悲しみと哀しみの違いと意味は?使い方には明確な違いがあった!

「悲しみ」と「哀しみ」は、どう違うのかなあ?

 

そんなことが気になりました。

というのもこの高等遊民ブログでは、中原中也「汚れっちまった悲しみに」という詩の解説が、よく読まれているからです↓

「汚れっちまった悲しみに」意味と解説|中原中也山羊の歌より

 

中也は「悲しみ」と表現していますね。

単なる習慣の違いで「昔は哀しみ。いまは悲しみ」なんじゃないかな~と思ってましたが、違うようです。

 

ということで、「悲しさ」と「哀しさ」。「悲しい」と「哀しい」に意味の違いがあるのか、調べてみます。

 

悲しみと哀しみの違いと意味は?使い方には明確な違いがあった!

「哀しい」「悲しい」の違いを漢字辞典で調べると

まず漢字辞典を見てみましょう。『新漢語林』

 

悲:心+非。非は、左右にわかれるの意味。心が引きちぎられて、いたみかなしむという意味を表す。

哀:口+衣。衣は、まとうの意味。同情の声を寄せ合う様から、かなしむ・あわれるの意味を表わす。

 

  • 悲しいは、内面的。自分の悲しみ。
  • 哀しいは、外面的。他者の悲しみ。

そんな感じですね。おもしろいな~。

「汚れっちまった悲しみに」は、完全に作者自身の、内面的なかなしさですよね。だから悲しみで正しいですね。

 

「哀しい」「悲しい」の違い。白川静の漢字辞書『字統』『字訓』による説明

つづいて漢字といえば白川静。

Q&Aサイトに、素晴らしい説明がありました。

  • 白川静「字統」より
  • 「悲 声符は非。[説文]に『痛むなり』とあって悲痛の意。」
  • 「哀 衣の襟もとに、死者の招魂のために、祝詞を収める器である『さい(漢字が出ません。哀の口の部分です。)』を加えて、魂よばいをする形。」

とあるので

  • 「悲」は広くかなしみ一般
  • 「哀」は死者に対する哀告の儀礼

というのが元々の漢字の意味であるようです。

  • 白川静「字訓」より
  • 「『かなし』という感情は繊細なものであるから、これに当る適当な漢字がなく、愛・哀・悲などが用いられる。」
  • 「悲は非声。非には否定の意がある。すなわち国語の『かね(思うことのかなわぬ意)』にあたる。心のうちにもどかしく、思うにまかせぬことを嘆く意があり、これも『かなし』の語義に近い。」
  • 「哀は死者を哀しむ意。」

とあります。

 

なるほど~。

「汚れっちまった悲しみに」の詩の世界では、特に誰かが亡くなったわけではありません。

なので、「哀しみ」じゃなくて「悲しみ」で正しいですね。

 

ちなみに白川静氏の『漢字』という岩波新書は私も読みましたが、とても面白かったです。

あと松岡正剛『白川静』もとてつもなくいい本です。この方の著作は当たりはずれあると思いますが、『白川静』は大当たりだと思います。

白川静について読んでみたい方は、まずは上記2冊をおすすめいたします。

 

【豆知識】愛しいを「かなしい」と読むこともある

悲しい・哀しいだけではなく、愛しいと書くこともあります。ふつうは「いとしい」ですよね。

これは、電子辞書引いたらの説明に出てきました。

どんな意味なのでしょう?

 

「もともとは「愛し」とも当て、肉親や恋人などに対する切ない気持ちを言った」(明鏡国語辞典より)

 

愛しい

  1. 心に染みていとしい。かわいくてならない。
  2. 心にしみておもしろい。強く心を惹かれる。
  3. すばらしい。みごとである。

「デジタル大辞泉」より

えーー、ふつうにいい意味ですね。

なんか、かなしげな意味かと思ったら、いとしげな意味じゃないですか(笑)

 

たとえば万葉集にこんな詩があります。

柵(くへ)越しに 麦食む小馬の はつはつに 相見し子らし あやに愛しも

柵越しにわずかに麦を食う小馬のように

ちらりとだけ会ったあの娘が

心に残って いとしくてたまらない

馬柵越しに若い馬が麦を食むように

初めて肌を触れ合ったあの娘が愛しい

https://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/27269838.html

 

なるほど~。

切ない気持ちが「愛」と表現され、かなしいという意味になったのですね。

「悲しい」「哀しい」というと、なんだか過去を回想しているイメージになりませんか?

「もう会えない」みたいなニュアンスが強まります。

でも「愛しい」と書くと、リアルタイムな感じがありますよね。もう会えないのかもしれないけど、その娘に対する愛情が現在もなお生き生きとしているニュアンスになります。

 

【結論】悲しい・哀しい・愛しいの意味の違いと使い方は?

悲しさ・哀しさの意味の違いについて調べてみました。

 

  1. 悲:心+非。非は、左右にわかれるの意味。心が引きちぎられて、いたみかなしむという意味を表す。
  2. 哀:口+衣。衣は、まとうの意味。同情の声を寄せ合う様から、かなしむ・あわれるの意味を表わす。
  3. 「悲」は広くかなしみ一般
  4. 「哀」は死者に対する哀告の儀礼
  5. 切ない気持ちが「愛」と表現され、かなしいという意味になった

 

以上です。

 

使い方としては、

  1. 自分の心の状態を表わすなら「悲しい」
  2. 誰かに同情するなら「哀しい」
  3. 愛と切なさを文学的に言いたいなら「愛しい」

 

このように使い分けてみてください。

 

以上、悲しみと哀しみの違いと意味は?使い方には明確な違いがあった! でした

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