三島由紀夫の本領はエンタメ小説にあると個人的には思ってます。ちくま文庫さんは三島のエンタメ系の小説やエッセーを取り揃えていてマジでセンスがいいなと思ってました。感謝感謝です。 https://t.co/zSI5tLkV4x
— Master Neeton (@MNeeton) January 12, 2018
三島由紀夫『命売ります』は、本当に超絶面白い小説です。
「命売ります。お好きな目的にお使いください。当方、27歳男子。秘密は一切守り、決して迷惑はおかけしません」
もうこれだけでめちゃ面白い。
三島由紀夫といえば
仮面の告白
金閣寺
潮騒
春の雪
豊饒の海
みたいな純文学(新潮文庫)や演劇のイメージですよね。
でも、じつはエンタメ小説(大衆小説・娯楽小説)や、こじゃれたエッセイをたくさん書いていたんです。
三島由紀夫のレター教室
反貞女大学
命売ります
などなど。
冒頭のように、私個人的には三島由紀夫はこういった大衆小説のほうが、断然好きです!
そのエンタメ小説の中でも大変な傑作。
とにかくおもしろい。
夢中になってページをどんどんめくる。
サスペンス・ちょっと官能っぽい感じ・そして冷めたギャグっぽい調子
これらが渾然一体となった大傑作です。
2018年の1月、BSジャパンでドラマ化もしました。
これは必見です。
三島由紀夫『命売ります』原作を紹介しつつ、ドラマも随時感想を述べたいと思います。
下記クリックで好きな項目に移動
三島由紀夫『命売ります』原作のストーリー
これもちくま文庫に昔っから、何十年も前から入っていたのですが、
2015年あたりに、ちくま文庫が、思いっきり宣伝したんですよ。
それでバカ売れ。30万部ほど売り上げました。
帯効果ってスゴイです。
で、あらすじですが、とりあえずWikipedia。
『命売ります』(いのちうります)は、三島由紀夫の長編小説。自殺に失敗した男が「命売ります」という広告を出し、自分の命を捨て売りしてしまおうとする物語。死ぬことを恐れない主人公と、彼を利用しようとする人間たちとの間に繰り広げられるユーモラスな騒動のハードボイルド小説調の娯楽的な趣の中にも、現代社会における生と死や、次第に変化してゆく主人公の心理の逆説が描かれている
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%BD%E5%A3%B2%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99
基本的なあらすじは、Wikipediaに書いてありますね。
書き出しはこんな感じです。
まず見えたのは、磨ガラスの大きな窓だった。何も飾りのない窓で、あたりは無闇に白っぽい。
「気がついたようですよ」と誰かが言った。
「まぁ、これで良かった。人助けをしたと思うと、いちにち気分が良いですよ」
羽仁男は目を挙げた。看護婦と、 1人の消防隊員の制服を着たずんぐりした男が立っている。
「そのまま。そのまま。まだ乱暴に体動かしちゃいけません」
と看護婦は彼の肩先を押えた。
羽仁男は自分が自殺に失敗したのを知った。
命を売るという広告を出すシーンはこちら。
その日から、今までに続くと思われた毎日がポツリと切れて、何事も可能になったような気がした。その日その日は二度と訪れず、毎日毎日がちゃんと息絶えて、蛙の死骸みたいに白い腹を見せて並んでいる姿が明瞭に見える。
トウキョウ・アドには辞表を出し、景気の良い会社なので、退職金もたくさんくれた。これで、自分は誰にも気兼ねのない生き方をすることになったのだ。
三流新聞の求職欄に、次のような広告を出した。
「命売ります。お好きな目的にお使いください。当方、27歳男子。秘密は一切守り、決して迷惑はおかけしません」
そしてアパートの住所をつけておき自室のドアには、
「ライフ・フォア・セイル 山田羽仁男」
と洒落たレタリングをした紙を貼った。
命売りますは笑える小説
高等遊民の印象としては、笑える小説。
結構、構造としては、ギャグっぽいんですよ。コメディーというか。
