火垂るの墓といえばおばさんですよね。
- 意地悪なおばさん
- 清太と節子にとっても冷たい仕打ちをするおばさん
- 嫌味ばかり言って食べ物をろくに与えてくれない
- あまりにも酷すぎる人間じゃない
そんな風な感想を、誰しもがいちどはもつでしょう。
でも、そんなおばさんって悪者説を否定する意見もありますよ。
- いやおばさんの言ってることは正論でしょう
- 悪いのは、嫌味に耐えられなかった清太の方
- 清太はクズ。妹を死なせた。無能
この清太が悪いのか、おばさんは悪くないのか?
そんな意見は1988年の公開当初から結構議論になっていたみたいです。
じゃあ、結局どっちなんだ。高等遊民が考察したいと思います。
結論としては、
- 「清太を無能呼ばわりする意見」は、他人の受け売りで浅い! 自分の意見はないのか?
- 「おばさんの姿を観て恐怖を覚える」 ←こうした観方のできる人間は、深い! あんたは映画を分かってる!
こんな感じです。
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火垂るの墓のおばさんのセリフは正論だから悪くない?実はいい人でその後は後悔したのか考察
火垂るの墓おばさんのひどいいじめのセリフまとめ
最初は、清太と節子に優しいおばさんですが、だんだんと物言いがきつくなってきます。
お母さんの着物なあ いうては悪いが もう用もないんやし―お米に換えたらどう? おばさんも前から少しずつ 物々交換して足し前してたんよ これで一斗にはなる思うよ このまま置いとくより その方がきっとお母さんも喜びはるわ ほな ちょっと行ってくるさかい
ええ加減にしとき! うちにおるもんは昼かて雑炊や お国のために働いてる人らの弁当と 一日中 ブラブラしとるあんたらとなんで おんなじや思うの
清太さんな あんたもう大きいねんから 助け合いいうこと考えてくれな あんたらは お米ちっとも出さんと それで御飯 食べたいいうても そらいけませんよ 通りません
ちょっと つづけて ご飯 食べさせたったらまあ 口が肥えてしまいよってからに!
そやかて あれうちのお米やのに
なんや そんならおばさんが ズルイことしてるいうの えらいこというねえ みなしご 二人あずかったって そう いわれたら世話ないわ よろし うちと あんたらと 御飯 別々にしましょ それやったら文句ないでしょ牛になるよ 兄ちゃん(直後すぐに横になってしまった清太に対して)
ウェーン エンエン(節子がなく)
またや 清太さん こいさんも兄さんも お国のために働いてるんでっさかい せめてあんた 泣かせんように したらどないやの! 毎晩 毎晩 警報で ええかげん みんな寝不足になっとるいうのに うるそうて 寝られへん清太さん また横穴いくんか あんたの年やったら 隣組の 防火活動するんが当たり前やないの
(オルガンを弾いて歌を歌う清太と節子に)よしなさい! この戦時中になんですか 怒られるのは おばさんですよ 非常識な ほんまに えらい疫病神が まいこんで来たもんや 空襲いうたって 何の役にもたたんし そんな命 おしいのやったら 横穴に住んどったらええのに
えらい長いこと お邪魔しました ぼくら よそへ移ります
よそて… どこ行くの?
まだ はっきりしてませんけど
はあ…? ほなまあ 気ぃつけてな 節ちゃん さいなら
まあ、ひどい、冷たいですよね。
なんで悪くないなんて意見があるんでしょうか。
おばさん悪くない説の理由
私がすべて説明することもないので、Twitterからご意見を集めてみます。
大人になると火垂るの墓見て「おばさんは至極当然のこと言ってるな……」ってなったり
大人になって見ると、あのおばさんが言っているのも当たり前なことだとわかる。より辛くなる
戦争中って考えたらさ、おばさん変なこと言ってないよね。
年齢が上になるほど、叔母さんではなく清太が悪い…という感想になるという「火垂るの墓」
昔は意地悪なおばさん嫌だなって思ってたけど大人になってから見ると清太さん働きなさいよ…って思うようになった
そうしたら節子死ななかったんじゃなにもしない穀潰しの清太、叔母が邪険にするのも分かる。ノープランで2人暮らしとかリスク高すぎ。
火垂るの墓は年齢によって見方が変わったなー。今なら親戚のおばさんの悪業と思われた所業が、戦時中の状況わかるにつれ理解出来るようになってしまった…。
火垂るの墓のお兄ちゃんは 今見るとお手伝いとか全然 してないんですよね。 前はおばさん酷いと思って 見てましたが、兄妹も お手伝いくらいしなよと 思いました。
こうした考えの根底にあるのが、「清太が上手く立ち回れば、節子は死なずにすんだ」という考えですね。
清太が悪い、おばさんが悪くない
そういう議論も有意義ですが、あまり建設的ではないかな、とわたくし高等遊民は感じております。
その理由が以下です。
火垂るの墓のおばさんを観たくないと感じる理由は?
