演技力
その後の勝負の展開は、原作まんが・ドラマで大きな相違はありません。
第8話では、西条役の大東駿介さんの演技力が目立つストーリーでした。
7話から見せていた「何かが壊れている」「感情の一部が欠落している」ヤバい感じ。人を見下した傲慢な態度。それでいて妙にニコニコしている。
こんな具合に、西条には原作まんがを凌駕する異常な性格が付加されていました。
森田との勝負も、安田(マキタスポーツ)と巽(臼田あさ美)が応援に来るまでは、余裕の態度を保ち、「悪いヤツ」のイメージを視聴者に与えていました。
しかし、安田と巽の登場から、賭け金が5億6億と跳ね上がっていくにつれ、西条にも余裕がなくなってきます。
莫大な資金を背景に保っていた西条の傲慢・余裕の皮が剥がれる。森田によって西条は、生まれて初めて「対等な勝負」を経験することになります。
今までの西条は、豊富な財産と仕掛けたイカサマに守られて、いちかばちか・運否天賦の勝負をすることはありませんでした。
しかし同等な(あるいはそれ以上の)資金を用意してきた(ふうに装った)森田の前に、西条は「いくらまでレイズするか」という「賭け」を強いられたのです。
この辺りの西条の動揺を、大東駿介は見事に演じ切っていると言えます。
初めての「敗北」を認める西条に注目
特に圧巻なのが、西条が変則的ながら「降り」を宣言した後です。
森田も資金がもうギリギリだったと告白し、西条は「そうだったのか」とため息をつき、目をこすりながら、微笑みます。
森田の背後を恐れず、賭け金を積み増しし続けていれば、西条は勝てていたのです。しかし西条は青天井の恐怖と不安に屈し、「降り」を宣言。
西条の微笑みは「自分の負けを認めた」ことを意味します。
森田をはじめ、他人を見下すことしかしてこなかった西条が、森田を自分に勝利した人物と認めたのです。
この描写に関しては、ドラマは原作以上に優れています。
原作まんがの読後感としては、森田の勝負強さや度胸にフォーカスが当たりますが、ドラマで強調されるのは森田ではなく西条。
特に、にじむ涙をぬぐい、鼻をすすりながら苦笑いするところなど、感心しきりでした。
大東駿介の演技があまりに素晴らしくて、西条が清々しい、良いヤツに思えてしまうほど。こいつは前回の第7話で、女の子(藤井奈々)にツバをつけて乱暴したような男のはず(笑)
ドラマ「銀と金」第8話は非常に見ごたえのあるストーリーでした。