【傑作映画】スパイダーバースのネタバレ感想。最悪な登場人物キャラにストーリーを詰め込みすぎ。なのに面白いのはなぜか

スパイダーバース
高等遊民
こちらは寄稿記事です。脚本家タケハル先生にスパイダーバースの感想をお聞きしました。
めちゃくちゃすごい、革命的な映画だったとのこと。
プロの舞台脚本家が、映画をどう評価するのか、どんな点を面白いと感じたのか、ぜひお読みください

 

大好評公開中スパイダーバース。

無印スパイダーマン、アメージング 、MCUスパイダーマン全ての映画を撮ってみても最高傑作と言い切ってよいです。

その魅力をネタバレ込みで徹底解説いたします。

では一体何がすごいのかズバリ「勇気」です。

 

スパイダーバースは全編にわたり勇気がみなぎっている作品です。

小ネタをあげればきりはないのですがこの記事では

  • ストーリー面

 

から追いかけていきたいと思います。

 

スパイダーバースのストーリー展開でのチャレンジ

ピーターパーカーが開始冒頭に死ぬ

ピーターパーカーとは言わずと知れたスパイダーマンの正体。

放射能を浴びた蜘蛛に噛まれて驚異的な身体能力を手に入れ、

メイおばさんとベンおじさんと一緒に暮らしていて、

偉大なる力は偉大なる責任を伴うと言われたあの男です。

もちろん今回のスパイダーバースにもピーターパーカーは登場するんですが、

なんと開始早々に敵の親玉キングピンに殺されてしまいます。

死んだふりとか、仮死状態ではなく、本当に死にます。

葬式もあげられ墓まで作られてしまうのです。

 

主人公は黒人とプエルトリコ人のハーフ、新スパイダーマンは40歳

本当の主人公はこちらマイルス。

お父さんは黒人、お母さんはプエルトリコ人です。

日本人の僕たちからすると黒人もプエルトリコ人もハーフもそんなに変わんねーよ、

と思ってしまいがちですがあちらの人にはとても斬新な設定に移ったそうです。

原作のマイルス人気がどれほどものなのかわからないのですが、

映画ファンを狙ったとこという点ではかなり勇気の入った選択でしょう。

もちろん保険をかけています。

というのは、ピーターパーカーは死んだものの、

ピーター・B・パーカーという男が現れるからです。

これは並行世界からやってきたもう一人のピーターパーカー。

放射性の蜘蛛に噛まれてスパイダーマンになっていることは同じなのですがその年齢は何と40歳。

事業にも失敗し、結婚したはずの MJ とも別れてしまっているなんとも不遇なスパイダーマンです。

 

とまあ、ここまで当たり前のように、

キャラクター紹介を進めてしまっているわけなんですが、

皆さんよく考えてほしいのです。

あなたが脚本家としてソニーの偉い人を目の前にしているとします。

その人に対して皆さんこのストーリーを伝えられるでしょうか。

 

「スパイダーマンの映画を作りたいんです。主人公は黒人とプエルトリコ人のハーフ。

ピーターパーカーはすぐに死にます。大丈夫安心してください。その後40歳のスパイダーマンが出てきますから」

 

バカも休み休み言え、って感じですよね。

 

加わる仲間の登場人物たちはさらにヒドイ

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しかも、この後登場するキャラクターは

こいつに、

こいつに

こいつらに、

こいつ

です。

 

最初の白いスパイダーグウェンはいいですよ。かっこいいですから。

アメイジングスパイダーマンでも登場したグウェンステイシーが

スパイダーマンになったってことでしょ、わかるわかる。

 

残り3人は何なんだって話ですよ。

白黒スパイダーマンにメカスパイダーマン、

いやスパイダーマンというか単なるロボットですよね、プラス萌えアニメ。

そして手塚治虫のような豚のスパイダーマン、その名もスパイダーハム。

 

「さあ、この素晴らしい六人の仲間たちの映画を作るら制作費9千万ドル出してくれ!(90憶円)」

 

正気の沙汰ではありません。

 

