漢詩の学習をする際に必ず出てくる李白。
盛唐時代に活躍した詩人です。
今回は、李白について、
- 生い立ち
- 経歴と代表作
- 性格
を紹介します!
こちらを読めば、李白の生い立ち・経歴や作品・性格や人となりが分かって、作品もさらに楽しめるようになります。ぜひご覧ください。
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李白の経歴と漢詩の代表作品。生い立ちや性格のエピソードが面白い
李白の生い立ちは?
李白は701~762年、盛唐の時代を生きた詩人です。
日本でいうと、奈良時代に相当します。
『古事記』や『日本書紀』、『万葉集』が作られた時代です。
苗字が「李」、名前が「白」で、字は「太白(たいはく)」と言います。
字(あざな)とは、
- 漢字圏諸国で使われる人名の一要素
- 昔、中国の成人男性が実名以外に付けた名前
のことです。
李白の生い立ち 20歳頃までは蜀に定住
出生地は西域とされるのが有力で、父は裕福な商人でした。
5歳の頃には、蜀に移住しました。
以降、20歳頃までは蜀に定住しています。
蜀では、
- 剣術
- 詩文(主に読書)
を学んでいました。
25歳頃から、李白の放浪人生が始まり、現在も古典の教科書に登場する有名な詩を残し始めました。
李白の経歴と漢詩の代表作品
李白は、25歳の頃から10年ほど、蜀を離れ、長江中・下流域を中心に、
- 洛陽
- 太源
- 山東
を放浪しました。
この頃の代表作が、
- 「峨眉山月の歌」
- 「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」
です。どちらも教科書に載ることのある名作です。
李白の就職活動
もちろん、詩歌作りだけでは食べていけませんので、就職活動もしています。
42歳の時には、知人のつてを使って、長安で玄宗皇帝に謁見し、皇帝側近の顧問役をGETしました。
この時、当時の詩壇の長老・賀知章から「謫仙人(たくせんにん)」と評されていることから、詩歌の実力は相当なものだったことが分かります!
李白の宮廷生活
宮廷での生活は順風満帆で、
- 詩歌を作る
- 詔勅の起草
をこなす日々でした。
李白の代表作「清平調詞」三首
この頃の代表作は、楊貴妃の美貌を牡丹にたとえた「清平調詞」三首があります。
- 宮廷でも文人活動で大活躍でした。
- しかし、そんな生活も2年で幕を閉じることとなりました。
- 無礼な言動が続き、長安を追い出されてしまったのです。
長安を追い出されてしまった李白は、またしても放浪の旅を続けました。
李白と杜甫の出会い
ここで、運命的な出会いをしています。
現在でも、よく比較される詩人・杜甫(とほ)です。
彼らは意気投合し、1年半もの間共に旅をしました。
- すごく馬が合ったんでしょうね。
- 1年半も一緒に旅をしては詩を作っていたんでしょうね。
- 詩の天才同士、お互いに切磋琢磨する良い関係だったことでしょう。
55歳の時、「盧山の瀑布を望む」で有名な盧山に隠棲していましたが、かつての主君・玄宗の子どもである永王の幕僚として招かれました。
その永王が反乱軍として追われた際に、李白も捕らえられ、数か月獄中生活を強いられました。
なんとか釈放された李白でしたが、58歳の時に流刑に処されてしまいました。
流刑地への道中で、赦免となり、元来た道を帰ることができた李白。
この時に「早に白帝城を発す」という詩を詠んでいます。
その後、李白は長江下流域を放浪する旅に出ますが、62歳で生涯を終えました。
その他、
- 「秋浦の歌」
- 「静夜思」
も有名です。
生前から詩人として超有名だった李白ですが、死後には「詩仙」と称されるようになりました。
学生さん!これ、試験で問われることもありますので、しっかりと覚えておいてよ~
では、ここで、李白の代表作を3つ紹介しましょう!
