【命売りますネタバレ】原作ラストはまさかの拍子抜け?伏線の練りすぎかも

三流新聞の求職欄に、次のような広告を出した。

「命売ります。お好きな目的にお使いください。当方、27歳男子。秘密は一切守り、決して迷惑はおかけしません」

この面白すぎるフレーズが印象的な、三島由紀夫『命売ります』。

あの作品、ラストはどうなったっけ?

その最後について、簡単に紹介&感想を述べてみます。

三島由紀夫『命売ります』がBSジャパンでドラマやるそうですね。
土曜の夜9時。

この小説、めちゃおもしろいです。

三島由紀夫というと、純文学のイメージがありますか?

仮面の告白
金閣寺
潮騒
春の雪

お堅いお堅い!!
これは新潮文庫の赤い本です。

三島由紀夫の真髄は、娯楽小説やエッセイにあるんですよ。

三島由紀夫のレター教室
反貞女大学
肉体の学校
私の遍歴時代

などなど。

じつは、ちくま文庫に三島由紀夫のこうした大衆小説がたくさん作品化されてます。
中でもこの「命売ります」は、本当におもしろい。物語として。

「こんなにおもしろいストーリーを持ってる小説は、ちょっとないぞ」

って感じ。

まずタイトルがもうおかしいでしょう笑

内容としては要するに

「生きている意味のなさに突然気づいた」

「命売りますと新聞広告を打つ」

「やばい人たちから依頼がくる」

「依頼を実行するも、なんか死なずに済んで、全然動じないから肝が据わってると驚かれて株が上がる」

こんなことの繰り返しで、ちょっとギャグっぽいんですよ。

ではラストシーンのご紹介です。

ネタバレしてるので、見たくない人は注意です!!!

ネタバレじゃなくて、原作のあらすじとか、読みどころやドラマなどの話が知りたい方は、以下をどうぞ。

命売ります三島由紀夫ちくま文庫の帯宣伝

命売ります原作のあらすじと感想|ドラマ化した三島由紀夫の最高傑作!

2018.01.13

三島由紀夫「命売ります」結末と感想

主人公は山田羽仁男。27歳。コピーライター。

ある時突然、生きている意味がないと悟り、
「命売ります」と新聞広告を出して、依頼を待ちます。

それで様々な依頼者、様々な物語が展開する、という話。

物語の流れとしては

「生きている意味がない」

「命売ります。金も別に要りませんが、もらっておきます」

「色んな依頼」

「命に対する考え方が変わってくる」

「命を落とすことに恐怖を感じるようになる」

「ラストで、生きたい、助けてという気持になって、警察に助けを求める」

ざっくりいうと、こんな流れです。

↓からネタバレ本格的になります。

最初の依頼がラストシーンの伏線になっている

最初の依頼と、ラストシーンがつながってくるんですよ

最初のシーンのあらすじはこちら。Wikipediaより。

第一の依頼人の老人がやって来た。老人は、50歳年下の若妻・るり子が成金悪党の三国人の愛人となってしまったことを話し、羽仁男がるり子の間男となって2人でその三国人に殺されてほしいと依頼した。

羽仁男は老人の依頼に従い、るり子の部屋に行くが、彼女の話によると、その三国人は秘密組織・ACS(アジア・コンフィデンシャル・サーヴィス)の人間らしかった。羽仁男はるり子とベッド・イン中のところをベレー帽をかぶった三国人に見つかるが、殺されずに帰された。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%BD%E5%A3%B2%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99

このACSというスパイ組織が、ポイントです。

↓が、クライマックスの物語のあらすじです。

ある日、羽仁男は飯能駅前で、品のいい初老の外人に羅漢山の場所を聞かれ、道を案内中、商工会議所の前に待ち伏せしていた車に拉致された。目隠しされて約2時間後に到着した場所は洋館の地下室だった。そこにいたのは車に同乗した男2人と、甲虫の薬の実験台の時にいた外人3人と、るり子の愛人だった三国人と、羽仁男に対して申し訳なさそうな顔している第一の依頼者の老人(実は三国人の使用人)だった。

三国人らは本当に秘密組織・ACSのメンバーであった。リーダー格の三国人は、「お前は警察の人間であるのことをここで白状したらよいね」とたどたどしい日本語で言った。彼らは、「命売ります」の広告は自分たちをおびき寄せる罠で、羽仁男をおとり捜査官だと思い込んでいたのだった。

彼らはわざと手下の老人や図書司書の女を使って羽仁男を泳がせ、羽仁男の仲間とおぼしき警察スパイを調べる尾行していたのだった。彼らは、羽仁男がA国大使のためのスパイ活動をした時から羽仁男を警察スパイだと確信し、絶対に捕らえようとやっきになっていたのだった。羽仁男は偽小型爆弾を取り出し、自爆すると脅して彼らを退散させ、別のドアから何とか逃げた。


