【教育を受ける権利と義務の歴史】堀尾輝久『現代教育の思想と構造』を読む




教育学の名著 堀尾輝久『現代教育の思想と構造』のまとめを作っています。

堀尾輝久『現代教育と思想の構造』第1部第1章を読む

堀尾輝久『現代教育の思想と構造』第1部第2章を読む

全4回。今回は3回目で、第2部第1章です。

 

序章

・中核的問題
(1)教育権の所在と構造(国民の教育権)
(2)国家権力(政治)と教育の関係(教育の自律性、中立性)
(3)社会における教育の任務(機能)と目的

・これらを究明するとともに、日本の憲法・教育基本法の解釈のあり方を示す。

・とりわけ憲法第26条「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」の総合的解釈がしたい。

 

第一章 教育を受ける権利と義務教育―親権思想の変遷を手がかりとして

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 第一節 問題設定

・教育を受ける権利(子どもの学習権)の思想と福祉国家の義務教育の思想は歴史的に対立する。ところで日本国憲法はこの二つの原則の規定がある。

・今日、教育問題についての主要な対立抗争は、「教育権」をめぐるものである。

・教育を受ける権利と義務教育の問題は、教育における子ども・親・教師・社会・国家の位置をめぐる問題。とりわけ子どもの位置づけいかんに問題の焦点。教育権の所在とその構造。

 

 第二節 「教育を受ける権利」についての一般的理解

・日本国憲法において教育は、基本的人権の一つ。義務教育の規定も、教育を受ける権利の実現の手段として位置づけ。

・ところが教育を「国家が配慮すべき」ものというとらえ方がある。これでは権利が国家にあり、就学は国民の義務
だという思想に、容易にすりかえられうる。

・戦前は、子どもの権利の思想など皆無。親権思想。親義務の主張が、子どもの権利の承認ではなく、国家社会に対する義務をその内容とする。

 

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 第三節 近代社会における「親権」と子どもの権利

・一般には、両者は同一のものではなく、むしろ相対立するものを含む。

・親と子の権利の二重性(ヘーゲル)。親権は権利と同時に義務。「親は、、、権利を有し義務を有す」

・19世紀後半には、親権の現実的な解釈は義務性が強調された(シャルモン)。

 

 第四節 親権思想の推移と義務教育

・親権解釈の問題は、「親のための権利か、子のための権利か」ではなく、「親義務」の中身を問うもの。すなわち、第一義的には、子どもに対する義務(子どもの権利の承認)なのか、国家に対する義務なのか。

・フランス第三共和制の公教育。1880年代以降。デュギー(L. Duguit)、フェリー(J. Ferry)。コント(A. Conte)の影響:「神の名を認めぬ実証的状態においては、権利の観念は確定的に消滅する。各人は万人に対して義務を有する、しかしながら、何人も常に自己の義務を尽す権利以外の権利を持ってはいない」かくして、個人の権利に対して、公共の義務がこれに代る。

・実証主義からは必然的に、親権とは「親が子を教育する義務を遂行するという、いわば権利にあらざる権利」国家社会を権利の主体として導き出す思想を準備。実証主義(自然法・自然権の否定)と社会連帯が思想的支柱。

 

 第五節 教育を受ける権利と教育義務

・教育義務という用語は、親の恣意から子どもの権利を守るための公的配慮を指し、義務教育とは異なる。

・親権の義務は、国家社会に対する義務性が強調された。

・子どもの教育を受ける権利と、教育義務の結びつきは、近代思想に見られる。

・二月革命(1848年革命)のときも臨時政府に対して、すべての市民の生存と労働の権利とともに、全市民の教育を受ける権利が要求された。

・マルクスも、教育は国民の権利であり国家が教育の機会について配慮すべきことを主張。労働者の自己教育を支えている思想が、この権利としての教育思想であり、学習権の思想であることは明らか。

・教育を受ける権利を実効あらしめるためには教育機会に対する社会的な配慮が必要。そのためには子ども・親・国家の権利関係が明らかにされ、親義務が正常に位置づけられない限り、国家の教育支配を許す結果になりやすい。

・権利としての教育の思想は、なによりもまず子どもの学習権の思想でなければならない。

・ミル:子どもに「教育を与えることが両親の神聖な義務」「国家が親の義務の遂行を監督するべき」という意味における「国家による義務教育」を主張。「国家が自ら主体となって教育を引き受けること」と、「国家による教育の強制」は「全く別もの」

・マルクス:資本主義的搾取様式こそが、親権の濫用に至らしめ、家内労働・児童労働が行われる。=親の生存権・経済的基盤が保障されないと子どもの権利の実現は不可能。

・権利としての教育の思想を中心として、教育権を構想する場合、社会の教育への公的配慮と、国家機能の限定の問題が提起される。

 

 第六節 教育権の構造

・子どもの学習権と、親の教育権との矛盾はどのように解決されるか。

・子どもの権利が重要であり、子どもの権利が親権の内容を規定する=義務性の強調。親権は義務性そのものを内容とする=今日的親権の中身=教育義務の思想。

・公教育は親義務の委託ないし共同化。学校にやれば義務を履行したことにはならない。公教育は委託であるがゆえに、親たちによる監視が必要。

・義務を引き受けるのは現実的には教師。学校は知育。「教師は真理のエイジェント」。

・子どもは学習する権利を放棄できない。権利の行使こそ、社会的義務。



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