3世紀ころに活躍したギリシア作家ヘリオドロスの小説。
原題はAithiopika。そのまま読むと「アイティオピカ」だが、翻訳では『エティオピア物語』となっているので、「エチオピア」と表記。
厳密にいうと、「小説」という概念は近代以降に現れるもの。
ギリシアには『ダフニスとクロエー』のような伝奇物語がいくつかあるので、それらを「ギリシア小説」と呼んだりする。
『エティオピア物語』は構想が雄大で、プロット・筋の運びも巧妙であり、文体も高度に修辞的ではあるが、冗長さや晦渋さはあまり見られない。
『エティオピア物語』あらすじ
美青年テアゲネスと美少女カリクレイアの恋と運命を描いた物語。
カリクレイアは、エティオピアの王女として生まれたものの、褐色の両親に似ず、白い肌で生まれついた。
そのため、妃が王に自らの不貞を疑われることを恐れ、カリクレイアは王の知らない間に、捨てられてしまう。
カリクレイアは拾われ、その後ギリシアの神官に引き取られ、ギリシアのデルフォイで成長する。
そしてデルフォイで、もう一人の主人公テアゲネスと出会うことになる。
互いに恋に落ちた2人はエジプトの神官カラシリスの助けでデルフォイを抜け出し、その旅路でさまざまな危難に遭うことになるが、遂にエジプトの海岸へたどり着く。
エジプトに到着した後、テアゲネスとカリクレイアは一時的に離れ離れになるが、メンフィスで再び落ち合う。
2人はとにかくたくさんの困難に見舞われるが、時に兄妹と偽り、あらゆる手段を講じて生命や純潔を脅かす試練に耐えていく。
最後に、当時ペルシア軍と交戦中であったエチオピア軍の捕虜となり、エチオピア軍の勝利が決まると、カリクレイアの故国へ連れられる。
捕虜の2人は、エチオピア軍の祝勝のために人身御供として犠牲にされてしまう。
しかし、儀式の直前、王女カリクレイアの素性が判明し、エチオピアの王と王妃もこれを認め、2人は生きることができ、晴れて結ばれる。
その後は、神官職を継ぎ、2人は幸福な生涯を送る。