たとえば主人公は山田羽仁男(はにお)というんですけど
↓
怖い人から依頼が来て、命捨ててくれといわれる
↓
なんともなく命を張るけど、なんか相手がびびってなんだかんだで命を落とさずに済む
↓
依頼主から「こいつなんて肝が据わってるんだ、とんでもない大物だ」と驚かれて株が上がる
みたいな感じ。
なんか「ラッキーで強い番長倒してどんどん株が上昇する」みたいな、
コメディー不良まんがみたいなノリがあります。(エンジェル伝説とか、特攻の拓とか、そんなやつ)
上品でおしゃれな恋愛小説のおすすめが、ちくま文庫の三島由紀夫作品
「おすすめの小説教えてください。」
みたいな質問、たまに高等遊民は聴かれます。
そのときに、どんなジャンルが良いのか聞いたうえで、
「おしゃれな感じの」
「恋愛系だけど上品な感じの」
そういうときに、ちくま文庫の三島由紀夫を激しくおすすめします。
レター教室とか。
この命売りますもそうですね。
以前Twitterでフォローしている方がこんなことを呟いていました。
ファッションとしての読書も個人的にはありだと思っているけど、何を読めばファッショナブルかは難しい。村上春樹では、流石にありきたりだし、フランス文学は、(ファッションとして読むには)気取り過ぎだし…
その時にわたし、ちくまの三島由紀夫と答えたら、結構喜んでくれました。
おお! ちくまの三島は新潮の三島よりも軽いものが多いという事を知っている玄人向きのチョイスなので、通じる人が限られてしまいそうな気もしますが、確かにお洒落だと思います!
「とにかくファッショナブルな本を教えてください。」
⇒「三島由紀夫でしょう!」
という感じ。
ただし、巻末解説がちょっと残念です。
新潮文庫のような、きちんとした作品解説が一切ありません。
なんか解説者、エッセイストとか小説家の方が、思いついたことを書いてるだけという感じ。
感想文・思い出話しかしてない。(このブログもそうですが)
読者としては、書誌情報くらい書いてほしいですね。
解説は、読者の読書体験をより豊かにするために書くものなのですから。
解説がしっかりしている版はあるかというと、三島由紀夫全集版。
全集ならその辺しっかり書かれているので、
「命売ります」小説版を読んでめちゃくちゃ面白かった
もっとこの作品について詳しく知りたい
そんなあなたは、ぜひ図書館などで三島由紀夫全集を借りてみてください。
命売りますの解説文のところだけ読めばいいです。
また全集自体、いくつかありますからいくつも読んでみると楽しいですよ。
ドラマ「命売ります」あらすじと登場人物。見どころは山田羽仁男をどう演技するか?
動画のあらすじ、めちゃくちゃ面白そうにできてますねぇ。
映像のチカラ、すごいなあ。
公式サイトから、イントロダクションです。
中村蒼演じる主人公の山田羽仁男は、広告代理店に勤め、経歴、収入など何不自由ない生活を送っていた。しかし突然自殺を決行。だが失敗し、「命を売る」ビジネスをスタートさせることに。次々と舞い込んでくる奇々怪々な依頼に応じる中で、「命」と向き合うことに…。
http://www.bs-j.co.jp/inochiurimasu/intro/
出演:中村蒼、前田旺志郎、田口浩正、YOU、田中泯、橋本マナミ、大杉漣、酒井若菜、谷村美月、壇蜜、森本レオ、松下由樹、大谷亮平、山崎銀之丞、矢本悠馬、大地真央、津田寛治、柄本時生、木下隆行、ほか
Wikipediaより
これ主人公の山田羽仁男は、相当演技が難しそうですね。
- なんか常に落ち着いている。
- 命を捨てることになんらためらいのない異様さ。
- だからといって、感情が何もないわけじゃない
こうした相矛盾するような内面を、どう表現するかが、役者や演出の見どころですね。
まとめ
三島由紀夫の娯楽小説「命売ります」をご紹介しました。
原作とドラマの両方について言及しました。
ちょっとごちゃごちゃしてるかもしれないので、もしかしたら原作紹介とドラマ紹介で2つに分けるかもしれません。
ドラマを見て原作を知った
原作積読だった
存在さえ知らなかった
ぜひ、原作も読んでみてください♪