荒木優太さんの無責任の新体系 君はウーティスと言わねばならない
感想・レビュー・評価です
面白いです!!
ぜひぜひ!
この記事は、以下の動画のおおまかな文字起こしです
荒木優太『無責任の新体系』が面白い。内容解説と評価・レビュー
今日は1冊の本を紹介します
紹介する本は荒木優太さんの無責任の新体系 君はウーティスと言わねばならない
どういう本かと言うと人文系の本なんです
荒木優太「先生」と呼ばれるのは嫌なのかもしれないので荒木さんといいますが
荒木さんは在野の研究者です
研究者だけど大学教員ではないという方なんです
主著にこれからのエリックホッファーのためにという本がありまして
これがかなり話題になりました
研究者ではない日本戦後で活躍した在野の研究者たちの評伝集なんです
在野研究の心得ということでアカデミズムには入ってないけれども学問研究に興味がある人たちに勇気を与えるような本を書いてたんです
学者さんと言うとこの作品についてのこのテーマについてっていう研究が多いんですけど
荒木さんはそうじゃなくて幅広く人文系や文学や文化論に対して関心が深い方です
その一環で無責任の新体系という本を出されました
この本は非常に面白いのでぜひ読んでください
これからどんな本か簡単に紹介するんですけど
こんな紹介よりも100倍この本の方が面白いので 是非読んでください
まずタイトルの意味です
無責任の新体系ってどういう意味だっていう話です
丸山眞男という日本の政治学者がいまして非常に有名だったんです
現代政治の思想と構造という本が主著んですけど
そこで無責任の体系という言葉が言われました
無責任の体系っていう言葉は広くインテリたちの間に広まりました
無責任の体系とはなにかと言うと
これは戦争責任を問うたものなんです
これは丸山眞男の話です
第二次世界大戦ファシズムが支配した戦争だったんですけど
日本にも日本的ファシズムがあったんじゃないかと丸山眞男はいってます
その中に無責任の体系
日本独特の戦争に入ってしまった構造ということで無責任の体系と言われています
体系の中身は三つの層に分かれていて中心に役人がいます
これはハンナアーレントのエルサレムのアイヒマンみたいな話に繋がるんですけど
役人の上に神輿があります
これが天皇とか絶対的権威のこと
役人が中心にいて教育なり政治なり外交なり戦争を支配して
その下に無法者・浪人がいて
これがいわゆる大衆的なところです
どんどん暴徒と化して勢いを増していく
例えば日露戦争
小村寿太郎がポーツマス条約を締結をしましたが
日本の国民たちはその条約の内容に不満を持って
日比谷の焼き討ち事件を起こして暴徒になったんです
司馬遼太郎はその事件が日本のこれからの悲劇の始まりだったという話をしています
そのように暴徒化するのが無法者たちで
無法者役人神輿という三つの体系がいて
それぞれ責任を取れない
誰も責任を持たない
全員の責任になってしまっているのが無責任の体系だとを丸山さんは話しています
実際に物を動かしているのは役人なんだけども
役人は暴徒に引きずられるし神輿の権威に動かされる
ただし神輿自身は何も 命令していない
っていうような構造
誰に責任があるのかわからないからこそ誰にでも責任があるし
誰にでも責任があるからこそ責任の主体を特定できない
っていう独特の構造を無責任の体系と言います
丸山眞男の話で終わりそうなのでこの辺で切り上げます
荒木優太さんが無責任の新体系っていうタイトルをつけたのはかなり挑戦的だと思います
無責任の体系って丸山眞男という偉い学者が考え出した凄い概念で
しかもそれは第二次世界対戦の日本の太平洋戦争の原因には思想構造に関わるものすごい大事な概念に対して新体系と名乗るのはよっぽど挑戦的なものなんです
このタイトルだけでもも凄いな
でサブタイトルは君はウーティスと言わねばならないと 書いてありますけど
どういう意味なのかって話です
この本に書いてありますけれどもウーティスっていうのはギリシャ語で何者でもないっていう意味で英語で Nobody という意味です
これはオデュッセウスっていうホメロスの叙事詩です
一つ目の巨人のサイクロプス
ギリシャ語だとキュプロクスっていう発音になります
そのキュプロクスを退治する時に
お前は誰だ
お前の名を言ってみろ
とサイクロプスが言うんですね
北斗の拳のジャギみたいな
ケンシロウみたいなことを言うんですね
俺の名を言ってみろという
この場合はお前の名を言ってみろですけれども
それに対してオデュッセウスは名前を言っちゃうと復讐されたり負けちゃうっていう設定だった
機転を利かせて私は何者でもないって言ったら
サイクロプスが困っちゃうっていう感じなんです
だからある意味でウーティス何者でもないということで
無責任の新体系で伝えていることは面白くて
あなたはウーティス自分自身を何者でもないと言わなければならないと言っていることです
普通責任の話って責任を持とうよ無責任はだめだよっていう話がほとんど
でもこの本はあえて 君はウーティスと言わねばならない
っていうことは平たく言うと君は責任を取っちゃいけないと
君は自分自身の名前を発してはいけないと言うんです
だからこれどういうことなのっていう
この本を読む前の感想です
既にこんな感じで面白そうです
タイトルだけで既に謎がたくさんあって面白そうな本じゃないかって事がわかります