李白の漢詩の代表作1.「峨眉山月歌」
峨眉山月半輪秋(峨眉山月 半輪の秋)
影入平羌江水流(影は平羌江の 水に入りて流る)
夜発清渓向三峡(夜 清渓を発して 三峡に向こう)
思君不見下渝州(君を思えども見えず 渝州に下る)
【現代語訳】
峨眉山に半月がかかる秋に
月の光が平羌江の水面に映って流れていく
私は夜のうちに清渓を出発して、三峡へと向かう
君を見たいと思ったが見ることができず、渝州へと下っている
「峨眉山月の歌」は、故郷を旅立つ時の想いが込められた詩です。
峨眉山は李白の故郷・蜀の名勝地で、蜀に住んでいた時代に、李白が峨眉山にも訪れていたことが伝わっています。
「君」を
- 恋人、想い人、友人・・・といった大切な人
- 故郷の月
どちらでとるかは意見が分かれています。
李白の漢詩の代表作2.「黄鶴楼送孟浩然之広陵」
故人西辞黄鶴楼(故人西の方 黄鶴楼を辞し)
煙花三月下揚州(煙花三月 揚州に下る)
孤帆遠影碧空尽(孤帆の遠影 碧空につき)
惟見長江天際流(惟だ見る 長江の天際に流るるを)
【現代語訳】
古くからの友人(孟浩然)は、西にある黄鶴楼に別れを告げ
花が咲き春の霞が立つ三月に、揚州へと下っていった
遠くに見える一艘の舟の帆も、青空に消えていき、
ただ、長江が天の果てまで流れていくのを見るばかりである。
「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」は、タイトルからも分かる通り、友人との惜別の詩です。
- 孟浩然も自然派の詩人として有名で、李白と交友があったことが分かっています。
- その友だちが旅立つ際に詠んだ詩です。
- 友人との別れは形に残しておきたい感情が溢れてくるんでしょうね。
日本でも、和歌のテーマとして多く詠み込まれています。
李白の漢詩の代表作3.「早発白帝城」
朝辞白帝彩雲間(朝に辞す 白帝彩雲の間)
千里江陵一日還(千里の江陵 一日にして還る)
両岸猿声啼不住(両岸の猿声啼いて住まざるに)
軽舟已過万重山(軽舟已に過ぐ 万重の山)
【現代語訳】
朝焼け雲に染まる白帝城に、朝早く別れを告げ、
千里も離れた江陵まで、一日で着いた。
(私の乗る船が進む)川の両岸からは猿の鳴き声が絶えず聞こえ
その鳴き声がやまないうちに、船はすでにたくさんの山々の間を過ぎていった。
「早に白帝城を発す」は、流刑から解放され、帰路を急ぐ旅の様子がダイナミックに描かれている作品です。
- 千里も離れているのに一日で着いた
- 猿の鳴き声がやまないうちに、たくさんの山々を過ぎていった
などが、旅路を急ぐ様子を物語っています。
代表作を3つ紹介しましたが、李白の詩の特徴は、
- ダイナミックでスケールの大きい豪放さ
- 清らかさ、繊細さ
といった、正反対な内容を多彩に詠み分けることができるところにあります。
得意とする詩型は「七言絶句」です。
懐かしい響き。習った習った!!
作中では、
- 酒
- 月
- 船旅
が重要なキーワードとなっています。
楽器の伴奏によって歌われる詩である楽府(がふ)も作っており、「子夜呉歌」が有名です。
これは、辺境の戦場にいる夫を案じる女性の立場から詠んだものです。
古典の教科書で読んだ人もいるかもしれません。
【エピソード】李白の性格がわかる逸話
李白は本当にお酒が大好きな人で、「酒と自由を愛した大詩人」です。
お酒好きと言えば、失敗談が付き物ですよね。
ここでは、李白のお酒にまつわる失敗談を紹介しますね!
李白の逸話=お酒の失敗1:宮廷を追われたのはお酒が原因!?
玄宗皇帝にお仕えして、宮廷文人として活躍していた李白が、無礼な言動が重なって宮廷を追われてしまったと前述しましたよね。
これ、お酒が原因だったようなんです。
- 大親友・杜甫が「飲中八仙歌」で暴露しています。
- 「飲中八仙歌」とは、杜甫が同時代の酒豪8人を選んで、それぞれのエピソードを詠んだ詩です。
- 面白いことをしていますよね(笑)
そこで、李白はこのように詠われています。
李白一斗 詩百篇
長安市上 酒家に眠る
天子呼び来れども 船に上らず
自ら称す 臣は是れ 酒中の仙と
- 李白は一斗の酒を飲めば、詩を100篇作り出すことができ、
- 皇帝からのお呼びにも従わず、
- 「自分は酒飲み仙人だ」と自称する
くらいの意味でしょうか。
もう完全な飲んだくれです。
本当にこんなことがあったとは信じがたいですが、きっとあったんでしょう(笑)
どの時代にも、お酒で失敗して職を失う人っているんですね。
まさに「酒は呑んでも呑まれるな」ですよね・・・
こんな失敗談を、面白おかしく詩にされて後世まで残されるとは・・・
李白さんも苦笑いでしょうね。
いや、お酒を呑みながら豪快に笑い飛ばしたかな??
李白の逸話=お酒の失敗2:死因はお酒が原因による溺死!?
李白は、晩年、湖に小舟を浮かべて大好きなお酒を呑みながら月を眺めることを好んでいました。
とっても風情があっていいですね~
呑み過ぎた李白は、水面に映った月を取ろうとして、湖にドボン。
溺死してしまった・・・というのです。
李白の最期は病死とされていますので、これは事実とは異なります。
しかし、お酒が大好きだったことは、周知の事実なので、こんな伝説が生まれてしまったのですね。
死因までお酒に絡んだ伝説が残るなんて、李白の酒豪っぷりたるや恐るべし!です。
【結論】李白はどんな人?分かりやすいおすすめ作品
李白の性格と経歴・生い立ちと面白いエピソードについて紹介しました。
簡単にまとめておきましょう。
- 李白は盛唐の大詩人で「詩仙」と称されている
- 李白は変幻自在に詩を詠むことができた
- 李白は七言絶句を得意とした
- 李白は人生の大半を放浪していた
- 李白はお酒が大好きだった
教科書に必ずと言って良いほど作品が載っている李白。
そんな李白の作品を味わいたいなら、
- 『李白詩選』松浦友久翻訳 岩波文庫
がおすすめです!
また、「早に白帝城を発す」の詩は、山崎豊子著『大地の子』のラストシーンに登場しますよ。
以上、「李白の性格と経歴・生い立ちと面白いエピソード」でした。