夏目漱石『こころ』の登場人物の性格について、まとめてみました。
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こころのあらすじ。高橋留美子による超シンプルな解説
まずはあらすじだけ、まんが1頁です。
めぞん一刻でこころが取り上げられてるんですね~。
【画像】こころの人物相関図
続いては、人物相関図です。
すばらしい相関図を作成されているサイト様があったのでご紹介します。
拡大できますかね。登場人物が一望できるので、ぜひご覧ください。
https://sites.google.com/site/kleossoftsamp/home/samp06 より引用
こころ登場人物の性格の特徴
ここから、本題です。
- 私
- 先生
- お嬢さん(静)
- 奥さん(お嬢さんの母)
- K
の順に紹介いたします。
※原文は青空文庫から引用しているので、ルビが入り込んでいます。
私の性格と特徴
若き大学4年生である私。
比較的強い体質をもっていると、自任しています。
私は自由と歓喜に充みちた筋肉を動かして海の中で躍おどり狂った。先生はまたぱたりと手足の運動を已やめて仰向けになったまま浪なみの上に寝た。私もその真似まねをした。青空の色がぎらぎらと眼を射るように痛烈な色を私の顔に投げ付けた。「愉快ですね」と私は大きな声を出した。
しばらくして海の中で起き上がるように姿勢を改めた先生は、「もう帰りませんか」といって私を促した。比較的強い体質をもった私は、もっと海の中で遊んでいたかった。
先生を慕っているけど詮索好きではない性格です。まじめで、素直。素朴。裏表がありません。
ここは、先生にも好まれたし、後年自分で振り返って、本当によかったと言っています。
私は先生を研究する気でその宅うちへ出入りをするのではなかった。私はただそのままにして打ち過ぎた。今考えるとその時の私の態度は、私の生活のうちでむしろ尊たっとむべきものの一つであった。
私は全くそのために先生と人間らしい温かい交際ができたのだと思う。先生はそれでなくても、冷たい眼まなこで研究されるのを絶えず恐れていたのである。
(↑まさに、この冷たい眼を、先生はKに向け、研究していたのです。)
しかし、先生には、淋しい人間とも言われています。
あなたも寂しい人間ではないですか。若いうちほど淋しいものはない。だから動かずにいられなくって先生の宅へたびたび来るのだ。
「私は淋しい人間ですが、ことによるとあなたも淋しい人間じゃないですか。私は淋しくっても年を取っているから、動かずにいられるが、若いあなたはそうは行かないのでしょう。
動けるだけ動きたいのでしょう。動いて何かに打ぶつかりたいのでしょう……」「私はちっとも淋さむしくはありません」
私は先生の言を否定しますが、実は淋しい人間のはずだ、と先生はいいます。
先生の性格と特徴
つづいては先生。
先生の性格を箇条書きすると、以下のような特徴があります。
- 非社交的
- 超然
- 素っ気ない
- 冷淡
- 自分を軽蔑してる
- 外出嫌い
- 寂しい人間
- 人間不信
- かつては鷹揚な性格
私と出会った時の先生は、非社交的な態度をとっていると言われます。
先生の態度はむしろ非社交的であった。一定の時刻に超然として来て、また超然と帰って行った。周囲がいくら賑にぎやかでも、それにはほとんど注意を払う様子が見えなかった。
そして、淋しい人間であると、自分で何度も言います。
「私は淋しい人間です」と先生はその晩またこの間の言葉を繰り返した。
いっぽう「私」は、先生をこう評しています。
人間を愛し得うる人、愛せずにはいられない人、それでいて自分の懐ふところに入いろうとするものを、手をひろげて抱き締める事のできない人、――これが先生であった。
ただし、かつては鷹揚(おうよう)な性格だったと言われています。
※鷹揚:ゆったりとしてこせこせしない様子。おっとりとして上品なこと。
私は二人の間にできたたった一人の男の子でした。宅うちには相当の財産があったので、むしろ鷹揚おうように育てられました。
私は自分の過去を顧みて、あの時両親が死なずにいてくれたなら、少なくとも父か母かどっちか、片方で好いいから生きていてくれたなら、私はあの鷹揚な気分を今まで持ち続ける事ができたろうにと思います。
