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【年表】ホッブズの経歴と人生を生い立ちから解説。長生きすぎて笑う
哲学者ホッブズとイギリス史を解説。17世紀イングランドの歴史
トマスホッブズの人物像や性格のわかる逸話。ロックやライプニッツとの関係やエピソード
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ホッブズの著作と思想~『リヴァイアサン』の解説・要約
リヴァイアサンは誤解されまくってる本
ホッブズは自分を「恐怖との双子」と呼んでいました
『リヴァイアサン』は「誤解との双子」と呼んでも差し支えないほど誤解されやすい書物です。
まず、正しい思想を伝えた後に、よくある三つの誤解を書き出していきます。
そもそもリヴァイアサンって何よ?→旧約聖書に出てくる凶暴な化け物のこと!
(リヴァイアサン)
リヴァイアサン。
おそらく聖書で出てくる一番恐ろしい怪物です。
海を司る海獣です。
あまりにも凶暴過ぎて神様が「こんなんこれ以上増えたら困るわ」と思い、雄を殺し、世界で一匹だけにして、繁殖できないようにしたと言われています。
(ベヒモス)
こっちもまた強力な力を持つ化け物です。
神様が「こいつも強すぎる!繁殖できないようにしてやろ!」と雌を殺し、雄一匹だけにした─
……というわけではないのですが、ベヒモスは男の子設定とされています。
この二匹、お互い相反する存在になっているので、
っていうことらしいです。
まぁ、あくまでそういう説がありますよってだけですけども。だってそもそも伝説上の生き物だから雌雄はおろか、存在も分かりませんし。
因みにホッブズは『リヴァイアサン』の後に『ベヒモス』という歴史書も書いています。
これは絶対王政期のイギリスを著した本です。
リヴァイアサンの内容。要約と解説
さて、『リヴァイアサン』本編の内容に入りましょう。
要するにホッブズのメッセージはこうです
ホッブズのいう自然状態とは何か?自由だけど安らぎがない
ホッブズは自然状態(元々のこの世界)は自由であると考えていました。
それで持って人間は動物と違って未来を見据え、物を余分に持とうとします。
自由だからこそ、彼らは限りのある物資を求め争い合うのです。
そこに安らぎはないのです。
では、黙って指を咥えて見てろというのでしょうか?
ホッブズはこう続けます。
ホッブズの社会契約論とは何か?生命を守るための契約
まず、主権者を人民の中から決めます。
その人に自然権(元々持っていた自由)を一切合切渡すのです。
そのために人民は契約を結びます。それが社会契約です。
そして、主権者は人民達が好き勝手しないように見守ります。一人でも抵抗しそうになったら徹底的にとっちめていいのです。だってそういう契約ですから。
でも殺すことはできないんです。何故なら、元々生命を守るための契約だから。もし殺したら矛盾してしまいますもの。
「それでも、酷いじゃないか」って?
ともかく、ホッブズの考える国家はこういうものです。
ホッブズ「リヴァイアサン」への批判(誤解)
さて、散々調べまくったこっちからしたら「わけがわからないよ」となる誤解を紹介していきましょう。
誤解その1「ホッブズは王党派!絶対王政を擁護した!」or「ホッブズは議会派!」or「ホッブズは王党派だったけど議会派に寝返った!」
ホッブズにはこういう話があります。
ホッブズが本を出版するときに支援者がホッブズの顔と名前を載せ、チャールズ2世の家庭教師という銘を打って売り出そうとしました。
しかし、ホッブズは
と言ったそうです。
ここから分かることは本当に王党派だったらこんなことはしないということです。
ホッブズは
と書いています。
どちらの説もこの部分から解釈されたものです。
しかし、ホッブズは主権者が誰であるかを書いていないのです。
もっと言えば主権者は民衆の意見をちゃんと聞いてくれて真面目に国を治めてくれれば、
- 国王でも
- 独裁者でも
- 議会で選んだ議員でもいいわけです。
言い換えれば、ホッブズは王党派でも議会派でもない、主権者にただただついていくポリシーの人なのです。
だから王党派でも議会派でもありません、
誤解その2「ホッブズは無神論者!」
まず、この時代、議論で相手を論破したいとき、とにかく相手を黙らせたいときに
と言うことはよくあることだったようです。
