『シラノドベルジュラック』のあらすじと感想です。
- シラノ・ド・ベルジュラック(1990)
- 上映時間 139分
- 製作国 フランス/ハンガリー
- 監督: ジャン=ポール・ラプノー
- 出演: ジェラール・ドパルデュー、アンヌ・ブロシェ
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エドモン・ロスタン原作小説『シラノドベルジュラック』あらすじ
シラノ・ド・ベルジュラック。
剣豪にして詩人。騎士にして学者。
美しい言葉の調べを紡ぐ天才。
愛の文は女性を気絶させるほど美しい。
しかし容姿、巨大な鼻のせいで
女性から愛されることを知らず、恐れている。
彼が恋するロクサーヌ、
彼女はシラノ隊の美男子クリスチャンに恋してる。
されども無学のクリスチャン。
恋の手助けするために、
シラノは愛の手紙を代筆する。
見どころ1 クリスチャンの無学さは、観ているこちらまで恥ずかしくなる!
(クリスチャン 恥ずかしくて死にたいくらい無学なんです!)
「学問をしよう……!」と、
これだけで思うような台詞です。
クリスチャンは自分の言葉で、
ロクサーヌに愛を伝えようと試みるのですが、
「愛しています」としか言えません。
実際の映画のシーンでも、確かに、哀しいほどに粗野に見えるのです!
見どころ2 バルコニーで愛の語らいを「代理」を務めるシラノ
この作品のハイライトは、ロクサーヌの家のバルコニーの場面です。
バルコニーの下から、シラノがクリスチャンに台詞を言わせ、
そのうちにシラノ自身が愛の言葉を伝えます。
ロクサーヌはその愛の言葉にほだされ、
クリスチャンをバルコニーへ上らせ、栄光のキスを許します。
それをシラノは遠くから見つめ、去って行きます。
ここは、長い掛け合いが続く場面ですから、
ぜひとも映画あるいは本で観るべき箇所です。
見どころ3 愛する恋文の書き手のために戦場に駆けつけるロクサーヌ
(ロクサーヌ 何度も何度も読みました。そのたびに気を失いました。私はあなたのものですわ)
さて幕は変わって戦場。
恋文を読んで、戦場まで駆けつけてくるロクサーヌ。
手紙の送り主だと思っているクリスチャンに言う台詞です。
恋文を読んで気絶する。
そのようなすぐれて豊かな感性を、
近代の教養ある女性は持っていたのかもしれません。
気絶させるシラノの才に感嘆する一方で、
本当に気絶してしまうロクサーヌも並々ならぬ才女でしょう。
見どころ4 全てが明らかになるラストシーンはやはり感動を抑えられない
?n’ayant rien fait, mon Dieu, de vraiment mal!?
(公爵 人生成功しすぎると、何も後ろめたいことはしていないのに、とても嫌な思いが残ります)
ラストシーン、15年後の冒頭です。すっかり丸くなった公爵ですが、奥が深い言葉ですね。
(ロクサーヌ あなたでしたのね)
最後のシーン。クリスチャンが持っていた、
別れの手紙(もちろんシラノが書いたもの)を、
シラノが見せてもらって読み上げるシーンの直後です。
その読み方、その声、全てが、
あの日バルコニーで愛の言葉を交し合った瞬間を
ロクサーヌに思い起こさせました。
シラノは、実はロクサーヌのもとに来る前に
瀕死の重症を負っています。
自らの死を悟った最期に、
シラノは秘め続けた恋慕の情をロクサーヌに密かに打ち明けるのです。
Ce fut d’etre celui qui souffle?et qu’on oublie !
(シラノ そう、誰かに台詞を与えて、皆に忘れ去られる、それが私の人生)(中略)
ROXANE: J’ai fait votre malheur ! moi ! moi !
(ロクサーヌ 私があなたの人生を台無しにしてしまったのね! 私が! 私が!)
涙ながらにシラノにすがるロクサーヌ。
しかしシラノは答えます。
Vous ?. . .au contraire !
J’ignorais la douceur feminine. Ma mere
Ne m’a pas trouve beau. Je n’ai pas eu de s?ur.
Plus tard, j’ai redoute l’amante a l’?il moqueur.
Je vous dois d’avoir eu, tout au moins, une amie.(シラノ あなたが・・・? その反対です!
私が女性の愛を全く知りませんでした。母親も私に美しさを見つけられなかった。
妹もいない。大人になって私は女性のあざけりを恐れていました。
しかし私は初めてあなたのおかげで女性の友をもつことができました)
シラノは母親の愛をも知りませんでした。
もし母親がシラノを愛してくれていれば、
シラノの人生は変わっていたかもしれません。
まとめ シラノ最後のセリフは『シラノドベルジュラック』という作品の本質
そして、最後のシラノの台詞はこの作品の本質です。
Ce fut d’etre celui qui souffle?et qu’on oublie !
(シラノ そう、誰かに台詞を与えて、皆に忘れ去られる、それが私の人生)
バルコニーでのロクサーヌとの語らい。
あれがシラノの全人生を物語ります。
一人の人間の全生涯がある一瞬間に集約されるとき、
彼の不滅の栄光が輝きだします。
それが私たちに途方もない感動と涙、いつまでも心に残る味わいを与えてくれるのです。