ウィリアム・エンプソン William Empson(1906-)著。
エンプソンは現代イギリスの批評家・詩人。
『曖昧の七つの型』(Seven Types of Ambiguity)は、1930年公刊。
エンプソンが24歳の若さで出版した文芸評論書。
I.A.リチャーズの影響を受け、詩作品における美を分析的に解明しようとした。
エンプソンの定義する「曖昧」とは、「1つの言葉に対して二者択一的な反応を可能にするような言葉のニュアンス」である。
その型を、7つに分類し、実例をもって説明を試みている。
- 1つの単語または1つの文法構造が同時または多様に働く場合
- 2つ以上の意味が1つの意味に含まれている場合
- 文脈上どちらも当てはまる2つの観念が、それゆえに関係づけられて同時に1つの単語で表現されうる場合
- 表現されている2つ以上の意味が互いに矛盾しあいながら結びついて、詩人における一層複雑な精神状態を明らかにしている場合
- 詩人が観念を見出しつつ筆をとったり、観念全体を一時に掌握しないでいたりするために、たとえば直喩が用いられても、正確にはなにものにも当てはまらず、比較された2つのものの中途にとどまっているような場合
- ある表現が様々な理由で何ものをも意味せず、そのために読者は読者なりの表現を作り出すことを余儀なくされ、それがまた互いに矛盾を含みがちな場合
- 単語の2つの意味が文脈上どうしても相対立する2つの意味となるために、全体の効果が詩人の精神に根本的分裂のあることを示す場合
文学作品によって与えられる感動を客観的に説明しようとしたところに『曖昧の七つの型』の特徴がある。