昨日「プラトンのそこそこ手強い問題集」10問作りました
その解説をしていきます
まだやってない方は、まずはこちらをやってみてください↓
では解説していきます
特に後半は、なかなか読み応えのある解説をしていると思います
ぜひ最後まで読んでみてください
解説した音声を録音したけど
カラスがカーカーガン鳴きしてるので、ダメです
しかも長い(15分くらい)
4000文字くらいもうちょっと縮めて解説ブログに載せます
個人的にエルの神話の解説が自分で聴いても「ええ感じですな」と思いました https://t.co/3mU7fIciuK
— Master Neeton@哲学の高等遊民 (@MNeeton) 2018年6月28日
※音声データの書き起こしなので文章が話し言葉になっています
下記クリックで好きな項目に移動
- 1 第1問:プラトン国家の3つの例えにないものは?
- 2 第2問 プラトン対話篇でプラトン本人が登場するのはおよそ30作品中2作品だけ。ソクラテスの弁明ともう一つはなんですか?
- 3 第3問 プラトンが開いたアカデメイアは、いつまで、何年間続いた?
- 4 第4問 アリストテレス形而上学によるとプラトンは誰の影響受けてますか?
- 5 5問目 次のうちプラトンが書いたものではない「偽書」とされる作品はどれ?
- 6 6問目 プラトンが書いたとされる作品のうち、残ってないものはどれですか?
- 7 第7問 プラトン対話篇は書き出し、最初の一語に「その作品のテーマが凝縮されてる」と言われます さて『国家』の書き出しはどんな言葉?
- 8 第8問 ソクラテスの弁明でソクラテスが死刑判決になった決定的な理由はなんですか?
- 9 第9問 国家第10巻「エルの神話」で語られるところによると人間は死後、天国か地獄へ行き、再び生の選択をします さて、天国と地獄で何年間過ごしますか?
- 10 第10問 結局ソクラテスの生き方とか哲学、一言でいうとなんだろ?(高等遊民の解釈)
- 11 まとめ 最後まで解説読んでくれてありがとうございます!
第1問:プラトン国家の3つの例えにないものは?
- 太陽
- 線分
- 深海
- 洞窟
はいこれは深海ですね
国家読めばすぐにわかります
第2問 プラトン対話篇でプラトン本人が登場するのはおよそ30作品中2作品だけ。ソクラテスの弁明ともう一つはなんですか?
クリトン
パイドン
ティマイオス
クリティアス
これはパイドンが答えです
これもプラトンの対話篇を読めばわかりますけど
ソクラテスの弁明では有罪になってオロオロとプラトンが出てくる描写があります
パイドンでは「プラトンは病気だったと思います」と言われています
第3問 プラトンが開いたアカデメイアは、いつまで、何年間続いた?
100年くらい前。ヘレニズム時代。
300年くらい前。ローマの初代皇帝アウグストゥスが誕生したころ。
600年くらい前。コンスタンティヌス帝のキリスト教公認のミラノ勅令のころ
800年くらい前。東ローマ帝国のユスティニアヌス帝がローマ法大全の編纂を命じるころ
答えは800年くらい前です
東ローマ帝国の頃まで続いたんです
第4問 アリストテレス形而上学によるとプラトンは誰の影響受けてますか?
パルメニデスとエンペドクレス
エンペドクレスとピタゴラス
ヘラクレイトスとピタゴラス
パルメニデスとヘラクレイトス
かなり難しいかなと思います
これ答えは「ヘラクレイトスとピュタゴラス」なんです
アリストテレス形而上学に書いてあります
これは余談ですが、形而上学で確認しようと思って高等遊民の本棚見たんですが、形而上学が見つからない
どうしようと思って自分のブログ見たら書いてありました
過去の自分に助けられました
これです↓
ヘラクレイトスとピタゴラスの影響受けてる、と形而上学では言われてます
でも実際は、ブラタンはパルメニデスの影響を非常に受けています
アリストテレス自身もパルメニデスの影響を絶対に受けてるんです
なぜアリストテレスがパルメニデスへの言及をすっ飛ばしたのかちょっとよくわかんない。
それは現代の研究でもはっきりした答えが出てなかったはずです
ちなみに形而上学という作品は「世界で一番最初の哲学史」と言われています
5問目 次のうちプラトンが書いたものではない「偽書」とされる作品はどれ?
