ホッブズの論争の逸話。デカルトやボイルと激しい喧嘩が勃発

高等遊民
こちらは寄稿記事です。

哲学にまつわる小説を書いてらっしゃる白兎扇一〈@WhiteRabbit1900〉さんに書いて頂きました

 

前回の記事はこちら。

【年表】ホッブズの経歴と人生を生い立ちから解説。長生きすぎて笑う

哲学者ホッブズとイギリス史を解説。17世紀イングランドの歴史

トマスホッブズの人物像や性格のわかる逸話。ロックやライプニッツとの関係やエピソード

 

白兎扇一
さて、ここまでホッブズの生涯を説明してきました。次はホッブズの論争を見ていきましょう

 

ホッブズは多くの論争を起こしていました。その一部を見ていきましょう。

 


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ホッブズの論争の逸話。デカルトやボイルと激しい喧嘩が勃発

 

1・VS数学者~数学あんまり得意じゃないのに出しゃばるから~

心理学にはダニング=クルーガー効果という恐ろしい法則があります。

これは、実力のない人間ほど自分の無知を自覚できず自信に溢れているという法則です。

高等遊民
私のことですか?
白兎扇一
ホッブズのような天才であってもこの法則の下にあるようです。

 

そもそもホッブズは最初あまり数学が得意ではありませんでした。

学生時代は数学を「魔術」だと考えていたぐらいです。

白兎扇一
数学を「呪文」だと捉えているド文系の私はついそんな彼に身を重ねてしまいます。

 

しかしある時ある紳士の書斎に行き、ユークリッドの『原論』の第1巻47番の命題を見て、

ホッブズ
「ちくしょう、こんなはずはない!」(原文ママ)

 

と思ったそうですが、読んでいくにつれ、その法則の正しさに気づき、数学好きになったようです。

 

しかし、友人で崇拝者のソルビエールやフランソワ・デュ・ヴェルデュですら

ホッブズの円積問題の証明に疑問を持ち、「論争から手を引け」と言いました。

専門外のことにはあまり出しゃばるものではないという教訓を含んでいます。

 

2・VSデカルト~ヒプノシスマイクじゃないけど解釈違い~

白兎扇一
さて、やってまいりましたデカルトとの論争!
高等遊民
ヒプノシスマイクってなんだろう。たとえがマニアックすぎるぞ!

 

まずこの論争はホッブズがデカルトの『方法序説』を見て、メルセンヌという知識人に批判の手紙を送ったことから始まります。

 

メルセンヌは彼の意見を面白いと思い、デカルトにその手紙を見せます。

ここからデカルトとホッブズの戦いの火花が切られます。

 

その様子をちょっと見てみましょう。

デカルト
確かにこいつは賢いわ。しっかし、なーんか勘違いしてんなァ?爺さんよォ
ホッブズ
「こっちもお主はすごいと思っておる。そっちこそ儂の手紙よく読んだかの?間違ってんのはそっちじゃろう」
デカルト
よろしい。ならば論争だ。仲間になれそうにないな。手紙は無視すっからな。おい、メルセンヌ。こいつにこれ以上俺の考え伝えんじゃねぇぞ。こいつ、俺を犠牲にして揚げ足取って人気になろうとしてんだ。魂胆は読めてんだよ!クソジジイが!
ホッブズ
「論争の張本人様が何ほざいてんじゃ、こんのクソガキがァ!」

 

倫理の教科書に載る偉人とは思えないほど汚いやりとりになってしまいました。

白兎扇一
勿論、意訳ですよ? とても綺麗な言葉で綴られてますが、大体こんなこと言ってます。

 

では、なぜこんな論争になってしまったのか。その原因はホッブズがあまりデカルトの思想に歩み寄らないところもあるのですが、

「希薄な気体」というデカルトの発想に

ホッブズ
「儂もそんなこと気付いてたもん、『内的な霊』として名付けたもん」

と突っかかったことにデカルトさんは怒ったようです。

 

なんとこの論争、デカルトの次の書物『省察』にも続いております。

そこでようやく2人の思想の違いがはっきり分かります。

 

