山口拓夢「短歌で読む哲学史」感想はとにかく分かりやすい!評価と要望まとめ

高等遊民
こんにちは、哲学にとっても詳しい高等遊民です。

 

いきなりの紹介動画↓ (ぼくが50秒しゃべってるよ)

 

Twitterを見ていたら読書猿さんと言う尊敬すべきアカウントの方が

『短歌で読む哲学史』という本をおすすめしてらっしゃいました。

ほほー。

ちょうど私もnoteで哲学入門についての文章を書いたりしました。

 

  • 初心者の方でもわかるような、
  • 挫折しないで読めるような、

 

そんな哲学史がないかなあ?

 

本屋さんや図書館をめぐり、、、色々と、10冊から15冊くらい読み漁ってました。

ということで、この『短歌で読む哲学史』

速攻で注文して、読んでみました。

非常にわかりやすいですね。

 

高等遊民の感想 ★★★★☆(4/5)

【☆マークの目安】
★☆☆☆☆:つまんなくて途中でやめた
★★☆☆☆:古本やkindleセールなら買ってもいいかも
★★★☆☆:感動はないけど参考にはなる
★★★★☆:普通に面白い・おすすめ
★★★★★:感動しまくり! 絶対読むべし

 

  • 初心者のこれから哲学を勉強してみたい方にもおすすめです
  • 今まさに大学で哲学を学んでいる学生さんにもおすすめです

 

さらに哲学の学者さんも一度ご覧になってみてくださいませ

一般書を書くにあたって参考になる点が多々あると思いますよ

 

ということで『短歌で読む哲学史』

私が良いと思った点3つと

「ここを直せばもっとよかったかな~?」という本音をご紹介します

 

短歌哲学の良い点1 とにかく31文字でまとめてるのがすごい

いやこれ普通にめちゃくちゃ凄いですよ。

短歌は57577の31文字ですよね

 

「古代ギリシア哲学から構造主義以降の現代哲学まで」

 

2500年ほどの哲学史のエッセンスを31文字でまとめているんですよ

 

誰でもできることじゃない

学者さんといえどもかなり厳しいと思いますよ

 

「プラトンのイデアについて31文字でまとめてください」

 

いや無理でしょ無理でしょ!

と思ったら、それが短歌になるんです。

 

魂は宇宙を駆けて天界の美そのものをかつては見ていた(プラトン)

マジか。うわめっちゃパイドロス……(;´Д`)

※パイドロス読むと美しくて泣きそうになるのは私だけですか?

 

みんな大好き、パルメニデス

この世にはただ有るとしか言い得ない永遠不変の一者だけ有る(パルメニデス)

うわ、ちゃんとパルメニデス……(;´Д`)

 

ちょっとした思いつきで5つくらいは作れるかもしれません

がこの本、おそらく100首以上の短歌があります

百人一首ならぬ、一人百首ですよ

しかもその内容ももちろん、的を射止めてるわけです

 

その哲学者がどんな考えを持っていたか?

そのエッセンスが、なんとなくわかるようになっているんです

これは非常に価値の高い作業だと思います。

 

高等遊民が思うに、哲学史とか歴史の本って何でもそうですけど、

とにかく勉強しようと思って読むとしんどいんですよね……

  • 覚えられないし
  • 途中で飽きるし
  • やたら長いし
  • 難しいし
  • 複雑だし

 

高等遊民
わけわかんねえーーー!

ってなりますね

 

でも短歌で読む哲学史は、分かる、飽きない。短い。シンプル。

 

たとえるなら「100分de名著」っていうNHKのEテレのテレビ

あれを見てる感じです

ぼーっと見てるだけで楽しくて、エッセンスがわかる

 

もうここに全部の短歌載っけたいくらいです

載せていいですか?

 

短歌哲学の良い点2 中世時代の哲学を詳しく扱ってる

これ、面白いんです。

これだけで、ユニークな哲学書になってます

普通の一般的な薄い哲学史の入門と言ったら、中世哲学なんかほとんど扱われないんです

ものによってはバッサリカットですよ

せいぜい出てきてもアウグスティヌスとトマス・アキナスくらい

下手すれば古代のプロティノスだってカットされることが多いですからね

 

それがこの『短歌で読む哲学史』めちゃくちゃ中世哲学の層が厚いんですよ

 

まず私は古代哲学の終わりにフィロンという哲学者が出てきたことにちょっとびっくりしました

(スゴイ絵だな……)

 

