横溝正史の経歴や性格は?生い立ちとエピソード、映画おすすめランキング

「昭和をミステリーに変えた男」

金田一 耕助(きんだいち こうすけ)シリーズなどでおなじみのミステリー作家、横溝正史(よこみぞ せいし)を表した言葉の一つです。

金田一耕助シリーズを読んだことがない人でも、マンガ『金田一少年の事件簿』の主人公である金田一 一(きんだいち はじめ)の名台詞、

「俺がこの謎を解いてみせる! じっちゃんの名にかけて!」

ならば知っているでしょう。

 

そう、この金田一少年のいう「じっちゃん」とは金田一耕助のことなのです。

もちろん、金田一耕助シリーズを書いた横溝正史と、マンガ『金田一少年の事件簿』には直接的な関係はありません

金田一耕助は他にもマンガ『名探偵夢水 清志郎(ゆめみず きよしろう)事件ノート』シリーズにも登場したことがあるなど(はっきりと名のるわけではありませんが)、様々な作品に影響を与えています。

それほどまでに愛されている名探偵、金田一耕助を生みだした横溝正史とは、どのような人物だったのか、これから紹介します。

 

  1. 横溝正史の生い立ちは?
  2. 横溝正史の経歴と代表作
  3. 横溝正史の性格と人柄がわかるエピソードまとめ
  4. 横溝正史の個人的映画ドラマおすすめランキング

 

横溝正史の生い立ちは?

1902年(明治35年)5月24日、兵庫県神戸市で生まれます。

横溝正史というペンネームは、本名である横溝 正史(よこみぞ まさし)の名前の読み方を変えたものになります。

父・宜一郎、母・波摩の三男となりますが、宜一郎には前妻がおり、長男の歌名雄は異母兄にあたります。

 

ちなみに、『悪魔の手毬唄』にも歌名雄という人物が登場します。

横溝正史には姉もおり、大家族の一員として幼少期を過ごします。

 

1920年(大正9年)、神戸二中(現在の兵庫県立兵庫高等学校)を卒業します。

18歳で第一銀行神戸支店に就職しました。

本当は文学がやりたかった横溝正史でしたが、父親が承知せず「神戸高商へ進学しろ」というのに反抗した彼は、自分で勝手に就職先を決めて、そこに就職してしまいました。

 

1921年(大正10年)4月、大阪薬学専門学校(現在の大阪大学薬学部)に入学します。

銀行の計算係の仕事に嫌気がさした横溝正史は、銀行にも両親にも相談せずにこっそりと大阪薬学専門学校への入学準備を進めて、また勝手に入学してしまいました。

薬剤師を目指したのは、「稼業が薬屋だったから」という理由でした。

詳しくは語られていませんが、この入学を機に銀行は辞めたと思われます。

また、この年に雑誌『新青年』に応募した『恐ろしき四月馬鹿(エイプリル・フール)』が入選します。

この作品が、横溝正史のデビュー作となりました。

 

1924年(大正13年)、大阪薬学専門学校を卒業します。

卒業後、しばらくのあいだは薬剤師として、実家の生薬屋「春秋堂」で働いていました。

 

1926年(大正15年/昭和元年)、江戸川乱歩に招かれて上京し、博文館に入社します。

 

1927年(昭和2年)、『新青年』の編集長に就任します。

また、この年に孝子という女性と結婚しています。

創作活動や、翻訳の仕事などをしながら、その後『文芸倶楽部』、『探偵小説』などの編集長も務めました。

 

1932年(昭和7年)、『新青年』が廃刊となったことにより博文館を退社して、専業作家となります。

 

1934年(昭和9年)7月、肺結核が悪化し、長野県八ヶ岳山麓にある、富士見高原療養所で療養生活を送ることになります。

この療養生活のあいだに『鬼火』を執筆しています。

 

1941年(昭和16年)6~12月、長編家庭小説である『雪割草』が地方紙(新潟毎日新聞、途中から名称が新潟日日新聞に変わっています)に連載されます。

横溝正史の長編家庭小説は、この『雪割草』が唯一とされています。

 

