『プロ倫』要約と解説|ウェーバーの言いたいことはコレだけ!




マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
あらすじや内容をコンパクトにまとめて要約解説します。
分厚い本ですが、決して堅苦しくて難しい本ではありません。

むしろ「ユーモアとセンスにあふれた楽しい本」だと個人的には考えています。

『プロ倫』ほど人口に膾炙されながら、読まれていない本もありません。

この本には、まさにマーク・トウェインのこの言葉がぴったりなのです。

‘Classic’ – a book which people praise and don’t read. 「古典 誰もが褒め称えるが、誰も読まない本」

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神要約

この本のテーマは「資本主義が生まれる歴史的起源の探求」。
「近代社会は資本主義によって成り立っている」
「なら資本主義はどのように生まれたか?」

という問題意識です。

そして、のっけから、ウェーバーはおもしろいんですよ。

資本主義の精神の例示を挙げるために、ある一節を引用するんです。それが、

ベンジャミン・フランクリンの自伝の一節
「時は金なり」といった富を得るための教訓

これが引用されます。

このウェーバーの「センスの良さ」に私は度肝を抜かれました。

ベンジャミン・フランクリンというアメリカ人。
彼はいわゆる「セルフヘルプ・自己啓発の権化」のような人間です。
そして自己啓発書は、現代では「ビジネス書」に生まれ変わりました。

そして相変わらず生き残っている。
それどころか猛威をふるっている。
いな、もはや出版業界の救世主となっています。

しかも忘れてはいけません。『プロ倫』は、学問研究の本です。

学問研究の世界で、自らの論文の中に、フランクリンの自伝を引っ張ってくる。
学者といったら、みんな自己啓発だのセルフヘルプなんて馬鹿にしてますよね。

このウェーバーの「度外れのセンスと勇気」

これでわたしは一気にウェーバーに引き込まれてしまいました。

ベンジャミン・フランクリンに見る「資本主義のエートス」

「資本主義社会で成功する人間」。その条件とは何か?

それは、「資本主義に適した生活態度(エートス)を身につけた人間である」
このようにウェーバーは述べています。

では、その生活態度とは何か?

  • もうけを出すことを義務とみなす
  • それを怠るものを愚鈍とみなす
  • 怠け者は「義務忘却者」として倫理的に非難する

こんな生活態度です。すげえ。

ここでウェーバーが引用するフランクリンの言葉を。

時は金なり。

時は貨幣であることを忘れてはいけない。
1日の労働で10シリングをもうけられる者。

– これが、散歩のためだとか、
– 室内で懶惰(らんだ)にすごすためだとか、
– そんなことに半日を費すとすれば?

たとえ娯楽のためには6ペンスしか支払わなかったとしても、
それだけを勘定に入れるべきではない。
そのほかに、なお5シリングの貨幣を支出、というよりは、投げ捨てたのだ。
このように考えねばならない。

信用は金なり。

信用は貨幣であることを忘れてはいけない。
ある人が、金を私に貸してくれた。
その支払期日の過ぎてからも、私を信用して、
その貨幣を私の手もとに残しておいてくれたとしたら?

– 私はその貨幣の利息、
– あるいはその貨幣でできること、
– これらを彼から与えられたことになる。

もし信用があって、充分に利用できるとき。
それをお金に換算すれば、少なからぬ額に達することは明らかである。

ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』より

フランクリンの正直さは本当にすばらしいです(笑)

ちなみにジョルジュ・バタイユという20世紀フランスの思想家がいます。
彼も、自身の構想した「普遍経済学」の理念において、「フランクリンを引き合いに出す箇所」があります。

「フランクリンの教訓は、見事に倫理的色彩を帯びている」
とウェーバーは指摘します。

もうけを得ることは、本来よき生を送るための手段であった。
なのに資本主義の精神においては、
金儲けそれ自体が、目的化されている。

ウェーバーはこういうことを、フランクリンの言葉から読み取ったのです。


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プロ倫によると「金儲けの精神は予定説」から生じた

金儲けそれ自体が、目的化された社会。
この一見倒錯した価値観は、どこから生じたのでしょうか?