しかし、ソニーピクチャーズは賭けに勝ったのです。

(2019年3月時点で興行収入は3憶ドル。日本円にして300億円)

パンフレットには「斬新なことをやりたかった」「全く新しい体験を生みたかった」という言葉が多数並んでいます。

まず、イロモノ6人を思いついた時点でスゴイ。その上、企画を通してしまったことがさらにスゴイ。

 

しかし、これだけではまだ成功の理由の説明にはなりません。

巷ではスパイダーバース成功の理由として

「親子の普遍的な愛情を描いた」「ヒーローとしての新しい展開を生み出した」といった意見が並んでいます。

 

それも嘘ではありません。

ただ、上のような狙いってどのスーパーヒーロー映画も持ってるし、ある程度までは出来てるんですよ。

なので、ここだけを取り上げるのはちょっと物足りない。

譬えていうと、ボクシングの試合見て「勝ったのは、左ストレートのおかげ」ってコメントするのと同じ。

それは見れば分かる。

問題なのはプロセスです。

 

脚本ですごいのは、説明台詞の大胆なカット

スパイダーバースの上映時間は2時間です。

その間に描くことと言うと、

  1. マイルスが学校に通っている
  2. マイルスのお父さん(警官)とおじさん(ちょいワル)とは仲が悪い
  3. マイルスの学校にはグウェンがいる
  4. マイルスの世界にはスパイダーマンがいる
  5. マイルスがクモに噛まれて力を手に入れる
  6. マイルスが加速分離機に潜り込み、スパイダーマンに出会う
  7. スパイダーマンから加速分離機を止めるUSBを受け取る
  8. スパイダーマンが殺される
  9. マイルスは一人になり、USBを壊してしまう
  10. マイルス、闘う術をもたないままピーターの墓に向かう
  11. ピーターBパーカーが異次元空間からやってきてマイルスと出会う
  12. ピーターBとマイルスがNYの町をウェブシューターで駆け回る
  13. ピーターBが自分の生い立ちを話す
  14. マイルスはピーターBに一緒に闘うように頼む、一旦断られ、受け入れられる
  15. ピーターBとマイルス、USBの情報を得るために敵のアジトへ向かう
  16. 敵のアジトからデータを盗むも、ドックオクに見つかる
  17. ドックオクと闘いつつ、研究所から逃げる
  18. スパイダーグウェンが助けに来る
  19. マイルスとピーターとグウェン、メイおばさんに会いに行く
  20. メイおばさんのアジトで、ペニー、ハム、ルノワールの異次元スパイダーマンに出会う
  21. マイルスは他のスパイダーマンとの違いを見せつけられる
  22. 落ち込んだマイルスはおじさんの家に行くが、おじさんが悪党だったことに気づく
  23. マイルスがメイおばさんの家に戻るが、発信機がつけられており、敵がやってくる
  24. おじさんとマイルスが対面する。おじさんは殺される
  25. マイルスは他のスパイダーマンたちにウェブシューターで自室に拘束される
  26. 四人のスパイダーマンはアジトへ向かう
  27. マイルスの部屋に父親がやってくる
  28. マイルス、ヴェノムストライク(新技)を発揮し拘束を解く
  29. 五人のスパイダーマンはアジトに潜入する
  30. 加速分離機内でヴィラン達と闘う
  31. マイルスが合流する、ドックオク、トゥームストーン、スコーピオンの中ボスたちをやっつける
  32. それぞれの世界へスパイダーマンたちは帰っていく
  33. マイルス、キングピンと闘う
  34. 父親が見守る中、マイルスはキングピンを倒す
  35. 加速分離機は破壊され、異空間への接続は断たれる
  36. マイルスは残された世界で唯一のスパイダーマンとなる

 

思いつくまま、並べて36個のエピソードです。

あくまで、必要不可欠の部分だけでこの量です。

しかも、信じがたいことに本編はギャグ連発のアクション満載です。

上映時間、2時間ですよ。正確に言えば117分。

スタッフロール、ポストクレジット(おまけ)を抜いたら105分~110分くらいではないでしょうか。

 