- とにかく火垂るの墓を見るのは気分が悪い。
- 何度でも見たい名作とは全く思わない。
こう感じる方も多いと思います。私もそうです。なんででしょうね。
その答えが、やはりおばさんにあると思うんです。
非常に深く、鋭い意見だなと思ったのは、こちら。
火垂るの墓のおばさんの、あの嫌な感じは見ていられない。おばさんも生きるのに必死なので、自分もあのおばさんと同じ行動をしかねないと思うと、さらに嫌な気分になる。
— Yash_san🦈 (@yash_san) 2018年4月8日
火垂るの墓の親戚のおばさんとか子供から見れば悪役だが、
大人から見れば「もし自分が同じ立場ならそうしたかもしれない」と感じる人物だ。そこがまた複雑なんだよね— 弓 (@yumiyanoyumi) 2018年4月8日
この怖さ分かる…
でも子供の頃から「うちのお父さんだけは絶対西宮のおばさんのようにならないだろうな」と感じていたし、今でもそう思う。火垂る墓のおばさんのセリフは正論だから悪くない?実はいい人でその後は後悔したのか考察 https://t.co/Be0iZgkeWt
— マキロン・ポーツネル (@mportsnelle) 2019年3月14日
- 「自分もあのおばさんと同じ行動をしかねない」
- 「もし自分が同じ立場ならそうしたかもしれない」
はいここです。これが、この原作や映画の素晴らしい描写なんですね。
おばさんを見ると、誰しもが嫌な気分になります。
その嫌な気分の正体は、これなんです。
見るのがツライくらい、よく描けているんです。
火垂るの墓の評価は? 山田洋次も絶賛した
ジブリの教科書って文庫本があるんですよ。
そこで山田洋次監督が、火垂るの墓について語っているのですがこんなことを言っています。
「日本人の敵は日本人だったのです。この映画で西宮のおばさんの描写はとても優れていると思いますが見ていて辛い。もうその先は見たくないと思うくらい辛い。なぜなら僕があのおばさんなら、自分自身がそうしていたかもしれないという恐怖感があるからです。あのおばさんの行為はそのようなリアリティーを持っている。
雑炊を食べるシーンで、自分の娘には米粒や具をいっぱい入れて、清太や節子の兄妹には薄い汁だけ。ギスギスして、嫌味なことを言ってしまう。日本の家父長制度が悪いところもよく描けていると思います。」
おばさんはその後になって後悔するはず。実写映画の描き方は下手くそ
山田洋次監督はさらにこう言います。
「実は、このおばさんのような人物の描き方は1番難しいんですね。 2008年の実写版では松坂慶子さんがこの役をやっていますが、最初からまるで嫌な人物として演出されていました。でもこのおばさんの置かれた状況を丁寧に考えると最初から悪い人間像にしてしまうのはそぐわない。このおばさんも、年をとってから私はなぜあの時、あの子たちをあんな目に合わせた音だろうと後悔するでしょう。心の底から悪人では無いのです。」
そう、おばさんとは、そんな人なんですね。もともと悪い人間では全くない。
戦争がそうさせてしまう。
だからこそ「自分もおばさんと同じことをするかも。いや、それ以上にもっとひどい仕打ちをするかも」
おばさんは嫌味だけで済んだんだから大したものかもしれないんですよ。
- 自分から追い出すかもしれない
- 全くご飯を与えないかもしれない
- 清太を殴りつけた農夫のように、暴力をふるうかも。
そのように、おばさんの姿を観て、自らの生き方を反省する。
こういう視点が、非常に大切です。そういう反省ができるからこの映画は素晴らしいのです。
だから「清太はクズ。おばさんは悪くない」だけの意見というのは、
価値が低い、底の浅い意見だな
と、わたしは口をすぼめて批判するのです。
なぜここまで批判するかというと、それが他人の意見の受け売りである可能性が高いから。
特に2ch系でこういう言説が流行ったと思っているので、何も考えない受け売りを批判しています。
そんな哲学的な見方をするのもツライんですけどね。
こういうツライ作業をしろと促すのが、優れた芸術なのです。
【結論】火垂るの墓のおばさんのセリフは正論だから悪くない?実はいい人でその後は後悔したのか考察
おばさんは悪くないのか、というテーマで、火垂るの墓の芸術性を語りました。
- 「清太を無能呼ばわりする意見」 これは、他人の受け売りで浅い!
- 「おばさんの姿を観て恐怖を覚える」 こうした観方のできる人間は、深い!
- 「自分自身がおばさんのような仕打ちをするかも。あるいはそれ以上に」と反省させる
- そういう反省的な見方は、キツイ。だから火垂るの墓は、観たくない。
- 芸術作品とは、そういう自分自身のぬるい生き方を反省させる、キツイものである
以上がわたくしの言いたいことでした。
火垂るの墓、時々で良いから、思い出してみてください。
以上、火垂るの墓のおばさんのセリフは正論だから悪くない?実はいい人でその後は後悔したのか考察でした
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