「自分から命を捨てる」

これは何とも思わなかった羽仁男ですが、

「人から命を狙われることは怖かった」

ということになります。

ラストシーンは、こちら。

羽仁男が命からがら町まで来るとそこは青梅市だった。羽仁男は交番に助けを求め、密輸と殺人秘密組織・ACSのことを話すが、住所不定の羽仁男の言うことなど信用してもらえなかった。泣き声で訴える羽仁男に警官は、命を売る奴は刑法を犯していないが人間の屑だと言い放った。羽仁男は留置場にも匿ってももらえず、突き帰された。

交番のシーンを具体的に引用してみると、こんな感じ。

町の中を傷だらけの体で駆け抜けながら、
「助けてくれ! 交番はどこだ」と叫んだ。

「交番はそこを右へ曲がったところだよ」と教えてくれる声があった。
羽仁男は交番の床にくずおれると息を切らして、何もしゃべれなかった。中年の巡査がびっくりして
「君どこからきたの? おや、縛られてる。おや、怪我してるね」とのんびりと言った。
「ここは……ここはどこですか」
「青梅市だよ」

「一体どうしたんだね」と巡査は夜遅く帰った息子を咎めるような口調で尋ねた。
「殺されかかったんです」
「ふーん、殺されかかった、殺されかかった、と……」
とまためんどくさそうに万年筆のキャップをはずし、引き出しからわら半紙を出して書き始めた。それが恐ろしくのろいのである。

おまわりさんには、全然まともにとりあってもらえない、ということです。
羽仁男は怒ってけんかになります。警察官はいいます。

「ひとりぼっちで変な妄想起こして、警察へ駆け込んで、被害を訴える。そんな男は珍しくないさ。君1人だと思ったら大間違いだよ」
「そうですか。そんなら立派な犯罪者扱いをしてください。ぼくは不道徳な商売をしていたんです。命を売っていたんですよ」
「はぁ、命をね。それはご苦労様なこった。しかし命を得るのは君の勝手で。別に刑法で禁じてはいないからね。犯人になるのは、命を買って悪用しようとした人間のほうだ。命を売る奴は、犯人なんかじゃない。ただの人間のクズだ。それだけだよ」
羽仁男の胸の底を冷たいものが通り過ぎた。ここで態度変えて、どうでも刑事にすがりつかねばならぬと思いついた。
「お願いです。僕を留置場に何日でもおいてください。保護してください。本当に命を狙われているんです。このまま行ったら殺されるに決まっています。ね、お願いですから」
「だめだよ。警察はホテルじゃない。ACSなんてくだらない夢は今日から忘れるんだな」

原作のラストシーンは、じつはわたし、「拍子抜け」という印象なんです。

彼はとうとう警察署の玄関から外へ突き出された。
たった1人だった。素晴らしい星空で、署の前には、警官相手の飲み屋の2,3の赤い提灯が、暗い露地の奥にゆらめいているだけだった。夜は羽仁男の胸に張り付いた。夜はぺったり彼の顔に張り付いて窒息させるかのようだった。
署の玄関の2,3段の石段を下りかねて、そこについに腰を下ろすと、羽仁男はズボンのポケットから、ひね曲がった煙草を取り出して火をつけた。泣きたくなって、咽喉の奥がヒクヒクしていた。星を見上げると、星はにじんで、幾多の星が1つになった。

ここで終わりです。

「え? ここでおわり?」みたいな。

もう少し続きがあっても良さそうなのに、「まあここで終わりでいいや」的な感じ。

なので三島由紀夫『命売ります』の感想は、こちら

ラストシーンはイマイチ。
でも、とにかくコンセプトやそれぞれの物語はめちゃくちゃ面白い。

ドラマでは、どう展開するのか、楽しみです。

まだ原作読んでないのにネタバレだけいい気になって読んじゃった方。

「命売ります」の本当の面白さは結末じゃなくて、途中の物語にあります。

この結末のネタバレを読んだところで、「読書の楽しみ」「わくわく」「ハラハラドキドキ」はまったく減りません!!!

「なんかおしゃれな小説ないかな~。恋愛っぽいので。村上春樹はありきたりだし。。。」

そんなふうに思っているあなた。

ちくま文庫の三島由紀夫作品を手に取ってみてください。

洗練されてておしゃれで垢ぬけてて、上品なラブロマンスや男女のかけあいを楽しめますよ!!!!

ぜひ読んでみてください♪

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