「鏖」ドラマが始まりました。
2017年1月放送の新ドラマ『銀と金』。福本伸行原作とドラマの違いをまとめ、若干の考察を加えています。
Amazon ビデオでのレビューを観てると、その点で酷評が多いようですね。(個人的にはそこまで酷評する気はありませんが。)
ちなみにamazon primeの登録者は、これまでの配信・および翌週の放送分を先行配信で視聴することができます。
今回は第2話。以下ネタバレ含みますので、注意してご覧ください。
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ドラマ『銀と金』 原作との違い
第2話での原作との違いをまとめてみたいと思います。
巽の設定
まんが:元新聞記者の男性
ドラマ:元新聞記者・現ジャズバーオーナーの女性(臼田あさ美)。何かと謎の多い女性と言及
福本まんがには女性がほとんど出てこないので有名。ここはドラマなので仕方のないところ。
『銀と金』原作では食事や会合の場所は、ほとんど料亭やホテルといったプライベートが確保された空間です。
そうすると若い女性のキャスティングが難しくなるから、ジャズバーオーナーというのもまあ理解できなくはありません。(ただしプライベート性はなくなりますね。)
これからの仕事
まんが:バーで仕手戦の説明と梅谷哲(ダンカン)の存在を説明
ドラマ:いきなり梅谷のもとへ移動してから説明
原作まんがでは、まずはバーに移動し、銀二が森田に、銀二たちが取り組んでいることや、仕手戦という株式市場の争いなどを、一から色々説明しています。
ドラマでは即座に梅谷のいる店へ移動。少し離れたところから、梅谷の様子をうかがいながら、梅谷とは誰か、仕手戦とは何かの説明をします。
梅谷哲の設定と登場場所
まんが:ホテル・不動産グループ経営者。クラブ
ドラマ:ホテル経営者。中華街
梅谷の設定にほとんど変わりはありません。女性をはべらせているのも変わりなしw
ちなみにドラマのキャバ嬢みたいな女性は、左側が佐々木もよこさん、右側のホルスタイン呼ばわりされているのが利麗さんという方です。
債務会社を装い梅谷へ接触
まんが:電話はなし。梅谷さらう場面で装う。(さらった後も、しばらく装っている。)
ドラマ:中華街の店、梅谷のそばで電話。(さらった時は装っていない。)
まんがでは梅谷の姿を確認して、銀二たちはいったん引き下がり、梅谷の動向をしばらくうかがう体制を整えます。
ドラマでは店内の梅谷にすぐさま接触します。同じ店内で金貸業者を装い電話するなどして梅谷の金欠の様子をうかがいます。
梅谷への接触
まんが:翌日の日中。森田と行動している安田および別行動の巽が決行。
ドラマ:当日、中華街の出口、安田と森田で接触。
まんがでは、梅谷の動向を数日観察していると、梅谷が金策のために自宅を抵当にまわしたという情報をキャッチ。そこで金貸業者を装って、梅谷をさらっちゃえとして初めて接触します。
ドラマでは、店内ですぐに自宅抵当の話をし、梅谷をすぐにさらいます。その際は金貸業者を装っておらず、仕手戦のことで話があるといって梅谷に接触します。
梅谷との交渉
まんが:債務会社を装い、さらに融資し、日本旭の株を5%買い足すと銀二が説明し、梅谷は驚き戸惑いながらもあっさり本尊役を譲る。
ドラマ:負債を肩代わりすると提案、梅谷激昂。しばらく本尊役を譲らない。(銀二は梅谷に挑発的な態度、タメ口)
ここはだいぶ原作とドラマで異なる点です。
まんがでは、銀二は梅谷に一貫して丁重な態度をとり、敬語を使います。金貸業者を装っているので、梅谷に対してお客様としての対応をしています。しかし、支払い催促に来たかと思っていた梅谷の予想に反し、さらに日本旭への株を5%買い足すと融資を提案します。そこで梅谷はあっけにとられ、あんた何者なんや? と恐れます。