内容は多岐にわたります
無責任の体系っていう丸山眞男の話から始まって
面白いのは現代の日本の文学者とか評論家とか学者の評論めいたことにきちんと読んでいるところがすごい
あとは世の中自己責任っていう言葉が流行っていますけど
この本は直接論じているわけではないですけども
そういうことについて考えてみたい人にも楽しめる本だと思います
哲学者のレヴィナスやアーレントっていう日本人が大好きな哲学者がいます
レヴィナスやアーレントは無批判に受容されるような哲学者です
レヴィナスがこう言ってた
アーレントがこう言ってたとみんな言いたがる
だけど日本の知識人が彼らをどうやって読み込んで自分の意見に落とし込んでいるのかっていうの荒木優太さんはしっかり読み込んでいます
若干ハンナアーレントと違うよねとか
AさんとBさんはどちらもアーレントを担いでいるけど
担いでいるところが違うよね
と言ったアーレントをどう読んでいるかをすごく細かく分析している
すごい本なんです
よくこんなに荒木さん日本人の書いた本を細かく読んでるなってすごい
無責任の新体系とは何だって言うと
丸山眞男みたいに 新しい体系を作っているっていうわけではないです
ウーティスと言わなければならないってどういう意味かって言うと
すごい話端折りますけれども
要するに
読みたいように読め
楽しみたいように楽しめ
てことなんです
結論を言うと物語っていうのは読み方とかコードとかコンテクストっていう風に言いますが
例えば前田愛っていう文学研究者が文学テクスト入門という本を書いていますが
コードとかコンテクストに即した読み方を入門させてくれるすごい本です
でもこれは頭のいい人じゃないと読めない
例えば僕が今言った無責任の体系というのは丸山眞男という人が打ち出した概念で
っていう話はコンテクスト文脈それまでの前提知識を解説しているわけです
これをハイコンテクストな読み方と言います
そうじゃなくてローコンテクストっていう読み方はあります
それは丸山眞男がそう言ってたとかそんなこと全然関係なくて
ただただこの本を純粋に読んでいって面白いか面白くないかっていうのを感じる
自分の感覚だけで勝負する読み方をローコンテクストと言います
それで本当に大事なここで面白いなと思ったのは読書のあり方
無責任の新体系で語られたメッセージなんですが
面白くなかったっていう感覚も大事にしてほしいっていうこと
ある本を読んでつまらなかったっていう感覚はすごく大事
つまらなかったという感想は2回目に選んだら全然違う感想が出るかもしれない
面白い本でもつまらない本でもそうだけれども
昔読んだ本はつまらなかったけど数年後に読んだら楽しかった
学生時代に読んだら面白かったけど数年後に読み直したら全然面白くなかった
本当にそういうことがありますよね
ヘラクレイトスと言って 同じ川に二度入ることはできないと言ったんですけども
まさにこういうことです
同じ本を二度読むことはできない
川っていうのは対象が水が変わっているから同じ川に入れないんだけど
読書っていうのは自分が変わってるから
物は同じなんだけど同じように読むことはできないと
読書体験を大事にして欲しいし
何度も何度も繰り返し読んで欲しい
っていうメッセージもあります
丸山眞男とか戦後責任の話も多いんですけど
そういうことに興味がなくても本をどうやって読むかっていうことが最後の方で語られてるので
その章だけ読んでも面白いと思います
責任とか難しいことよくわからないって人は最後の章から読んでもいいと思います
アーレントの話やレヴィナスの話は責任に関連していて
アーレントはエルサレムのアイヒマンの話だし
レヴィナスは顔っていう概念で匿名とか無限責任っていう話をしている
ので荒木さんは取り上げてるんですけど
あの辺の話は結構難しいです
僕もよくわかってないくらい難しいので難しいなって思ったところ
まさに飛ばしてもいい
それこそ無責任な読み方
この本こそまさに無責任に読んでほしいと思うんですね
レヴィナスとかアーレントとか面白くない
難しいわからないっていう時はもう最後だけ読んでも全然オッケーです
ということで無責任の新体系という本をご紹介しました
非常に面白い本なので是非とも読んでみてください
比較的新しい本ですしこれから荒木優太さんは活躍されることが見込まれている在野研究者なので
是非とも最初から古参ということでワシが育てたということで読んでいただければと思います
本当に面白い本
責任のことを考えたり是非じっくり考える良い機会になります
なので是非読んでみてください
今回の動画は以上です
この本を読んでみたいとかって思ってくださったらぜひチャンネル登録をお願いします
チャンネル登録よりもこの本を是非読んでほしいと思います
冒頭でも言いましたけれども
僕の説明よりかこの本を読んだ方が100倍面白いのでぜひ手に取ってみてください
大きめの本屋に行けばあると思いますので最初と最後のところだけ読んでもいいと思いますので
まずは立ち読みしてみてください
無責任に読むっていうことが大事ですね
今回の動画以上です
ごきげんようさようなら
参考文献
無責任の新体系 ──きみはウーティスと言わねばならない 単行本 – 2019/2/13
丸山真男の無責任の体系の話はとりあえずこれを
日本の思想 (岩波新書) 新書 – 1961/11/20
超国家主義の論理と心理 他八篇 (岩波文庫)