そういう風につけられたわけでないとしても、ホッブズが無神論者であるというのはおかしいです。
ホッブズは全ての物事の第一の原因は神だと考えていましたから。
ともかく無神論者のセンは消えます。
誤解その3「ホッブズ思想は恐ろしい!」
確かにホッブズの思想は恐ろしいです。
という言葉から分かるように物々しく見えます。
しかし、主権者に強い権力を与えたのも平和を願ってのことです。
ところで。
ホッブズの生きていた17世紀で1年通して戦争がなかった年の数です。100年間中7年しか平和な時代がないのです。
ホッブズ自体アルマダの海戦と共に生まれ、三十年戦争、イギリス革命を経験しました。
それを認めてもらうために、聖書で最も恐ろしい怪物『リヴァイアサン』というタイトルにし、言葉に強い力を持たせ、私達の心に届くようにしたのです。
平和のために悪となった政治学者。そう言っても過言じゃないと思います。
さて、まとめに行きましょう。
結論。ホッブズのリヴァイアサンは平和を求めた書物
- 軍艦迫ってきたからお母さんが産気づいて、お父さんは蒸発して、伯父に引き取られる
- 貴族の家庭教師・秘書となり上流階級に登りつめるが、亡命を繰り返す
- 健康オタクの長生きじいちゃん
- ガリレオ・デカルト・ロックと会ってるし、ライプニッツから手紙もらってるし、フックのストーカー
- 生涯独身ながらも老いらくの恋を体験
- 数学者とデカルトとボイルと論争起こしまくる
- リヴァイアサンは誤解されやすい書物
- 自然状態は危険だから個人は主権者に自然権を渡し、大人しくしよう!
いやー、とんでもないおじいちゃんでしたね。
以上、ホッブズ『リヴァイアサン』の時代背景と内容解説。楽しく簡単な要約で!
ホッブズのおすすめ本・参考文献・サイト
1、『ホッブズ リヴァイアサンの哲学者』
生涯も思想もよくまとめてあって、それでいて薄いので非常にありがたい新書。何度お世話になったか分からない。
2、『リヴァイアサンと空気ポンプ』
ホッブズとボイルの論争についてまとめてくれてる本。残念ながら長い。覚悟して読んで。
1より生涯と思想についてよくまとめてくれている本。表紙が素敵。
4、『新版 概説イギリス史』
イギリス革命の歴史を知るためにお世話になった本。私はイギリス革命のところだけ読んだけれど、他にももっと面白いところがあるかもしれない。
5、『ライプニッツとスピノザ』
「何度紹介するんだ」って思われるかもしれないけど、名著。読めばライプニッツとスピノザが好きになる。確実に好きになる。
6、『哲学者190人の死に方』
こちらも「何度紹介するんだ」って思われるかもしれないけど、名著。非常に読みやすいし、哲学者達のエピソードが豊富だから逸話を楽しみたい人にオススメ。
7、『若い読者のための哲学史』
哲学史と哲学者の逸話が非常にわかりやすく説明されている本。文章が1章1章短いのですっと読める。
8、『ロバート・フック』マーガレット・エスピーナス著
みやぎんさんに勧められた本。読んでみたら面白かった。今度買おうかなって考えてる。
9、『リヴァイアサン』(光文社古典新訳文庫)
『リヴァイアサン』本編が新しい訳で書かれている本。解説もあるので、最初に読み進めるのならこれ。
ただし翻訳者が哲学畑の方じゃないので、本格的に読むなら岩波文庫のほうがいいかも(精査してません)
以下写真なしで掲載
・『詳説 世界史B 改訂版』(山川)
・『ニューステージ 世界史詳覧』(浜島書店)
・『世界史用語集』(山川)
・『タテから見る世界史』(学研)
・『詳説 世界史研究』(山川)
・『倫理用語集』(山川)
海外サイト
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Thomas_Hobbes
→墓の写真を持ってきました。調べてみるものですね。
スペシャルサンクス
- ニートンさん〈@MNeeton〉
- フックについて詳しい科学史歴史創作家のみやぎんさん〈@miyagin0315〉
- ホッブズ本人
- ここまで読んでくれた貴方
ここまで読んでいただきありがとうございました!
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私、白兎は「今日は何の日か」調べて、短編を作る企画をしています。詳しくは
#今日は何の日短編集で検索!検索ぅ!
哲学にまつわる小説を書いてらっしゃる白兎扇一〈@WhiteRabbit1900〉さんに書いて頂きました