福本伸行アカギ感想|自ら選んだ生き方を全うする人生とは?




ずいぶん前の話ですが、

「アメトーーク」で漫画家の福本伸行氏の作品をテーマに、

お笑い芸人たちが、おもしろさや読みどころを紹介していました。

 

福本氏の代表作は

『カイジ』

『アカギ』

『銀と金』など、

 

多くはギャンブルをテーマにしています。

 

何がおもしろいのかというと、

お笑い芸人たちの基本的な見解では、

「ギャンブルをテーマに、人間の醜い部分を描いている点」

ということでした。

 

確かに福本作品では、人間の醜い部分がしばしば描かれています。

しかしそれ以上に、

 

福本氏は「人間とは何か」というテーマを持って

制作に取り組んでいるように思えます。

 

アカギという主人公のイメージ

具体的には、合理性を超えた何か、を追求しているように思います。
 
たとえば『アカギ』という麻雀漫画では、
主人公アカギは「天才」として描かれています。
 
その天才性は単に麻雀の技量の問題ではありません。
アカギは生き方として、凡人とはかけ離れている。
これを福本氏は絶えず示しています。

 

ギャンブルを支配する理論とは?

ギャンブルを支配する理論とは何でしょうか?
 
それは確率論や数学的な実証データだと考えられてきました。
 
近代の哲学者・数学者パスカル(気圧のヘクトパスカルの由来の人)は、
ギャンブルをテーマに
確率論と期待値の理論を考案しました。
 
敷衍して言うならば、
近代から現代までの世界を支配する理論も、数学・科学です。
 
また合理的思考といえば、
数学的・客観的・実証的な思考を指します。
 
ギャンブルの際に、たとえば

  • 「場の流れ」
  • 「空気」
  • 「勢い」

といった非科学的な考えは、嘲笑の的です。
 
また、「宝くじ」。
合理的思考を発揮する手段がないギャンブル。
だから「夢を買う」と揶揄されます。
 
だからギャンブルで勝とうとする者は、
確率やデータを余念なく集め、それに基づいた投機をします。
もちろん麻雀でも確率論は非常に有効です。

 

確率追求は「三流」というアカギ

しかしアカギはこのような確率論的な思考を
「三流」と言い、
「ギャンブルの本質を知らぬ者」と言います。
 
どういうことでしょうか。
一見、確率論を軽視するほうこそ三流に思えます。
 
ところがアカギは、
「追い詰められ、主体性を失った人間が最後にすがる理論」
それが合理性・確率論だと考えます。
 
アカギは、常に「圧倒的に不利な状況下での戦い」を余儀なくされます。
合理性だけでは勝てません。
相手も麻雀における合理性を知り尽くしたプロです。
 
ところがアカギはそこにスキを見つけます。
合理性に頼る相手の思考・心理を読みきり、そこに罠を仕掛ける。
 
つまり、アカギは合理性を知り尽くしながら、
その合理性にとっては考えられない打ち方をしているわけです。
 
しかし確率としてはそれこそ万に一つもない。
合理性に即しながら、偶然に賭けなければいけません。
偶然にはどんな合理性も及ばないからです。
 
仮に私たちがアカギと同じ狙いを思いついても、
実際にその理論に殉じた行動ができるかと言えば、決してできません。
あまりにも自らを危険にさらすからです。
 
それゆえ我々は、危険の大きい時ほど、
「主観の交わらない、客観的データ」
すなわち確率や合理性の方をはるかに信用してしまうのです。
 
しかし身の破滅がかかったギャンブルのさなか、
確率論こそもろく、信用ならないものではないのか?
 
確率を超えたもの、
たとえば自らの予感・直観と偶然に殉じる気慨。
これこそ死地を切り開く行動ではないのか?
 
アカギの生き方とは、透徹した合理性に基づきながら、
それを超えて行く賭けを迷いなく決断し、それに自己の全存在を委ねられることです。
 
これが凡人とは大きく異なる生き方と冒頭に述べた点です。

 

まとめ

あまりに下手な説明しかできませんでした。
 
しかし福本氏の作品には、
エンターテインメント以上の、
人間へのまなざしを感じることができます。
 
『カイジ』も『銀と金』も、
違った形で人間とは何かというアプローチがとられています。
 
特に『カイジ』は現在連載中の「和也編」は非常におもしろいです。
あるお笑い芸人が、
「主人公よりも悪人のほうが正論を吐くのが衝撃的」と言っていました。
 
私たち読者は、
何か人間の生をえぐるようなものを、
福本氏の作品に感じていると思います。
 
ちなみに、福本氏は自作の中で
「あえて言えば『黒沢』が好き」とおっしゃっていました。

 

『黒沢』は奇跡の作品であると個人的には考えています。

 

人間の尊厳とは何か?

これを知りたければ、まずは『黒沢』を読むべし。