重量オーバーです。

情報量多すぎです。

 

しかし、映画を見ている最中は微塵も重たく感じません。

それを可能にしているのが説明セリフのカットです。

 

例えば、本編に何度も出てくる加速分離機。

名前は何度も登場しており、「どうやら、平行世界から人間を呼ぶ装置らしい」ということはわかるものの、

相対性理論に関する話がチラッと出てるくらいで、加速分離機の仕組みに関しては一切説明してません。

「画で見れば、どんな装置かくらい分かるでしょ」というわけです。

これは「説明しないのが粋(いき)」とか、そういうことではなく、

徹底的に時間管理しているため、セリフを飛ばしているのです。

 

他にも

  • 「ピーターパーカーとベンおじさんの関係」
  • 「キングピンの因縁」
  • 「ピーター、マイルス、グウェン以外のスパイダーマンの過去」

 

等々、一見重要に見えるシーンも、こどごとくダイジェスト、もしくは画だけで済ましていきます。

一つひとつのカットはほんの僅かなものですが、なんせ初見で思い出せるだけで36個のエピソードがある作品です。

1シーン30秒のカットが行われたとしても、15分。

金曜ロードショーで大体二時間ものの映画がCMで15分くらいはカットされるので、その影響力はご想像いただけると思います。

 

「説明セリフいれなきゃいいだけ? そんな簡単なこと何でみんなやらないの?」と仰るあなた。

そうなんすよ…その通りなんですけど、できないんですよ……

複雑な物語であればあるほど、セリフを入れたくなってしまうんです。

「あれは、加速分離装置! 他の時空からスパイダーマンを呼んだのはこいつか!」とかね。

しかも、ものすごく厄介なのは一見正解に思えるってことです。

だって、そうでしょう。

一言も説明せずに「あれって、何だったんだろう」って思われるよりは、言葉にしておいた方が安心ですからね。

時間にしてわずか数秒ですし。

しかし、この数秒が罠で、積み重ねて行くと、上演時間はドンドン長くなってしまうわけです。

もちろん、「絵で説明できる!」という強い自信があればこそ、この魔法が活きてくるわけですが、

脚本から刺激された部分も多いにあると思います。

「うわっ! セリフで全然説明してねえ! 絵で描かなきゃ!」

みたいな感じで相乗効果でレベルアップしたのではないでしょうか。

 

結論:スパイダーバースの脚本は超ダイナミック、かつ超ストイック

というわけで、スパイダーバースの脚本がめちゃくちゃスゴイ理由は

  • イロモノ6人を揃えた
  • ↑を成立させるために時間配分を徹底して管理した

 

です。

そもそも、イロモノ6人を揃えるという判断を下しただけで、相当スゴイんですが、

それを支えるために時間配分を徹底して管理したところが二重にスゴイです。

譬えていうなら、ボディービルダーがフルマラソンを走っているって感じでしょうか。

それくらい異常なことなんですよ。普通は絶対にあり得ません。

 

みなさんも是非劇場で見てください!

スパイダーバース

高等遊民の有料noteの紹介

 

noteにて、哲学の勉強法を公開しています。

 

現在は1つのノートと1つのマガジン。

 

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1は「哲学に興味があって勉強したい。でも、どこから手を付ければいいのかな……」という方のために書きました。
 
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3か月というのは、非常に長く見積もった目安です。1日1時間ほど時間が取れれば、1ヶ月くらいで十分にすべてのステップを終えることができるでしょう。
 
ちなみに15000文字ほどですが、ほとんどスマホの音声入力で書きました。

かなり難しい哲学の内容でも、音声入力で話して書けます。

音声入力を使いこなしたい方の参考にもなると思います。

 

2はプラトンの主著『国家』の要約です。
原型は10年前に作成した私の個人的なノートですが、今読んでも十分に役に立ちます。
岩波文庫で900ページ近くの浩瀚な『国家』の議論を、10分の1の分量でしっかり追うことができます
 
 

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