ここで、この二人の思想の違いを思い出すために、デカルトの有名な言葉を思い出しましょう。

デカルト
「我思う故に我あり」

 

雑破に説明するなら、

デカルト
「あらゆるものを疑っても、自分の存在は疑えない。これが真理だ!」

 

という意味です。

白兎扇一
そこからデカルトはその存在から感性的なものを取り除いた思考が人間の本質だというように考えていました。

言うなれば、彼は「存在」(物体)から「思考」(精神)を分離し、心身二元論を取ったのです。

デカルトにとって「精神」は形はないけれども存在はしている「実体」でした。

 

それに対してホッブズは「精神」は「物体」から切り離せないと考えていました。

「思考」は物体だと思っていました。

 

デカルトとホッブズの哲学思想の違い。思惟とは

これだけでは疑問が尽きないと思うので、デカルトとホッブズの「思惟」についての考え方の違いがあります。

デカルト
デカルトはこれを「知解すること」と考えています
ホッブズ
ホッブズは「形や色から構成された要素、言い換えるならイメージ」であり「物体的器官の運動に準拠する」と考えています。

 

例えば目の前にある壁が「赤色だな」と考えるには目がないとできないでしょう。

だからこそ、ホッブズは「精神」は「物体」の存在を前提としていました。

 

その「思推」自体も物体なのです。

故に、ホッブズは形ある「実体」と形なき「実体」は二つあると考えたデカルトと違って、形ある「実体」しか信じませんでした。

 

白兎扇一
実際、彼は『リヴァイアサン』の中で形なき「実体」である幽霊などを馬鹿馬鹿しいと論破しています。

そういった幽霊などの存在はは何も知らない民衆達を煽動する格好の道具として使われ、政治が乱れる原因になるとしていたので、彼はデカルトのような考えにはならなかった上に、なれなかったのです。

 

3・VSボイル~実験室の有無について~

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さて、ロバート=ボイルとの論争について説明しましょう。

ボイルとホッブズが争ったことは実験室についてです。

実験から知識を得ることが真理にたどり着くいい方法だと考え、実験室を作り、専門的な科学者と共にデータを見て判断する─というのがボイルの考えでした。

 

いまの科学研究のやり方とそんなに変わらないこのやり方にホッブズは反駁しました。

ホッブズ
このやり方だと実験室と社会が分断されてしまう

と考えたのです。

 

白兎扇一
ホッブズは政治学者だからでしょうか、自らと社会は切り離してはいけないと考えていたのでしょう。

確かに客観視して俯瞰することはありますが、批判をされてナンボぐらいに思っていたのでしょう。

しかし、ボイルのように実験室を作ってしまうと、外の批判は届かない。

仲間内だけで納得してしまう。確かに議論はするけれども、仲間内の思考の域を出ない。知識もそこで停滞していくだろう

白兎扇一
要するに、実験室がブラックボックスになることを恐れたのです。

 

当初、ホッブズの考えは退けられました。化学の教科書にもならある通り、ボイルは堂々と載っています。

彼らの時代から何世紀も経た今だからこそ聞きます。

  • あなたは核兵器の作り方を言えますか?
  • 原発の仕組みは?
  • スマホは触るとなぜ動くのですか?
  • Wi-Fiはどうやって作動しているのですか?

 

大体の人間は答えられないでしょう。答えられても軽い説明だけで、その数式までは答えられないはずです。

何故でしょう。答えは一つです。

ホッブズ
私達は、ブラックボックスと化した実験室内の科学者達に委ねすぎたのです。だからこそ、その無知故に悲しい事故が起こったり暴走させたりしてしまうのです。

ホッブズのこの意見は、すっかり専門化してしまったこの世の中にこそ光り輝くものでしょう。

 

以上、ホッブズの論争の逸話。デカルトやボイルと激しい喧嘩が勃発でした

 

高等遊民
続きは、リヴァイアサンの解説についてです!

ホッブズ『リヴァイアサン』の時代背景と内容解説。楽しく簡単な要約で!