フィロンはギリシャ哲学とユダヤ教(旧約聖書)の教えとを一緒に合体させようとした哲学者です。

でも、こんなフィロンさんなんか、普通の哲学史ではガン無視ですよ

 

高等遊民
「なぜフィロンなんか入ってるの?」

 

最初、わたしも目を丸くしてしまいました。

そして中世時代の哲学者をなんと10人以上も扱っています

(繰り返すけど、普通はアウグスティヌスとトマス・アキナスの2人ね)

 

そしてルネサンス哲学も

  1. フィチーノ
  2. ピーコ・デ・ミランドラ
  3. クザーヌス

 

を登場させてます

天上の愛にもとづき神の美を観照できるプラトンの道(フィチーノ)

 

ルネサンス哲学も、普通の哲学史解説なら、基本全無視です。

高等遊民
ちなみに私はルネサンス哲学のペトラルカについて鬼詳しいです。専門家です。
っていうかこのアイコンがすでにペトラルカです。

 

そういうわけで、「この哲学史、なんか普通じゃないな」と感じました。

 

今まで哲学史において日の当たらなかった部分

ここを意識的に紹介しようと努めているのが分かります

 

【本音】普通の哲学史って飽きるよね

ここでちょっと本音ぶっちゃけますけど、やっぱ普通の哲学史ってつまんないんですよ

学者さんが研究する分には面白いかもしれないけどね

 

一般に生きる私たちが哲学を学びたいと思う!

 

そんなときって「自分の人生を良くしたい」とか、そういうモチベーションで学びたいと思うわけです。

 

でも、そういう観点からすると、ふつうの哲学史、全然面白くない。長いし。

  • 「自分の生活に哲学を役立てたい」
  • 「細かい知識はそんな興味ない」

 

そういう人にとって面白い哲学とは?

私が思うに

  • ストア派
  • エピクロス派
  • 懐疑主義
  • ルネサンス哲学

 

などなど、いわゆる「実践哲学」っていうカテゴリに入る哲学じゃないかな~と。

マルクスアウレリウスの『自省録』とか読んでて楽しい気がしますよ。

 

『短歌で読む哲学史』は、その辺もしっかりカバーしてますね。

 

実践哲学が読んで面白い哲学だし、短歌哲学はその辺ちゃんと入れてる

でもこの実践哲学って理論的には弱い部分があったりするんです

だから、学問としての哲学研究においてはほとんど顧みられてない

むしろ底の浅い思想だと思われてるんですよ(半分はヘーゲルというドイツの哲学者のせいです。)

だから、ふつうの哲学史ではあんまり紹介されない。

 

ヘーゲルが無視しそうな実践哲学のラインナップを、『短歌で読む哲学史』はきっちり抑えてる感がすごい。

 

ちなみにヘーゲルの短歌。

神という精神が自己を顕わして歴史のなかで展開をする(ヘーゲル)

ヘーゲルやん。世界精神と『精神現象学』やん。

 

  • 一般の方でも、飽きずに楽しめる内容
  • 哲学に期待してる内容

 

『短歌で読む哲学史』は、しっかり含んでる!

 

素晴らしい!

 

短歌哲学の良い点3 薄いのにていねい

『短歌で読む哲学史』はたった130ページほどのめっちゃくちゃ薄い本です

内容も薄っぺらなのかなという不安もありましたが、説明は非常に丁寧です

私も近現代哲学については古代哲学より知識が少ないです。

  • フーコー
  • バルト
  • ラカン
  • ドゥルーズ
  • デリダ

へ? って感じ。

「高等遊民さん、ドゥルーズのスピノザ研究がよく分かんないんですけど、どうしたらいいですか?」

 

と言われても私は全くわかりません。

「遠藤周作の描いたイエス像」のように、ともに悩み苦しむことしかできません。(ギャグですが以下参考までに)

福音書ではイエスの病気治癒のエピソードが多数出てきます。病気治療こそがイエスの奇跡の主たるものであり、また人々がイエスを信じた理由でもありました。

それに対して遠藤の描くイエスは、熱病患者を癒すことはできず、ただそばにいて、病人の手を握っているだけ。これが「同伴者」的な思想です。

 

これは遠藤周作に特有の思想であり、聖書の記述とも、カトリック教会の教義とも異なるものであると見なされているようです。

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初心者レベルと大して違いがないことさえ、ままあります(分析哲学とかほとんど知らないです)

だけどこの哲学史、わかる!