1945年(昭和20年)4月(移動開始日は3月25日か26日)、一家5人で岡山県吉備郡真備町岡田(現在の倉敷市真備町)に疎開します。

横溝正史・42歳、妻・孝子38歳、長女・宜子(よしこ)・17歳、長男・亮一14歳、次女・瑠美5歳のときでした。

一家そろっての大移動は、療養所への移動に続いて2度目となります。

 

この疎開先で、『本陣殺人事件』、『獄門島』、『八つ墓村』などの創作に多大な影響を与えた、加藤 一(かとう ひとし)氏と出会います。横溝正史よりも7つ年下の彼は農業を営んでいましたが、青年学校の先生をやっていたこともあり、たいへん博識でした。

 

横溝正史の作品に影響を与えた人物は、加藤氏以外にも、石川 淳一氏や、藤田 嘉文氏などがいます。

戦時中や戦後すぐの物不足の際には、紙(原稿用紙)を手に入れることが困難だったため、とにかく原稿用紙の代わりになるものなら種類やサイズのバラつきは無視して、あるだけかき集めて作品を書きました。

 

しかし、そうまでしても紙が不足していたため、その時代の作品は短編がほとんどです。

後に、このときの短編を長編に書き直したり、もとにした作品も多いです。

 

参考

『金田一耕助のモノローグ(金田一耕助シリーズ)』KADOKAWA/角川書店、横溝正史著(金田一耕助シリーズとなっていますが、内容は横溝正史の戦時中などのエッセイです)

 

横溝正史の経歴と代表作

  • 1946年(昭和21年)、『本陣殺人事件』を執筆します。
  • 1947年(昭和22年)、『獄門島』を執筆します。
  • 1948年(昭和23年)8月1日(7月31日に疎開先を出発)、疎開先から東京へ戻ります。

また、この年に『本陣殺人事件』で、第1回探偵作家クラブ賞(現在の日本推理作家協会賞)長編賞を受賞します。

デビューから25年後のことでした。

 

  • 1949年(昭和24年)、『八つ墓村』を執筆します。
  • 1950年(昭和25年)、『犬神家の一族』を執筆します。
  • 1957年(昭和32年)、『悪魔の手毬唄』を執筆します。
  • 1964年(昭和39年)、『蝙蝠男』を執筆します。

この頃、松本清張などによる社会派ミステリーが台頭し、横溝正史の執筆量はグンと減ることになります。

 

  • 1968年(昭和43年)、『八つ墓村』が漫画化(作画・影丸穣也氏)が決定します。講談社の『週刊少年マガジン』で連載されました。
  • 1970年(昭和45年)、講談社より横溝正史の最初の全集が刊行されます。
  • 1971年(昭和46年)、『八つ墓村』をはじめとした横溝正史の作品が、角川文庫から刊行されます。

 

当時のオカルト・ブームなどもあり、横溝正史の作品は大ヒットとなります。

その後、角川文庫は次々と横溝作品を刊行し続け、年々売り上げを伸ばしていった彼の作品の発行部数は、1979年(昭和54年)には、4,000万部を突破します。

 

1975年(昭和50年)、『本陣殺人事件』がATG(日本アート・シアター・ギルド、通称エーティージー)により映画化されます。

この作品のヒットにより、翌年には『犬神家の一族』をはじめとした、石坂浩二主演の映画化(石坂浩二の金田一耕助シリーズ)や、古谷一行主演の毎日放送でのドラマ化(古谷一行の金田一耕助シリーズ)などが決まります。

これらのことにより、幅広い層に横溝正史の作品が知られることとなりました。

 

1976年(昭和51年)、勲三等瑞宝章を受章します。

1981年(昭和56年)12月28日、国立病院医療センターで亡くなりました。結腸ガンでした。

 

横溝正史は、亡くなるまでに多くの作品を発表していますが、代表作はやはり金田一耕助シリーズでしょう。

 

その中でもとくに有名なのが、何度も映画化やドラマ化をされている

  • 『八つ墓村』
  • 『犬神家の一族』
  • 『悪魔の手毬唄』
  • 『悪魔が来たりて笛を吹く』
  • 『獄門島』

あたりになるかと思います。

 