ウェーバーはそれを、禁欲を旨とするプロテスタンティズムから生まれたと主張するのだから驚きです。

プロテスタントも色々あります。
ウェーバーは、カルヴァンという宗教家が唱えた「予定説」。
これが「資本主義の精神の誕生」に、大きく影響していると判断します。

「予定説」というのは悪名高い教え。

  • 救われる人と救われない人
  • 天国と地獄

これが既に決定されている、という教えです。

この教えのせいで、「天国に入るためにこの世で善行を積む」
といった従来の価値観が覆されてしまいました。

救済に関して個人は全く無力な存在になってしまう。

どうしたら、自分が救われる側だと知ることができるのか?

人々はこれが知りたくてたまらないわけです。

※ちなみに、イエス自身は、こんな考えを否定しています。
まことに、金持ちが天の国へ入るのは難しい。)

そこで言われたのが、
「自分は救われている側だと確信し、自らの職業に励むこと。
与えられた職業に励むことこそ、宗教的使命である。」

というものでした。

この教えから次第に、
禁欲的に職業に励む人は「宗教的使命=神の命令を全うする人」である。
反対に、怠ける人は「神に背く人」である。

このように、みなされ始めました。

要するに、

金儲けに励まない怠け者は、あの世でも罰せられる、ということです・・・。
(あの世の話ってそんなに都合よく書き換えていいものなのでしょうか?)

ともあれ、ここから
「職業的な成功者=宗教的な成功者」
この図式が成立していきます。

そして、この世俗性と宗教性は、時間の経過とともに、重要度が逆転します(世俗性の優越・支配)。

予定説の世俗化=「成功」のスポーツ化

世俗性の価値が、宗教性の価値を覆した局面。(まさに現代!)
ここで生じるのが、「資本主義の精神」であるとウェーバーは指摘しました。

世俗化が一層進んだ私たちの社会は、どうでしょう?
私たちは、職業に励むことについて、宗教的な理由を一切必要としなくなりました。

なぜ、禁欲的に仕事に邁進するのか?

その理由は、もともとは「宗教的使命を全うするため」でした。
それがいつの間にか、仕事に邁進しなければ

  • 人生の落伍者になるから。
  • 社会的に非難されるから。

というふうになります。

「職業に励むことの宗教的理由」が抜け落ちてしまったのです。(良くも悪くも)

むかしは、宗教的な理由から、禁欲が要請されていました。
しかしもはや、禁欲に宗教的な意味づけは消え去りました。

では現代において、禁欲の意味とは?

それは、単に「効率的で確実な目標達成のために効果的だから」
とウェーバーは指摘します。

「目標達成」とは、「成功」という言葉にも言い換えられます。

そして職業は効率性や確実性を競うスポーツのようなものとなる。
私たちが生きているのは、禁欲の意味が詮索されない、禁欲的な文明の時代である。

ウェーバーは結論においてそう述べています。

マックス・ウェーバーの『プロ倫』を心の慰めにしよう

高等遊民であるわたくしは、生来怠け者です。
なので、「努力=善」とされる社会への違和感がずっとありました。
その違和感を、ウェーバーがこれ以上ないほど説き伏せてくれた。
そんな感動がありました。

それにしてもウェーバーの話を聞いていると、
現代社会の価値観が決して普遍妥当性を持つものではない
というふうにも感じられます。

この「金儲けと怠け者」という図式。
現代日本の価値観にもありありと反映されていますよね。

なので、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』。
この本は、仕事で失敗したときの心の慰めの書である。
こう解釈することもできます。

ツラくなったら『プロ倫』を片手に、この社会を乗り切って行くこともできるでしょう!

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2017.06.15

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