  • 31文字の短歌と
  • それに付された解説

 

解説はおよそ600文字~1000文字。長い場合は2000文字ほどの解説

解説が、しっかりしてます。長すぎず、短すぎず。

 

フーコーとロラン・バルトが分かっちゃった

フーコー(1926-1984)

ロラン・バルト(1915-1980)

 

特に個人的にわかりやすかったのはフーコーとバルトの解説でした。

 

高等遊民
バルトの『零度のエクリチュール』ってそういう事を話してる本なんだー

みたいな。

大げさな文学的な身振りから離れた無垢な零の文章(バルト)

31文字でわかる!! ヤバイなこれ。

 

フーコーという人が何をしたのか

どういう手法で『言葉と物』や『狂気の歴史』といった本を書いたのか

 

非常に分かりやすく説明されています

 

それぞれの時代を暗に規定する知の枠組みの変遷を知る(フーコー)

 

「これなら、高等遊民でも分かるわ!! ってか、暗記できそうなくらいだ!」

 

叫びました

すげえよこの本!!

 

哲学史が暗記できるのか!?

 

この本を「暗記ツール」と考えた時に、マジで絶大な威力を発揮しそうですね……

 

【不満と要望】ここを直せばもっと良くなる!?

 

要望1 短歌の目次か索引が欲しい!

巻末に短歌の一覧として、まとめてリストアップして欲しかったですね

本文はそこそこにして、とりあえず短歌を読みたいと思う読者は多いはずです

5ページくらいで済むだろうから、付け足してほしかったなー。

 

って今知ったんですけど、Twitterアカウントがあるんですね……

うわあ……。公式なんですかね?

とりあえず興味が出た方は、フォローしとくといいですね!

 

要望2 帯のキャッチコピーがもったいない?

これは出版社への意見に近いけど。

「田畑ブックレット創刊! 短歌というスグレモノのzipフォーマットがあった!」

 

 

「31文字で2500年の哲学史がわかる!」

みたいなほうが、シンプルで伝わると思いました。

 

要望3 ドゥルーズの説明は分からなかった

ジル・ドゥルーズ(1925-1975)

 

定住の思い込みから抜け出して遊牧的な分裂を生きよ(ドゥルーズ=ガタリ)

短歌はギリ分かりやすいけど、解説本文がキツイ。

たぶん独自の用語が多すぎるんでしょうね

ドゥルーズについて知らない私のような読者が読んで理解できる文章ではなかったです。

たぶん、ドゥルーズが悪い!!

 

まとめ 短歌で読む哲学史は良い本だよ

山口拓夢さんによる『短歌で読む哲学史』田畑書店の

  • 面白いところ3つ
  • 不満と要望

を書いていきました

良い本ですよ。

  • 薄くて分かる!
  • 31文字で思想をまとめるのは地味にヤバイ

なにより伝えたいのは

「哲学者のラインナップが、哲学を学びたい人のニーズに答えてる」

ここ、素晴らしかったです。

ぜひ、本屋さんなどで手にとって見てください!!

売れ行きが良ければ、増刷時に短歌一覧を巻末に作ってくれるかも……!!

以上、哲学に詳しい高等遊民でした。

 

山口 拓夢 短歌で読む哲学史 (田畑ブックレット)

高等遊民のnoteの紹介

 

noteにて、哲学の勉強法を公開しています。

 

現在は1つのノートと1つのマガジン。

 

1.【高等遊民の哲学入門】哲学初心者が挫折なしに大学2年分の知識を身につける5つの手順

2. 【マガジン】プラトン『国家』の要約(全10冊)

 

1は「哲学に興味があって勉強したい。でも、どこから手を付ければいいのかな……」という方のために書きました。

5つの手順は「絶対挫折しようがない入門書」から始めて、書かれている作業をこなしていくだけ。

3か月ほどで誰でも哲学科2年生レベル(ゼミの購読で困らないレベル)の知識が身につきます。

3か月というのは、非常に長く見積もった目安です。1日1時間ほど時間が取れれば、1ヶ月くらいで十分にすべてのステップを終えることができるでしょう。

ちなみに15000文字ほどですが、ほとんどスマホの音声入力で書きました。

かなり難しい哲学の内容でも、音声入力で話して書けます。

音声入力を使いこなしたい方の参考にもなると思います。

 

2はプラトンの主著『国家』の要約です。
原型は10年前に作成した私の個人的なノートですが、今読んでも十分に役に立ちます。
岩波文庫で900ページ近くの浩瀚な『国家』の議論を、10分の1の分量でしっかり追うことができます

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