漱石こころで襖の血潮は何を象徴してる?血のモチーフの暗示するもの



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こころで襖に血潮が舞ったって、怖いよね。どういう意味なんだろう。

そんな疑問がありましたので、考察します。

血潮の意味も含め、こころにおける血のモチーフを考えてみたいと思います。

夏目漱石『こころ』(amazonで無料で読めます)

※原文は青空文庫から引用しているので、ルビが入り込んでいます。

「襖にほとばしっている血潮」は何の象徴?

先生が血潮に気が付くのは、Kの遺書を読んでから。

私は顫ふるえる手で、手紙を巻き収めて、再び封の中へ入れました。私はわざとそれを皆みんなの眼に着くように、元の通り机の上に置きました。そうして振り返って、襖ふすまに迸ほとばしっている血潮を始めて見たのです。

一般的には、先生の罪の意識や心の傷、後悔を象徴するものと解釈できますね。

血潮とともに、先生の脳裏に刻み付けられています。

そういう意味では、次の文「血潮の大部分は、布団に吸収された」という箇所は、罪の意識の大部分は、洗い流すことができた、という意味にもとれます。

どういうことかというと、もしも血潮が部屋中に吹きわたっていたら、きっと先生の罪の意識はもっと重く、すぐさま後を追ったかもしれません。

でも、先生は、そうはならなかった。その後、大きな出来事があり、性格も変わってしまった。けれども、お嬢さんをもらいうけ、はたから見ても、自分自身の表かでも、先生とお嬢さんは幸福な一対として生活していました。

それは、布団が血潮の大部分を吸収したという描写と重なるものがあると考えられますね。

布団が血潮の大部分を受け止めて、後始末が楽だったように、先生も自分自身の罪の意識、しまったという思いは、後始末が楽だったのです。

私にとっての先生「血のなかに先生の命が流れている」

ほかにも、血のモチーフは、夏目漱石のこころのなかで結構出てきます

まず、私の中で先生がいかに大きな影響を与えているかの説明・叙述。

私は東京の事を考えた。そうして漲みなぎる心臓の血潮の奥に、活動活動と打ちつづける鼓動こどうを聞いた。不思議にもその鼓動の音が、ある微妙な意識状態から、先生の力で強められているように感じた。

私は心のうちで、父と先生とを比較して見た。両方とも世間から見れば、生きているか死んでいるか分らないほど大人おとなしい男であった。
他ひとに認められるという点からいえばどっちも零れいであった。それでいて、この将碁を差したがる父は、単なる娯楽の相手としても私には物足りなかった。
かつて遊興のために往来ゆききをした覚おぼえのない先生は、歓楽の交際から出る親しみ以上に、いつか私の頭に影響を与えていた。
ただ頭というのはあまりに冷ひややか過ぎるから、私は胸といい直したい。肉のなかに先生の力が喰くい込んでいるといっても、血のなかに先生の命が流れているといっても、その時の私には少しも誇張でないように思われた。

私の血のなかに、先生の命が流れている。これも血のモチーフですね。

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先生の手紙の冒頭「心臓を破って血を浴びせかける」

そして、先生の手紙の冒頭。自らの過去の開示を、心臓を破って血を浴びせかけると比喩しています。

あなたは私の過去を絵巻物えまきもののように、あなたの前に展開してくれと逼せまった。
私はその時心のうちで、始めてあなたを尊敬した。あなたが無遠慮ぶえんりょに私の腹の中から、或ある生きたものを捕つらまえようという決心を見せたからです。
私の心臓を立ち割って、温かく流れる血潮を啜すすろうとしたからです。その時私はまだ生きていた。死ぬのが厭いやであった。それで他日たじつを約して、あなたの要求を斥しりぞけてしまった。
私は今自分で自分の心臓を破って、その血をあなたの顔に浴あびせかけようとしているのです。私の鼓動こどうが停とまった時、あなたの胸に新しい命が宿る事ができるなら満足です。

まさにこれは、後のKの自害を想起させるセリフですね。

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Kの血液を新しくしようと試みた

次に、Kが人間らしくない、世間での社交を知らないと考えた先生の考えで血が出てきます。

私は彼を人間らしくする第一の手段として、まず異性の傍そばに彼を坐すわらせる方法を講じたのです。そうしてそこから出る空気に彼を曝さらした上、錆さび付きかかった彼の血液を新しくしようと試みたのです。

このように、Kの心身状態をより良いものにしようというかんがえとして血の比喩が使われます。

Kに血潮を注ぎかけようとする

最後に、ひじょうに比喩的な血潮。

これはKがお嬢さんをどう思っているか、探っているところですね。

私は始終機会を捕える気でKを観察していながら、変に高踏的な彼の態度をどうする事もできなかったのです。
私にいわせると、彼の心臓の周囲は黒い漆うるしで重あつく塗り固められたのも同然でした。
私の注そそぎ懸けようとする血潮は、一滴もその心臓の中へは入らないで、悉ことごとく弾はじき返されてしまうのです。

冷たい眼でKを観察する先生。冷たい眼で研究されることを嫌っていた先生が、むかしはKを研究していたのです。

まとめ

夏目漱石『こころ』における「襖に散った血潮の意味」を考察してみました。

まとめると

  1. 先生の心の傷の象徴
  2. 布団に吸収されたから、先生もその後はそれほど気にやまずにすんだ
  3. ほかにも血のモチーフは色々出てくる

血というのは、きわめて具体的で、内面的なモチーフですね。

参考になれば幸いです。

主な参考文献



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