バラバのその後を描いた小説映画のあらすじと感想!聖書では何者?

最近、にわかにバラバが話題です。

 

 

こんなところでバラバが出るとは。。。

バラバとは、新約聖書の話ですね。バラバは釈放されて、イエスは十字架にはりつけにされます。

 

ツイートの主題は、2017年2月頃に朝日新聞が報じた森友学園問題ですね。

籠池夫妻が8か月以上もの拘留を受けている最中、

「安倍昭恵総理夫人を代りに拘置所に入れろ!」

という声があがっていることを受けてのツイートです。

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バラバについては、小説もありますし、その映画化された作品もあります。(古いですが)

 

  • 作品名:バラバ(Barabbas 1950年)
  • 作者名:ペール・ラーゲルクヴィスト(1891年5月23日 – 1974年7月11日)
  • 翻訳本:バラバ(岩波文庫、1953年)尾崎義訳
  • 映画化:監督リチャード・フライシャー

 

こちらは小説版の短いあらすじ。

ゴルゴタの丘で十字架にかけられたイエスをじっと見守る一人の男があった。

その名はバラバ。死刑の宣告を受けながらイエス処刑の身代わりに釈放された極悪人。

現代スウェーデン文学の巨匠ラーゲルクヴィストは、人も神をも信じない魂の遍歴を通して、キリストによる救い、信仰と迷いの意味をつきとめようとする。

 

新約聖書の中ではバラバのその後は一切描かれていません。

でも、上のラーゲルクビストの作品はバラバのその後を想像して描いているんですね。

 

小説のテーマは、信仰と迷いです。

  • 偶然助かったバラバ。
  • でも、明らかに、自分よりも助かるべきイエスは、命を落とした。
  • そんな思いが、バラバを葛藤させる

そんな物語になっています。

 

簡単に解説を致します。

 

小説・映画バラバのあらすじ

小説バラバの書き出しはこちら。立宮さんの「文学どうでしょう」よりお借りします。

もう更新されていませんが、素晴らしいブログです。よくこんな本まで読んでいるなあと(笑)

彼らがどんなふうにあの十字架の上に垂れさがっていたか、また彼のまわりに誰々が集まっていたか、それが彼の母マリアとマグダラのマリア、ヴェロニカ、十字架をかついだクレネのシモン、それに彼を布で巻き包んだあのアリマテアのヨセフであったことなどは、だれでも知っている。

ところが、わずかばかり離れて丘の斜面の下のほうに、すこし横にそれて、ひとりの男が立っていた。

そしてあの上で十字架に垂れさがって死んだ彼をたえず見守り、彼の断末魔を始めから終りまでじっと眺めていた。その名をバラバといった。この書はその男のことを書いたものである。

「文学どうでしょう」より引用

小説バラバのおもしろいところは、バラバのその後を描いたこと。

  • 釈放されたバラバが、イエスのはりつけを見に行っていたとしたら?
  • イエスの死を観たとしたら、バラバは何を思うだろう?

こういう発想のもとに、この小説は書かれました。

 

そして、あらすじはこちら。

2000年前のエルサレム。盗賊の親玉バラバは獄中の身にあったが、罪人を1人裁く代わりに別の1人の罪人を釈放するという、年に一度のユダヤ民衆の慣習によって、イエス・キリストと引き換えに釈放されることになった。

自由になったバラバはかつての愛人ラケルと再会するが、彼女は既にキリスト教の信仰に目覚めており、バラバにも改心するよう諭すが、彼はそれを拒否し、キリストを口汚く罵る。

やがてラケルが他のキリスト教徒たちと共に捕えられて処刑されると、バラバは荒れて再び捕えられ、シチリアの硫黄鉱で強制労働に従事させられる。

有毒ガスの渦巻く地獄のような労役を生き抜いたバラバとキリスト教徒のサハクは州総督のはからいによって、剣闘士養成所へ入れられる。

しかし、サハクは闘技場で相手を殺すことを拒んだため、反逆罪に問われ、隊長のトルヴァドに処刑された。怒ったバラバはトルヴァドと対決、彼を倒した。

皇帝の命によって自由人になったバラバがサハクを葬った直後、ローマの炎上が始まった。

バラバはこのとき「今こそ古きものを焼き払うのだ」という神の声を聞いたように思い、狂ったように火をつけて回り、三度捕えられた。

多くのキリスト教徒と共に十字架にかけられたバラバは、静かに神に祈り、処刑されるのだった。

Wikipediaより

 

このWikipediaの引用で足りないところを付け加えますと、

 

  • バラバはイエスの代わりに助けられたため、イエスの信奉者は皆彼を憎んでいる。
  • バラバは自分が2度も処刑を免れたことを受け、これを「生きろ」というメッセージとして解釈する
  • 硫黄の鉱山の重労働は超辛い。みんな数年で視力を失い、そして命を落とす。
  • だがバラバは目に布を巻き付け、20年生き残る。
  • 鉱山を生き延びたことでローマ中でも有名になり、皇帝からも不死身のバラバと評判が立つ。

 

こんなところですね。要するに、バラバは不死身。

最初は、イエスやラケルに対する後ろめたさからか、自らの命を軽んじます。

そして極刑を受けると思ったら、鉱山送り。ピラトに「死ぬよりもつらいぞ」と言われます。

「だれもおれを命を奪うことはできない! やれるもんならやってみやがれ」

と捨て台詞を吐いたりするんですね。

 

で、出来事が起こるたびに、信じようか、それともくだらないと吐き捨てるか、悩む。

バラバは、言葉や行動では完全に、宗教なんか否定しています。

でも、ゴルゴダの丘で観たイエスの姿が、ずっと頭から離れない。

 

この小説と映画は、そんな信仰と迷いがテーマです。

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新約聖書でのバラバとは何者?

