アイアスあらすじと解説/ソフォクレス作品

 

ギリシア悲劇詩人ソフォクレスの現存悲劇のうち、最も初期の作品と考えられている。

1420行の詩から構成されている。

 

ソポクレス『アイアース』名言・名セリフ

名を遂げて生きるか、名を惜しんで死ぬか、生れよき者の選ぶ道は二つに一つ。言うべきことはこれだけだ。
身の丈余って知恵の回りかねる者は、神々の御手により惨めな破滅を蒙るのだ
苦しみは苦しみを産むばかり。人間の滅びの元はその者なのだ。
自分以外の誰のために骨を折れば良いのだ。
虚しい夢を見て熱くなるような手合いは、俺には何の価値もありはしない。
雪吹き募る冬の嵐も、退いて稔りの夏に所を譲り、終りない夜の歩みも、白馬の日輪にその陽光を輝かしめる。吠え猛る疾風もやがては海原の唸りを鎮め、また抗い難い眠りの力も、いつしかその縛めを解き、果てしなく獲物を捕らえておきはしない。
くれぐれも思いあがってはならない。他に優れて力を持ち、あふれる富を得ようとも。人の身の浮き沈みは一日にして覆るのが世の慣い。弁えあるものは神を愛でたまい、不逞の輩を疎まれるのだ。
掌中に珠を持ちながら、見失ってしまうまでその値打ちを知らぬのが愚か者の常
悠久無辺の時の流れは、闇に潜む全てのものを現し、明らかなものを、また闇に葬る。人の心に測りえぬことは一つとして無く、厳かな誓いも、一途に固めた胸の思いも、やがては潰え去るのだ。
悲嘆の声は鶯の哀れを誘う調べには似ず、鋭く耳を貫くであろう、その手は胸を音立てて打ち、もはや色落ちて乱れた髪を、激しく掻き毟ることであろう。
お前たちに与える別れの言葉、この先は死の国で、俺は死者を相手に語らうであろう。
おお、闇よ、俺の光よ、俺にとってはこよなく輝かしい地の底の暗黒よ、俺を迎えよ、迎えて住まわせよ。俺を迎えよ。もはや神にも人の子にも、助けを求める価値の無い俺だ。
仮初にも喜びを知った上は、その想いを大切にしてこそ真の人。優しさを生むものは、常に優しさなのですから。楽しい想いをしておきながら、それを忘れてしまうような方は、立派な御仁とは申せません。
さあ急げ、手をお貸しせよ。もはや立つことも叶わぬ死者に対し、人は誰しも嘲りを浴びせるものだから。
我らの生は所詮は夢幻。虚しい影に過ぎないのだ。

ソポクレス『アイアース』あらすじ

主人公はアイアスというギリシア軍の兵士。

アイアスという人物はトロイアに遠征した兵士の1人で、オデュッセウスやアガメムノンたちに対して、怒りと殺意を覚える。

というのも、英雄アキレウスが残した武器を受け継ぐ第1の勇士としてオデュッセウスが選ばれたことに憤りを感じたのだ。

その結果、アイアスは、オデュッセウスやアガメムノンたちに対して、怒りと殺意を覚え、狂人に成り果てていく。

 

ソフォクレスの悲劇物語はこう始まる。

狂人になったアイアス。彼は家畜の群れをアガメムノンとその弟メネラオスだと思い込んでいる。

そして家畜を屠ることで、アガメムノンとメネラオスを斃したつもりになっている。

 

アイアスが狂人になったのは、女神アテネによるのだが、アイアスはこの所業を通じて、我に返る。

そして狂人となった自らを恥じ、妻テクメサの慰めと懇願にもかかわらず、自刃して果てる。(ここが物語の中盤)

 

アイアスの死によって呼び戻されたアイアスの弟テウクロスは、アイアスを葬ろうとする。

しかしアガメムノンと弟メネラオスは、テウクロスによるアイアスの埋葬を妨害する。

(古代ギリシアでは、死後に埋葬をしないことが、死者にとっての最大の恥辱と見なされていた。)

 

しかしオデュッセウスのとりなしで、結局アイアスは埋葬されることになり、人生の無常を歌う合唱隊の歌で悲劇は終わる。

 

後年の評価

アイアスの物語はホメロスの叙事詩にも見られ、古くから伝わる物語の材料である。

 

ソフォクレス『アイアス』は、劇の中盤で主人公のアイアスが自刃する。

そのため、前半と後半とが、全く別の話ではないかと思うほどに統一を欠いている。

 

このため、後半はソフォクレスの書いたものではなく、後年の別人による加筆ではないかという説もあった。

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