奥さん(お嬢さんの母親)にも、鷹揚だと言われたと述懐しています。
ある場合に私を鷹揚な方だといって、さも尊敬したらしい口の利き方をした事があります。
お嬢さんの性格と特徴
つづいて、お嬢さん。お嬢さんは、性格がほとんど描かれません。
- 控えめだけど、よく笑う。
- 無口ではないけど、自分の感情は表に出さない。
そんな性格ですね。
- 先生が読書をしている部屋によく遊びに来ます
- 先生と日本橋で買った着物を、眺めていました。
- (しかも自分の着物と先生の着物を重ね合わせてます)
こんなところから、先生に好意を持っているのは、明らかですね。
さらに、
- Kにやきもちを焼いてもやもやしてる先生に「変な人」と言う
- Kと一緒に出掛けた時に、どこに行ったのかと聞かれ、当ててみろという
ちょっと先生をからかう様子も見られます。
生け花や琴をたしなみますが、先生的にはまずい(下手)という評価です。
いっぽう、年を経て、若き私からみたお嬢さん(静)は、より知的で賢い女性として評価されています。
私は奥さんの理解力に感心した。奥さんの態度が旧式の日本の女らしくないところも私の注意に一種の刺戟しげきを与えた。
それで奥さんはその頃ころ流行はやり始めたいわゆる新しい言葉などはほとんど使わなかった。
下「先生と遺書」における奥さんとほとんど同じように思えますね。
奥さん(お嬢さんの母親)の性格と特徴
続いて、奥さん。軍人の未亡人です。
奥さんは、非常に頭のいい、物語のすべてを見通しているような女性です。
お嬢さんを私に下さいと言った時、よござんす、さしあげます、と言います。
お嬢さんの意向を聞いてくれという先生に対して、ぱっと一言。
「本人が不承知の所へ、私があの子をやるはずがありませんから」
- 先生を下宿させるのは、即決で認めます。
- いっぽう、Kを下宿させるときは、反対します。
この違いは、もう明らかですね。奥さんは、先生とお嬢さんの将来の関係を見通していたのです。
そのため、Kという別の男子を入れるべきではないと判断していたのです。果たしてその判断は、正しかったですね。
Kの性格と特徴
さいごはK。簡単にまとめると、次の通りです。
- 真宗寺に生まれ、医者の養子になる
- 養家を欺いて哲学を学び、養家からも実家からも勘当される。
- 生活に困り、神経衰弱気味になる。
- お嬢さんのぬくもりで健康を回復する。
中学のときに、先生と一緒に東京に出てきました。新潟の出身です。
医者の養子になっていますから、大学で医学を学ぶことを期待されていました。
それを裏切って、勝手に哲学や宗教を学ぶので、養家からも実家からも、勘当状態に。
そのため、ものすごい貧乏になります。自分を痛めつけるように刻苦勉励する男です。
仏教の教義で養われた彼は、衣食住についてとかくの贅沢ぜいたくをいうのをあたかも不道徳のように考えていました。
なまじい昔の高僧だとか聖徒セーントだとかの伝を読んだ彼には、ややともすると精神と肉体とを切り離したがる癖がありました。肉を鞭撻べんたつすれば霊の光輝が増すように感ずる場合さえあったのかも知れません。
Kが自ら命を断った理由は、単に先生に裏切られて恋愛に挫折したからではありません。
このような内面の禁欲主義・理想主義、これに挫折したからではないでしょうか。
内面の精神性の完成を求めるK。その挫折は、単に恋愛だけじゃありません。恋愛はたしかに引き金となりました。然しその前に
- 家族問題
- 経済問題
- 労働問題
- 健康問題
- 学問問題
このようないくつもの問題をKは抱え、それらのいずれも、満足に処理することができなかったのです。出口なし。八方塞がり。自滅です。
結論 夏目漱石『こころ』登場人物の性格を分析
夏目漱石『こころ』における「登場人物の性格」を分析してみました。
こうして整理してみると、なんとなく全体像がつかめてきますね。
特に、相関図は参考になると思うので、ぜひ眺めてみてください。
主な参考文献
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