 

バラバとは、暴徒(マルコ福音書)または強盗(ヨハネ福音書)です。

 

小説や映画でのバラバの話は、全くのフィクションです。

山賊であったという話も、完全なフィクションです。

じゃあバラバっていったい、誰なんだ!!

 

話の大筋は、

  • イエスがユダの裏切りによって逮捕された。
  • ちょうどその時、別件で暴動を起こして人の命を奪った一群の暴徒が捕まっていた。
  • バラバとは、その暴徒のうちの1人。
  • 当時の支配者ピラトは、バラバとイエスと群衆の前に並べた
  • ピラトはイエスに何の罪も見いだせなかった。
  • そこでピラトは「どちらか1人を許して釈放してやろう」と提案した。
  • 群衆はユダヤ教当局者(祭司長など)にけしかけられた。
  • 結果、「バラバを許せ、イエスを十字架につけろ」と叫んだ。
  • ピラトは群衆の勢いに恐れて、バラバを釈放することにした。

という話です。

 

 

新約聖書の中でのバラバの記述を簡単に確認しましょう。

マルコ福音書15.1~15.15です。

夜が明けるとすぐ、祭司長たちは長老、律法学者たち、および全議会と協議をこらした末、イエスを縛って引き出し、ピラトに渡した。

ピラトはイエスに尋ねた、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは、「そのとおりである」とお答えになった。

そこで祭司長たちは、イエスのことをいろいろと訴えた。

ピラトはもう一度イエスに尋ねた、「何も答えないのか。見よ、あなたに対してあんなにまで次々に訴えているではないか」。

しかし、イエスはピラトが不思議に思うほどに、もう何もお答えにならなかった。

さて、祭のたびごとに、ピラトは人々が願い出る囚人ひとりを、ゆるしてやることにしていた。

ここに、暴動を起し人殺しをしてつながれていた暴徒の中に、バラバという者がいた。

群衆が押しかけてきて、いつものとおりにしてほしいと要求しはじめたので、ピラトは彼らにむかって、「おまえたちはユダヤ人の王をゆるしてもらいたいのか」と言った。

それは、祭司長たちがイエスを引きわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにわかっていたからである。

しかし祭司長たちは、バラバの方をゆるしてもらうように、群衆を煽動した。

そこでピラトはまた彼らに言った、「それでは、おまえたちがユダヤ人の王と呼んでいるあの人は、どうしたらよいか」。

彼らは、また叫んだ、「十字架につけよ」。

ピラトは言った、「あの人は、いったい、どんな悪事をしたのか」。

すると、彼らは一そう激しく叫んで、「十字架につけよ」と言った。

それで、ピラトは群衆を満足させようと思って、バラバをゆるしてやり、イエスをむち打ったのち、十字架につけるために引きわたした。

http://bible.salterrae.net/kougo/html/mark.html

 

こちらはヨハネ福音書18.38~40

彼はまたユダヤ人の所に出て行き、彼らに言った、「わたしには、この人になんの罪も見いだせない。

過越の時には、わたしがあなたがたのために、ひとりの人を許してやるのが、あなたがたのしきたりになっている。ついては、あなたがたは、このユダヤ人の王を許してもらいたいのか」。

すると彼らは、また叫んで「その人ではなく、バラバを」と言った。

このバラバは強盗であった。

 

ヨハネは、バラバを強盗と言っています。

 

 

田川建三先生の新約聖書の解説によると、

「マルコはよく知らずに暴徒と書いたかもしれない。ただ、一般的傾向として、ヨハネのほうが、この種の事情には詳しいから、ヨハネが正しいかもしれない。いずれにしても確証はない」

こんなふうなことをおっしゃっています。

 

つまりマルコとヨハネで記述が違うのですが、バラバが実際何者であったのかは、明確ではありません。

暴徒である確実な根拠もないし、強盗である確実な根拠もないです。

 

まとめ バラバのその後を描いた小説

 

聖書の登場人物であるバラバについてご紹介しました。

 

  • バラバとは、新約聖書でイエスと共にピラトの前に並ぶ人物
  • マルコでは暴徒・ヨハネでは強盗
  • ラーゲルクヴィストによる小説やその映画化がある
  • 小説・映画はバラバのその後を描いたフィクション

 

以上でした。

わたくし高等遊民としては、新約聖書の記述の方に関心があったので、そちらの説明が比重が大きかったですね。

 

聖書の世界について学ぶには、田川建三先生の本から入ることがおすすめです。

 

  1. イエスという男
  2. キリスト教思想への招待
  3. 新約聖書 訳と註

 

この順番で読んでみてください。

【宗教学の独学入門書に最適】田川建三『宗教とは何か』(洋泉社MC新書)を読む

 

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