2年ほど前、『きょうは会社休みます。』というテレビドラマがありました。
少女まんがが原作のラブコメで、
30歳になって恋愛経験のない主人公のOLに、
なぜか急に男が寄ってくる。
OLは戸惑いながらも、
自分自身の変化をはっきりと自覚していく話という話でした。
恋愛イベントがたくさん出ていて、
綾瀬はるかの不器用な恋愛に、
視聴者も胸キュンで幸せな気分になれる作品でした。
ちなみに、この主人公は「こじらせ女子」などと名付けられ
脳内で独り言を言いまくる主人公でした。
これもまんがが原作の深夜ドラマがやっていました。
これは漫画家志望の主人公による自伝的作品で、
学園ラブコメSFアクションコメディと言われるものでした。
これも主人公の柳楽優弥が、ずっと脳内で独り言を言っています。
これは登場人物が全員、本音と建前を使い分けまくるドラマで、
シーズン2までやっていました。
そして昨年、大ヒットした『逃げ恥』。
これも主役の男女2人が、お互いに脳内で独り言を言いまくっていました。
掃除中に恥ずかしいことを思い出して、「あ~っ」とへたれこむ場面など、
「これわかるなー」と思った視聴者が多かったと思います。
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独り語りの手法は、演劇で言う「独白」に似ている
が出てくるドラマがヒットしていると思われます。
さて、テレビドラマは舞台と同じで、
基本的にはセリフだけで成り立っています。
ナレーションは物語の説明のために最小限あるだけです。
演劇特有の「独白」(=独り言によって何を考えているか示す)
という手法も、
当然ながらテレビドラマではほとんど使用されません。
ところが、
上に挙げたようなドラマでは、
あたかも演劇の独白のように、
主人公が頭の中でしゃべりまくります。
演劇でもこんなに独白が頻繁には出てきません。
これらのドラマは、まるで独白が主人公のようです。
ちなみに『半沢直樹』や『下町ロケット』といったように、
ナレーションに力を入れる作品も近年出ています。
これも独白の延長と考えてもいいかもしれません。
独白なら「不自然」を自然に表現できる
「目の前で起こっている出来事に順応できない」
主人公を表現していました。
恋愛ものにおける不自然な言動や行動は、
多くはわざとらしい。
脚本や演出上の都合が見えるようで、
シラけてしまいがちです。
しかしこのドラマは、
綾瀬はるかの不自然だらけの言動行動が、
「独白によって自然に見えてくる!」
これが見事でした。
つまり、不自然な行動をしていることを、
綾瀬はるか(主人公)自身も分かっているのです。
つまり、独白はある意味で視聴者の目線にもなっているとも言えます。
『アオイホノオ』における主人公も、
メタ視点(少し超越した視点)の独り言だらけで
周囲の世界と関わりを持つ主人公。
これは、西洋古典文学において既に先駆者がいます。
しかも圧倒的なレベルで。
それは
ドストエフスキー『地下室の手記』。
いわば最近のドラマは
「地下室の手記型主人公」
が登場しはじめています。
こんなのが流行って、
ドラマや文学のメインストリームになったら……。
どんどん引きこもりが増えてしまうのではないか?
いや、むしろ「精神的引きこもり」が増えたからこそ
こうした「イタイ主人公」を描くドラマが
人気を博しているのかもしれません。
誰か何とかしなければ……。