 

ホッブズのおすすめ本・参考文献・サイト

1、『ホッブズ リヴァイアサンの哲学者

生涯も思想もよくまとめてあって、それでいて薄いので非常にありがたい新書。何度お世話になったか分からない。

2、『リヴァイアサンと空気ポンプ

ホッブズとボイルの論争についてまとめてくれてる本。残念ながら長い。覚悟して読んで。

3、『ホッブズ政治と宗教―『リヴァイアサン』再考

1より生涯と思想についてよくまとめてくれている本。表紙が素敵。

 

4、『新版 概説イギリス史

イギリス革命の歴史を知るためにお世話になった本。私はイギリス革命のところだけ読んだけれど、他にももっと面白いところがあるかもしれない。

 

5、『ライプニッツとスピノザ

「何度紹介するんだ」って思われるかもしれないけど、名著。読めばライプニッツとスピノザが好きになる。確実に好きになる。

6、『哲学者190人の死に方

こちらも「何度紹介するんだ」って思われるかもしれないけど、名著。非常に読みやすいし、哲学者達のエピソードが豊富だから逸話を楽しみたい人にオススメ。

 

7、『若い読者のための哲学史

哲学史と哲学者の逸話が非常にわかりやすく説明されている本。文章が1章1章短いのですっと読める。

高等遊民
たまにkindleで安い。

 

8、『ロバート・フック』マーガレット・エスピーナス著

みやぎんさんに勧められた本。読んでみたら面白かった。今度買おうかなって考えてる。

 

9、『リヴァイアサン』(光文社古典新訳文庫)

『リヴァイアサン』本編が新しい訳で書かれている本。解説もあるので、最初に読み進めるのならこれ。

高等遊民
amazonの読み放題で読むなら第1巻が無料なので、とりあえずの入門にはおすすめです。
ただし翻訳者が哲学畑の方じゃないので、本格的に読むなら岩波文庫のほうがいいかも(精査してません)

 

以下写真なしで掲載

・『詳説 世界史B 改訂版』(山川)

・『ニューステージ 世界史詳覧』(浜島書店)

・『世界史用語集』(山川)

・『タテから見る世界史』(学研)

・『詳説 世界史研究』(山川)

・『倫理用語集』(山川)

 

海外サイト

https://en.m.wikipedia.org/wiki/Thomas_Hobbes

→墓の写真を持ってきました。調べてみるものですね。

 

スペシャルサンクス

  • ニートンさん〈@MNeeton
  • フックについて詳しい科学史歴史創作家のみやぎんさん〈@miyagin0315
  • ホッブズ本人
  • ここまで読んでくれた貴方

ここまで読んでいただきありがとうございました!

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白兎扇一

私、白兎は「今日は何の日か」調べて、短編を作る企画をしています。詳しくは

#今日は何の日短編集で検索!検索ぅ!

 

高等遊民の有料noteの紹介

 

noteにて、哲学の勉強法を公開しています。

 

現在は1つのノートと1つのマガジン。

 

1.【高等遊民の哲学入門】哲学初心者が挫折なしに大学2年分の知識を身につける5つの手順
 
2. 【マガジン】プラトン『国家』の要約(全10冊)

 

1は「哲学に興味があって勉強したい。でも、どこから手を付ければいいのかな……」という方のために書きました。
 
5つの手順は「絶対挫折しようがない入門書」から始めて、書かれている作業をこなしていくだけ。
 
3か月ほどで誰でも哲学科2年生レベル(ゼミの購読で困らないレベル)の知識が身につきます。
 
3か月というのは、非常に長く見積もった目安です。1日1時間ほど時間が取れれば、1ヶ月くらいで十分にすべてのステップを終えることができるでしょう。
 
ちなみに15000文字ほどですが、ほとんどスマホの音声入力で書きました。

かなり難しい哲学の内容でも、音声入力で話して書けます。

音声入力を使いこなしたい方の参考にもなると思います。

 

2はプラトンの主著『国家』の要約です。
原型は10年前に作成した私の個人的なノートですが、今読んでも十分に役に立ちます。
岩波文庫で900ページ近くの浩瀚な『国家』の議論を、10分の1の分量でしっかり追うことができます
 
 

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