ドラマでは最初から、銀二が梅谷の負債50億を肩代わりするから、仕手戦の本尊を変われと提案します。銀二が高圧的な態度に出ているので、梅谷は金がないのをいいことに侮辱されたと感じ「ワシはまだやれる!」と意地を張ります。
梅谷と森田との会話
まんが:日本旭の後ろ盾である帝銀を落とす作戦だと、森田は梅谷に説明。
ドラマ:銀さんが森田に説明。梅谷への説明はなし。
まんがもドラマも、梅谷のそばに森田を置きます。まんが版では梅谷はすぐに本尊を譲ったので、森田と仲良くやっていますが、ドラマでは本尊を譲りたくないので、銀二側の森田に対して敵意をあらわにしています。
なので、まんがでは梅谷に対して日本旭攻略の戦略を森田が話しますが、ドラマではそのような説明はありません。
帝銀行員内村との接触
まんが:森田不在。銀二は内村に同情厚く、一緒に帝銀に一泡吹かせようと説得。そこから具体的な戦略を提示。内村は次第に熱くなる。
ドラマ:せりふはおおむね、まんがに準じているが銀二の口調が淡々として、やや高圧的。
ここも原作とドラマで、銀二の性格が違っている点がわかるシーン。
まんがでは銀二は内村に「ツイてなかったな」とまず肩に手を置きます。内村を安心させ、そして帝銀を見返してやろうと説得します。
まんがの銀二は男気・正義感にあふれている感じですね。魅力的です。内村に協力を持ちかけている感じ。
それに対してドラマの銀二は淡々としています。内村と取引を持ちかけているような感じです。
内村の末路
まんが:不正融資の情報を取得後、料亭で銀二と接触。書類のコピーを無事に渡す。
ドラマ:不正融資の情報を取得後、銀二にわたせず途中で捕まり、命を落とす。
内村助からんのかい!! 結構衝撃的でした。
不正融資の情報入手
まんが:内村から銀二が受け取る。書類のコピー。
ドラマ:内村が襲撃された際、とっさに別の場所へUSBを隠す。その後、森田らがUSBを発見・回収。
原作では内村が襲われたりすることはありません。なぜこういう脚本に変えたのかな。
個人的な予想では、原作ではしばらく森田は活躍しないので、ドラマでは森田に活躍させるためにこういうシーンを創作したのではないかと。
原作だと、仕手戦の序盤は、山場らしい山場もなく、淡々と物語が進んでいきます。
視聴者が「つまんね」となってそれ以降見なくなってしまう、などと心配したのではないでしょうか。
会合の場所
まんが:料亭待ち合わせでカムフラージュ
ドラマ:ホテル待ち合わせでカムフラージュ
これは大した違いではないでしょうね。
まとめ 内村の運命に大幅な変更
ドラマ版だと、仕手戦の仕組み梅谷の資金と負債が分かりにくかったですね。
具体的な数字は出てくるには出てきますが、要するに勝てばいくらもうかるのか、いくら必要なのか、ということがイマイチわかりにくいです。
まんがだと500円の利ざやが2000万株分というふうに説明され、梅谷の借金も400億を超えると説明しています。
銀さんが梅谷の負債を肩代わりすることが、どれだけリスクがあるかもまんが版のほうが伝わります。
また、内村の運命に大幅な修正が加わっています。そして内村が隠したUSB(不正融資証拠データ)を森田が発見するというエピソードが挿入されています。
なぜドラマ版で内村にこんな運命を背負わせたのか、よく分かりません。
内村への説得の場面も、まんが版の銀二のほうが熱量があり、内村が銀二の熱に動かされていく過程がリアルに描かれています。
ドラマ版だと、内村は金のために銀二に協力を決断したという描写になっていますが、原作まんが版では、内村は一種の正義感に動かされて銀二に協力するというニュアンスが込められています。