アニメ映画『時をかける少女』を観れば、日本アニメ・まんが界に現れた独自の思想がよく理解できます。
独自の思想というのは、青春物語の展開手法の一つ。
- 「いつまでもこのままで」
- 「今がずっと続いたらいいのに」
- 「わたしたち、ずっと変わらないよね」
青春物語に現れるこうした概念をじっくり考えてみるのが、この記事の目的です。
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細田守作品の特徴を『時をかける少女』のあらすじに学ぶ
さて、アニメ映画『時をかける少女』は
少し過去に戻れる能力を手に入れた少女(真琴)のお話です。
真琴の能力の使い方はささやかなもので、
友達だと思っていた男からの告白から逃れようとする
などなど、
「自分に都合の悪い出来事を避ける」ために能力を使います。
これはとても斬新です。
「恋愛感情をなかったことにしたい」という心理が実に鮮やかに描かれています。
いつまでもこのままで思想とは何か? 日常生活系まんがに共通の思想
時をかける少女の舞台は、高3の7月。
この時点で、進路も理系か文系かさえ決められずにいます。
要するに、真琴はいつまでもこのままでいたいと思っているのです。
予告編でも思いっきりそう言ってます。
ただし、残念ながら、そして当然ながら、このままでいることはできない。
この「いつまでもこのままで」という図式は、多くの青春物語に使われています。
たとえば長期連載のラブコメや日常生活を描くまんがは、
大体この図式にあてはまります。
- サザエさんも
- みゆきも
- ああっ女神さまも
- ちびまるこも
- こち亀も
- 浦安鉄筋家族もです。
これらの作品には、主人公に目的がありません。
目的がないと永久に続けることができます。
しかし例外もあります。
名探偵コナンやはじめの一歩など。
これらの作品の主人公には、目的があります。(謎の組織との対決/強いって何だろう)
だとしても、異常に引き延ばすこともできます。
サブカル芸術に課せられた使命=「終わりなき日常を終わらせる」
こうした終わらない日常を終わらせるためにはどうするか?
「このままではいられない」という展開が必要です。
ここで2つの典型的な作品をご紹介。
その1 押井守『うる星やつら ビューティフルドリーマー』
ラムちゃんが「あたるとずっと一緒にいたい」という強い思いのせいで、
世界がラムちゃんの夢の中に取り込まれ、ずっと同じ日が繰り返されます。
しかし夢からは醒めねばなりません。
それに気が付いてしまったあたるや面堂。
このままではいられない。
その2 宮藤官九郎作品のテレビドラマ『木更津キャッツアイ』
木更津を出たことがないぶっさん。
仲間たちと楽しく野球とかやっていますが、
「ぶっさんの余命は半年」と宣告されてしまいます。
このままではいられない。
まとめ 細田守の入道雲の意味とは「永遠なるもの」の投影である
『時をかける少女』でも、
いつまでも友達3人で楽しく過ごしたい。
しかし、このままでいることはできません。
その変化は「友達との別れ」という形で展開します。
映画やドラマ作品に顕著ですが、物語には、最終回というものがあります。
最終回を迎えるためには、現在の状況が変わらなければいけません。
「いつまでもこのままで」では、物語が進まない/終わらないのです。
細田守の作品には「いつまでもこのままで」思想が典型的に表れています。
それがたとえば
- 学校
- 子ども
- 青春
- 夏
- 入道雲
といった概念に投影されます。
ところで、青春物語ってたいてい夏です。
これは、日本人にとっては「夏」という季節が、最も「永遠」「憧憬」といったイメージを想起させるからなのです。
さらに、細田守作品には必ず入道雲が描かれます。
「いいなぁ~」と思ってしまう、美しい風景。
『サマーウォーズ』はまさに典型!!!!
入道雲は、細田守独自の「永遠」の表現なのだと思われます。
もしもあなたがこれから細田守作品を鑑賞する機会がありましたら、
どうぞ「入道雲」「いつまでもこのままで」といった概念を意識しながら観てみてください♪
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