こころでKが襖を開けた理由って何?
そんなとてつもなく具体的な疑問をお持ちの方がいらっしゃるようです。
これを読んでいるあなた、お持ちの疑問のレベルが高すぎです!
ということで、Kが襖をあけた理由、わたくし高等遊民が考察いたします。
※原文は青空文庫から引用しているので、ルビが入り込んでいます。
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襖は何の象徴?
知恵袋にこんな回答が。
襖はKと私の距離を表しています。
- 襖が開いている→関係が良好、心を開いている
- 襖が閉じている→隔絶している、心を閉ざしている
- 血がとびちった襖→心の傷、修復不可能な関係
うん、その通りだと思います。
さらにこんな回答も。
「下宿のそれぞれの部屋は、登場人物たちの心の内側を象徴しています。
襖はどの部屋にもあります。なので、ふすまを開くとは、自分の心の内面を相手に見せることを象徴しています」
なるほど。
特に気になるのは、Kですよね。Kが自害した夜、なぜふすまを開けておいたのか。
Kが3回襖を開けた意味とは?
Kは3回、襖を開けています。知っていました?
それぞれ見ていきましょう。
1 恋の告白のとき
まずは、先生にKが、お嬢さんへの気持ちを打ち明ける前の晩です。
十時頃になって、Kは不意に仕切りの襖ふすまを開けて私と顔を見合わせました。彼は敷居の上に立ったまま、私に何を考えていると聞きました。
そしてその翌日。
彼の重々しい口から、彼のお嬢さんに対する切ない恋を打ち明けられた時の私を想像してみて下さい。私は彼の魔法棒のために一度に化石されたようなものです。
口をもぐもぐさせる働きさえ、私にはなくなってしまったのです。
2 上野から帰った晩
続いては、上野で散歩しながら、先生がKを攻撃したあとの晩です。
「精神的に向上心のないやつは馬鹿だ」
この言葉を、Kに向けて言い放った日の晩ですね。「僕はバカだ」といった晩です。
私はほどなく穏やかな眠りに落ちました。しかし突然私の名を呼ぶ声で眼を覚ましました。
見ると、間の襖ふすまが二尺しゃくばかり開あいて、そこにKの黒い影が立っています。その時Kはもう寝たのかと聞きました。Kはいつでも遅くまで起きている男でした。
私は黒い影法師かげぼうしのようなKに向って、何か用かと聞き返しました。
Kは大した用でもない、ただもう寝たか、まだ起きているかと思って、便所へ行ったついでに聞いてみただけだと答えました。
3 絶命した晩
Kが命を絶った晩の描写です。
私は枕元から吹き込む寒い風でふと眼を覚ましたのです。
見ると、いつも立て切ってあるKと私の室へやとの仕切しきりの襖ふすまが、この間の晩と同じくらい開あいています。けれどもこの間のように、Kの黒い姿はそこには立っていません。
これに対して、先生のほうは、深夜にKの部屋の襖を開けたことは一度もありません。
先生は、襖をしょっちゅう開けてましたが、それは学校から帰宅した直後ばかりです。Kの部屋からお嬢さんとの話し声が聞こえると、必ずと言っていいほど、襖を開けるのです。
ここに、先生の嫉妬深さを見ることができますね。
襖の意味は先生とKの心の距離・壁
Kは先生の要請で、仕方がなしに、奥さんとお嬢さんのお宅に下宿を開始しました。そして、せまっ苦しい部屋で満足し、自分から何かすすんで行動を起こすような性格ではありませんでした。
それが、上でもお話ししたように、3回襖を開けたのです。それまでは、先生のほうが、Kを必要としていました。
先生がKを下宿に招き入れた理由は、Kを助けるためという理由が表向きですが、じつはKにお嬢さんのことを評価させたい、という願望があるという解釈がプロの学者や評論家からは出ています。
つまり、下宿開始時点では、先生がKを必要としていた。
対して、物語の終盤では、Kが先生を必要として襖を開けたのです。
Kが襖を開ける時は、いつも何かを伝えたい時です。(先生がふすまを開けるのは、嫉妬。)
では、何を伝えたかったのか?
- 恋の告白のときは、もちろん、K自身の思いを、先生に伝えたかった。
- 上野から帰った晩は、難解です。もしここで先生が目を覚まさなかったら、Kはこの時点(先生の裏切りが発覚してない時点)で命を絶っていたのではないか、という推論もあります。
- そして最期の晩では、先生を第一発見者にするためでしょう。
結論 夏目漱石『こころ』Kが襖を開けた理由を考察
夏目漱石『こころ』における「Kが襖を開けた理由」を考察してみました。
まとめると、最後に箇条書きにした部分ですね。
- 恋の告白のときは、もちろん、K自身の思いを、先生に伝えたかった。
- 上野から帰った晩は、難解です。もしここで先生が目を覚まさなかったら、Kはこの時点(先生の裏切りが発覚してない時点)で命を絶っていたのではないか、という推論もあります。
- そして最期の晩では、先生を第一発見者にするためでしょう。
参考になれば幸いです。
主な参考文献