カルミデス
リュシス
ラケス
アルキビアデス
答えはアルキビアデスです
これはプラトンの解説書を読まないと知らない知識かもしれないです
カルミデスという対話篇は「思慮深さについて」という副題でクリティアスが主な対話相手になっています
リュシスは「友情について」という副題で短い小品
これ読み易いですね
ラケスは「勇気について」という副題で、将軍を相手に「戦争における勇気について」語るという対話篇です
で、アルキビアデスが偽書
ただ新プラトン主義のカリキュラムではこのアルキビアデスは
「プラトンの入門に一番お勧めですよ」と言われているんです
この当時は「アルキビアデスが偽書」という感覚はなかったんですね
6問目 プラトンが書いたとされる作品のうち、残ってないものはどれですか?
トラシュマコス
カリクレス
ヘラクレイトス
全て残ってる
答えは全て残ってるです
奇跡的に全て残ってますね
第7問 プラトン対話篇は書き出し、最初の一語に「その作品のテーマが凝縮されてる」と言われます さて『国家』の書き出しはどんな言葉?
上昇する:洞窟から出てくるという意味
下降する:洞窟へと入っていくという意味
見上げる:天上のイデアを見上げるという意味
製作する:天上にある理想国家のモデルを作るという意味
これもプラトン対話篇の書き出しにテーマが凝縮されているっていう分析が初耳の方も多いと思います
そんな解釈が研究者の間では言われているようです
例えばパイドンだと「私自身」という言葉が書き出しです
そこからパイドンを読んでみるという解釈もありますね
これ納富信留先生がどこかの本でやっていたはずです
東洋大学の「哲学入門」みたいな冊子で書いていた気がします
これですね。アホみたいに安いのでぜひ購入を。
で、答えは2番の「下降する」です
洞窟へと入っていくという意味です
なんで下降するなのか
【国家】の舞台を考えていただければ分かります
対話する場所はアテナイではなくペイライエウスっていう港町なんです
港町は、もちろん海抜に近いところ
一方でアテナイはもう少し標高が高いところ
なので「アテナイの街からペイライエウスへと下っていく」
これが『国家』の書き出しなんです
これに注目するとですね岩波文庫の翻訳、お持ちの方はちょっと冒頭の書き出しのページを開いてみてください(上巻)
すると、「ペイライエウスに行った」と翻訳されています
つまり「下降した」とか「下った」という言葉では書かれてません
「だからこの翻訳は、冒頭から誤訳だ~~~」という批判もあったりします
例えば納富先生のプラトン国家を中心に扱った『理想国の現在』という本
プラトン対話篇のエッセンスを紹介した岩波新書の『プラトンとの哲学』
これでは必ずあらすじを説明する時にも
「ペイライエウスへ下ったソクラテスは~」と「下る」という言葉が使われています
確認してみてください。絶対にそうやって書かれています
納富先生は「ペイライエウスへ行った」とは死んでも言わないはずです(笑)
ちなみに余談ですが、木村鷹という日本で一番最初のプラトン訳した戦前の人は
「ペイライエウスへ下降せり」ときちんと訳しています
ちょっと面白いですね
第8問 ソクラテスの弁明でソクラテスが死刑判決になった決定的な理由はなんですか?
私は無罪だと言って相手(メレトス)を言い負かしたから
私には金がないから許してと命乞いしたから
私にふさわしい罪状は迎賓館での食事だと主張したから
勾留中にクリトンら友人たちがソクラテスを逃がそうとしたから
これ答えは3番の「私にふさわしい罪状は迎賓館での食事だと主張したから」です
ソクラテスの裁判、判決が2回あるんですよ
1回目は有罪か無罪かを決める判決
2回目が有罪の量刑ですね
死刑なのか
罰金なのか
懲役なのか
を決めるというような量刑に関する判決
1回目の判決は、ギリギリのところで有罪になります
もし数人でも多く無罪投票してれば無罪になったくらいのギリギリなところで有罪になります
そして2回目の量刑に関する判決の弁明で、炎上するんです
ソクラテスの「許してください」という命乞いをみんな期待していたんです
けど「私はアテナイの役に立っている。私は貧乏だから最もふさわしい刑罰といったら国賓として美味しい食事を私にご馳走することだ」
といったんです
それでプラトンらが立ちあがっておろおろした
「そんなこと言うなよ」と。
陪審員の人は、みんなおこっちゃって「死刑にしてしまえ」と勢いで決めちゃうんですね
という疑問はとても考える意味があると思います
「拘留中にクリトンら友人たちが逃がそうとした」
これは死刑判決が決まった後の話ですね
ソクラテスの弁明要約と解説|裁判背景を知れば対話篇は10倍面白くなる
第9問 国家第10巻「エルの神話」で語られるところによると人間は死後、天国か地獄へ行き、再び生の選択をします さて、天国と地獄で何年間過ごしますか?