金田一耕助シリーズは、私立探偵である金田一耕助が、様々な事件の謎を解いていく探偵小説です。

  • フケ症のボサボサ頭
  • 清潔感のない和服姿

この和服姿で通すスタイルは、作品中で時代が移り変わるとともに、徐々に時代遅れの格好となっていきます

体格は貧相だけれども、人懐っこい笑顔や、飄々とした雰囲気は、関わる人たちの話しを引きだす不思議な力があります。

 

金田一耕助シリーズは、全体的にホラーチックな雰囲気を醸しだしており、舞台となる村や、島などに伝わる伝承や、過去の忌まわしい事件、登場人物たちの独特の個性の強さなどが、一つの世界を形づくっています。

『八つ墓村』などは、実際に日本で過去に起きた事件である、「津山事件(津山三十人殺し)」をもとにしていたりと、どこかおとぎ話めいたミステリー・ホラーなのに、リアリティがある物語は読者をグイグイと作品世界に引きずり込んでいきます。

 

また、横溝正史は「分身」や「一卵性多胎児・一卵性双生児」などにも独特な関心を寄せていたようで、一卵性双生児が登場する作品も数多く残しています。

中には、シャム双生児(結合双生児)や、一卵性と思われる三つ子が登場する作品や、一卵性双生児が一つの作品内で複数登場するものもあります。

 

横溝正史の書く一卵性双生児たちの描写や表現は、どこか憧憬めいていて、神秘的な魅力というものをある種、羨ましく感じていたのではないかとすら思えます。

「一卵性双生児もの」などが好きな人には、横溝正史の双子たちの描写は胸にささると思います。

主に一卵性双生児たちが登場する作品で、有名なものとしては、

  1. 『八つ墓村(小竹様と小梅様の双子の老婆)』
  2. 『悪霊島(一卵性双生児が複数登場する作品です)』
  3. 『三つ首塔(主人公たちが金田一耕助に追われる側となる珍しい作品で、耽美系ともいわれています)』
  4. 『双生児は囁く(双子の夏彦と冬彦が探偵役で、金田一耕助とは無関係の短編集です。表題作以外にも双子が登場する作品が収録されています)』
  5. 『大迷宮(三つ子の少年が登場する、やや子ども向けの内容となっています)』

 

など、他にも一卵性双生児が登場する作品が、あちこちの文庫内に収録されていると思います。

なお、上記作品は全てKADOKAWA/角川書店より刊行されています。

 

横溝正史の性格と人柄がわかるエピソードまとめ

横溝正史は自身のことを「亭主関白で療養先や疎開先などへの大移動を独断で行い、その細々とした部分や準備などは全て妻任せ」と豪語しています。

お酒も大好きでした。

その一方で、気が弱く、人と争うのが苦手な性質だとも語っています。

ただし、銀行就職の際や、専門学校への入学なども誰にも相談せずに決めており、自分がしたいと思ったことに対しては、後で人と争うことになるかもしれなくても決行してしまう人間なのだと思います。

 

また、疎開先では作品を書いている最中に、言葉が頭の中に溢れてきて、堪らず身なりも構わずに外へと飛びだして、村の中をグルグルと回っていることもしばしばあったといいます。

そうして帰ってきてから、改めて原稿用紙を見てみると、文字の形になっていないような文字が、原稿用紙の上に散りばめられているような状態も多かったとか。

村の人たちからは、「先生が原稿用紙に向かっているときには、すごく気迫があって側へ寄りづらい」というようなこともいわれていました。

 

作家の江戸川乱歩氏や海野十三氏とは友人関係にあり、たびたび連絡を取り合っていました。

閉所恐怖症で、電車に乗ることが困難でした。

温厚な人柄で、疎開先の村の人たちも横溝正史が執筆をしていないときは、横溝正史の家の縁側に集まっておしゃべりなどに興じていた様子をみると、まわりの人たちからは好かれていたと思われます。

このどこか人好きのする性格や雰囲気は、名探偵・金田一耕助の雰囲気に繋がるものがあるように感じます。

 

横溝正史の個人的映画ドラマおすすめランキング

 

第1位は『八つ墓村』です!