100年
500年
1000年
10000年
答えは1000年です
死ぬ→死後の世界へ行く
そこで天国か地獄に行くか、左か右に分けられます
どちらか一方で1,000年間過ごしたあと、再び地上に生まれるチャンスが与えられます
で、生の選択をします
泡とか、水晶のようなものがたくさん置いてあります
それをじっくり見ると大体どういう人生になるかがわかるようになってる
その人生が写された水晶玉を見ながら選べばいい
と思うんですけどね
これがなかなかうまくいかない、とプラトンは言うんです
天国からで1000年過ごしました
そういう人はもうちょっと、「うぇーい」な感じなんですよ
人生チョロイわ、楽勝だわ、みたいな
だからこの水晶見てもですね。あんまり考えない
王様・王子様として生まれますよみたいな、魅力的な人生に飛びつく
でも、じっくり眺めると、実はその後、ひどい破滅の人生を歩んでいくみたいな人生だったりする
天国で1,000年間も過ごしてると、体も心もゆるゆるになって、注意力が散漫になる、判断がいい加減になる
ディズニーの映画でウォーリーっていう映画がありましたけど
ウォーリーの中で、地球から離れた人類は安楽いすに座ってのんびり過ごしてますよね
あんな感じかなというイメージです(画像なくてすんません)
要するに、天国で過ごした人々は、見た目に騙されて悪い人生を選んでしまう
で、次は地獄へ行く
反対に地獄で1,000年間過ごしてきた人はどうか
「もうこんな思いはこりごりだ」ってなってるのでかなり慎重に人生の選択をします
「平凡だけど確実なおだやかな人生」とか
「良いこともそこまでないけど、悪いことも少ない」
そういう安定した人生を選ぶ
そして次は天国へ行ける
- 天国から来た人は、次の死後は地獄行き
- 地獄から来た人は、次の死後は天国行き
永久にループするんです
行ったり来たり
哲学はこういうところがおもしろい
で、大事なのはここ。
「この選択は、すべて自分の意思の選択である」ということ
神様のせいでもなんでもない、自分が選んでいるんだ
これがプラトンの「エルの神話」のミソというか、もっとも重要なところなんです
彼らに共通していることは、「流されてる」ということです
自分の魂が、育った環境に流されてる
いい生活したら注意力散漫だし
悪い生活したら慎重になるし
そういう事の繰り返しは、辞めよう
というのがエルの神話における「哲学を学ぶ意味」
「環境に左右されずに、自分の意志で、正しい選択をして、常に良い人生を送り、魂を磨いていこう」
「そのために哲学を学ぼう」
みたいなのがエルの神話のメッセージですね
第10問 結局ソクラテスの生き方とか哲学、一言でいうとなんだろ?(高等遊民の解釈)
人間は自らの無知を知るべきだ
正義は不正に勝る
人間は美を追求して魂を美しくすべきだ
例え悪法であっても法には従う
これはですね高等遊民の解釈なんで、正解することはないと思いますが
答えは「正義は不正に勝る」です
ソクラテスの言ってることは結局これだけだと思うんです
「自らの無知を知るべきだ」ってこれはもちろん違います
「美を追求して魂を美しくすべきだ」
これ『饗宴』で言われていることです
ソクラテスの言葉というよりはディオティマの受け売り、という話だから間違いと一応言える
「悪法であっても法に従う」
これは『クリトン』のちょっと誤った解釈的な
残ったものが「正義は不正に勝る」
という選び方もできるかなと思います
『ゴルギアス』っていう対話篇に一番詳しいですけど
あと『国家』の第1巻トラシュマコスとの対話とか
『国家』全体のテーマもそうですけど
とにかくソクラテスの主張は、正義は不正にまさる
まさるっていう意味は、得っていうことも含んでる
ふつうは正義は損、不正は得って思われてますよね
「正直者が馬鹿をみる」っていう言葉もありますけど
しかしソクラテスは「そんなことない」という
ソクラテスは教説がないとか、相手の無知を暴くだけって思われてますけど、
それだけがソクラテスじゃないと、個人的には思ってます
「正義は不正に勝る」っていう明確なテーゼをソクラテスは持ってると思います
なので「正義は不正にまさる」が正解ということで
まとめ 最後まで解説読んでくれてありがとうございます!
あなたは何問できたでしょうか?
一般的にはまぁ2~3問しかできないのではないかなぁと思います
プラトン対話篇を読んでいる方でも4~5問くらいですかね
7問以上正解したかった素晴らしいなと思います
ではでは、高等遊民でした