主人公である寺田 辰弥(てらだ たつや)は、母を亡くしてから、複雑な家庭の事情により数年前からほとんど天涯孤独の身として生きてきたのですが、ある日唐突に、田治見家の跡取り候補として八つ墓村に呼び戻されることになります。

そして、自身の身に起きた過去の忌まわしい事件の因縁や、八つ墓村で過去に起きた恐ろしい事件の数々を知ることとなります。

辰弥の身のまわりでは次々と人が死に始め、辰弥に疑いの目を向ける人もでてきます。

そんな中、人の手による細工だけでは説明のつかない現象も起き始めます……。

 

この作品の魅力は、怪奇めいた事象と、人の手による事件とが、密やかに同居しているところです。事件を起こしているのは人そのもので間違いないのですが、その背後には人ならざるものの大きな意思が渦巻いている気がしてならないのです。

伝承的なものや、ホラーチックなミステリーをたっぷりと味わえます。

 

その他にも、実際の事件をもとにしているところや、村に伝わる「八つ墓伝説」と落ち武者の大将が死の間際に残した呪いの言葉、過去の忌まわしい事件、財宝が隠されているという噂の大洞窟、小竹様と小梅様をはじめとする怪しい雰囲気が漂う領主の一族など、これでもかと横溝正史の世界観を楽しめる要素が満載です。

 

第2位は『悪魔の手毬唄』です。

磯川警部が過去に関わった事件の謎解きとともに、再び鬼首村(おにこうべむら)で起こり始めた連続殺人事件の謎を追っていく物語です。

村に伝わる童謡の通りに死体が装飾されていくという、いわゆる「見立て殺人」がこの作品の魅力です。

余談ですが、チュンソフトから2002年に発売されたPS2用のゲームソフトである『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』には、『悪魔の手毬唄』のオマージュとみられる表現がところどころに散りばめられています。

 

第3位は『悪霊島』です。

関わってくる人物の多さに加え、原作は上下巻とボリュームのある作品です。一卵性双生児にまつわる事件や伝承、双子の多く生まれる一族が重要な役割を担っています。

また、磯川警部の知られざる過去の話も登場します。

「あいつは平家蟹だ……」、「鵺(ぬえ)の鳴く夜に気をつけろ……」などの謎めいた言葉が誘う事件は、ワクワクするような魅力に満ちています。

この事件は、最後の最後まで気の抜けない展開が待っています。

 

第4位は『獄門島』です。

終戦から1年ほどが経った昭和21年9月下旬、金田一耕助はマラリアで亡くなってしまった戦友の鬼頭 千万太(きとう ちまた)のたっての願いにより、千万太の3人の妹たちの命を守るため、そして、彼の死を千万太の親族に知らせるために、千万太の故郷・瀬戸内海に浮かぶ、獄門島へと船で向かいます。

千万太は生前、「おれが帰ってやらないと、3人の妹たちが殺される……」と呻いていました。

しかし、獄門島では不穏な事件が起こりはじめます……。

 

第5位は『犬神家の一族』です。

信州財界の大物・犬神佐兵衛(いぬがみさへえ)が残した遺言状により、犬神家の一族は遺産を巡る争いへと静かに突入することになります。

遺言は、佐兵衛の3人の娘たち(全員が異母姉妹)のそれぞれの息子のうちの誰かを、珠世(大恩人の孫娘)が結婚相手として選ぶことを前提に、珠世に遺産を与える、というむちゃくちゃなものでした。

ビルマの戦場で、顔に重度の火傷を負ったという佐清(すけきよ)は、果たして本人なのか?

なぜ佐兵衛は、珠世をも巻き込むことになる遺言状を残したのか?

一族の過去の因縁が紐解かれていきます。

 

横溝正史の作品は、金田一耕助シリーズが有名ですが、『人形佐七捕物帳(にんぎょうさしちとりものちょう)』などの時代劇シリーズも書くなど、その作品は多岐にわたっています。

興味がある方はぜひ、横溝正史の様々な作品の魅力に触れてほしいと思います。

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